俺は大学二年生になってから、一人暮らしを始めた。
三年ぐらい経っており、あの女もちょうど戻って来たようだ。大学から不審者情報が回ってきた。
俺は二つある弱点を既に知っていた。だから実践しようとしたのだが、中々手に入らないのだ。
スーパーを数件回ってやっと売っているところを発見した。
だが、一個じゃなくて二十個入り。そんなに必要ないのに。仕方ないから購入。
そして遭遇するだけ。
だがあんまり見かけない。余程俺を警戒しているのか? そりゃあ、三年前は通報したからな。根に持つわな。
夕方、見覚えのある赤いワンピースが目に飛び込んだ。
ラッキー! 俺はワザとらしく近づいて、偶然通りかかった男性を演じてみせた。
「私、きれ…」
「天下一不細工」
この女にターンは渡さない。俺の目的だけ果たせばそれでいいのだ!
「なんだと!」
女はマスクを取った。口は耳元まで裂けていた。怖い、というよりも痛々しい。
どこから取り出したのか、大きなハサミを持って俺に襲い掛かろうとした。
「これやるよ。プレゼントってね」
俺は飴を一つ、明後日の方向に投げた。女はそっちに夢中になって、道路を転がっていく飴を追いかけてった。
口裂け女と遭遇したら、どうすればいい?
そんな疑問に手を差し伸べるかの如く、都市伝説には逃げ道が存在するケースが多い。
口裂け女には、べっこう飴が有効だ。投げたら一目散に逃げよう。百メートル六秒? べっこう飴の前では無意味の産物だ。
作用機作についてだが、二つある。
一つは俺が体験したように、べっこう飴が大好物だから。
もう一つは、べっこう飴が嫌いだから。だがこちらはあまりメジャーではない。
あの大きく裂けた口では、飴舐めても涎ダラダラだろうな、想像したくもない。
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