都市伝説体験日記

杜都醍醐
杜都醍醐

古代の黒翅

公開日時: 2020年9月1日(火) 07:00
文字数:1,347

 ちょっと聞いてくれ。さっき衝撃的な出来事があったんだ。

 俺の家に、ついにゴキブリが出現しちまった…。俺なら大丈夫って思ってたのによ…。

 その話を聞いてナオンのホムラは余裕ブッコいてたけど、いざ俺の家に上がり込んで部屋片づけを始めたら、


「い、い、いやああああああああああああああああああああああっ!」


 悲鳴だけはホムラも美人だな。そしてどうやらまた出現したらしいな。

 しかし人間、どうしてゴキブリを見るとこんなに恐怖するんだろうか?


 頭が切られても一カ月は生きていられる圧倒的な生命力。

 例え核戦争が始まっても生き残るであろう桁違いの環境適応力。

 一匹いたら百匹いるという、古代より受け継いだ並外れた繁殖能力。


 他にもあると思うが、ホムラが泣くだけなのでやめておこう。

 そんなゴキブリについてだが、こんな話がある。

 古代において、ゴキブリは一メートルを超える大きさで、人類の先祖を食べていた。今の人間がゴキブリを怖がるのはその時の名残だという。

 要はゴキブリに対する恐怖心が染色体に刻まれてるってことだ。そりゃあ、勝てないさ。



 そんな話があるワケないだろ! でも解説しよう。


 確かに太古の虫って、デカい。一番大きいのはアースロプレウラ。三メートル越えの正真正銘化け物ムカデ。次にデカいのはメガネウラ。翅を広げると七十センチもあるトンボだ。オニヤンマが可愛くみえるぜ。三番目にアプソロブラッティナっていうゴキブリがランクイン。五十センチあったらしい。

 海に目をやると、ウミサソリがデカい。二メートル五十センチだ。


 ここまで言えばわかるだろう? ゴキブリが一メートルを超えたことはない。しかもアプソロブラッティナ、古生代の終わり頃のペルム紀に生息していたんだと。

 アースロプレウラとメガネウラは石炭紀。今よりも酸素濃度が高かった時代だな。だから虫も巨大化できたんだ。


 早い話が、巨大な虫の時代は古生代で終わり。ちなみに、人類の先祖であろう原始的なホ乳類が地球上に出現したのは、三畳紀。中生代の最初だ。サルに絞れば、ティラノサウルスが歩いていた中生代の白亜紀の終わり頃。

 じゃあ五十センチのアプソロブラッティナとすら出会わねえじゃん!


 蛇足だが、よく人類が滅んだらゴキブリが世界の覇権を握ると言われているが、そんな事はないよ。

 人類の滅亡プランは多めにあるけど、大きく三つに分けて紹介。

 まず、人類滅亡が環境破壊による場合。実はゴキブリの多くは森の中で暮らしている。その環境を破壊されては、生きてはいけない。都市部にいるゴキブリはどうか? 奴らは俺たちが出すゴミなどで暮らしているんだ。嫌でも人類と運命を共にする! こっちに来るな!

 次に、核戦争で滅亡した場合。確かにゴキブリは放射能に強い。だがな、ゴキブリよりも放射能に強い生物はいくらでもいる。よって覇権は握れないだろうな。

 最後に、火山噴火や隕石で滅亡した場合。コレ、考える必要あるか? 確かにゴキブリは生きた化石と言われるぐらい、姿を大きく変えずに地球で生活してるけど、ゴキブリが他の生物を差し置いてまで栄えた時代が存在しない時点である程度察せる。


 おまけだが、地球上で一番人を殺している生物は蚊。ウィルスを媒介する都合上そうなるんだってよ。じゃあウィルスじゃないかだと? 生物じゃないって言ったよな俺?

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