都市伝説体験日記

杜都醍醐
杜都醍醐

宇宙見学

公開日時: 2020年9月1日(火) 07:00
文字数:1,408

 俺が中二の頃だ。塾をサボってもみじ公園で休んでいたら、それは突然目の前に現れた。


「ゆ、UFO?」


 その光は夜空の中でも異色を放っており、少し点滅しながら俺の前に降りて来た。

 中からリトルグレイみたいな宇宙人が二人、地球人らしき人が三人出てきた。


「君、名前は何という?」

「ほ、骨谷龍堵、です」


 宇宙人たちはいきなり拍手をした。


「おめでとう。君は見学サンプルに選ばれた」


 そういって俺を、UFOの中に入るよう促した。俺も俺で、どうしてか何も感じず、それに乗り込んだ。

 そのUFOにかかれば、太陽系から脱出するのは一瞬だった。


「うわぁ!」


 俺は外の風景を見て、そう叫んだ。星々が、光る線と化している。それだけUFOは速かった。

 しばらくすると、ある星に降り立った。もちろん俺もUFOから出たのだが、


「ひぃぃ!」


 そこにいる宇宙人は千差万別で、地球人とさほど変わらないような人もいれば、俺たちからすると恐怖しか感じないおぞましい人もいた。そんな人たちが俺に視線を向ける。俺は我慢できなくなって、UFOに戻った。


「セクター。サンプルが逃亡行動を示しました。どうします?」

「やはり地球人には、宇宙人は早い。まだ時間をかける必要があるな。ディレクターに伝えろ。そしてすぐに地球に引き返す」

「了解いたしました」


 UFOは来た道を引き返し、俺が気がついた時にはもみじ公園に到着していた。


「薬剤Fを経口投与し、彼の記憶の消去・改ざんを同時に行う」


 そんな台詞が宇宙人たちの方から聞こえてきたので、俺はUFOの扉を無理矢理開けて、一目散に逃げだした。



 宇宙人がいるって思う人、多いと思う。太陽系にはいないだろうけど、広大な宇宙の片隅に存在していても不思議じゃないよな。

 でもどうしてそう思う? 実際に存在が公表されたわけでも、見たってわけでもないのに。

 これには立派な理由がある。アメリカをはじめとして、様々な国で宇宙に関する映画が作られた。映画って話題になればみんな劇場に足を運ぶよな? それで宇宙人の存在が認知されてきたんだよ。


 ところで、だが。ここ数十年で人々が想像する宇宙人像が随分と変わっていることをご存じだろうか?

 初期の宇宙人と言えば、典型的なマーシャンだった。あのタコだよタコ! しかも大抵、地球に攻めてくる好戦的な性格だ。地球は水が豊富だから、きっと水資源に乏しいんだろうぜ。

 でも今、タコ型宇宙人なんて信じてる人いないだろう? それどころか、宇宙人は友好的って想像してる人もいるんじゃない? 俺が見たのもリトルグレイだったし、今はそれが主流だ。

 これも映画の影響だろうな。ETをはじめとした、宇宙人との交流を描く映画が上映される。すると宇宙人に対する考えも変わってくるのだ。ある意味洗脳だろコレ?


 なぜ、好戦的なタコ型宇宙人から友好的なリトルグレイに変わったんだろう? 恐らく、米の国を筆頭に宇宙人と関係がある政府が、来たる発表の前に、本物の宇宙人像を定着させたいんじゃないかね。昔公表してれば、タコが地球に攻めてくるって大騒ぎだっただろう。でも今なら、「ああ、見慣れたよ」って感じで宇宙人と普通に会話できそうだし。

 俺が見学サンプルに選ばれたのは、宇宙人に対する理解がどれくらい浸透してるか、調査するためだったんだろうな。俺を選んだのは、大外れだがな!


 ひょっとして、みんなどこかで見学サンプルに選ばれているのかもしれないよ? 記憶は消されちゃってるかもしれないけどね。

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