少女は大男の最後を見る素振りさえなく、振り返る。
スタスタと歩きながら、彼女の目は、ただ一点を見つめていた。
——僕を
僕を、見ている…?
返り血を浴びた制服。
冷たい表情。
その光景は異様だった。
背後には肉塊と化した大男の体が、地面に倒れ込んでいた。
アスファルトに染み込んでいく、真っ赤な液体。
何事もなく流れ着いてくる、鳥の囀り。
長い髪を靡かせながら、少女は悠然と街の上を歩いていた。
空は青かった。
ただひたすらに。
呆然と口を開けたままの僕に、少女は言った。
「あなたが、今回のターゲットね」
それが、少女と僕との最初の出会いだった。
世界の運命を変えるために動き出した、——梅雨明けの季節との。
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