中学時代の修学旅行での会話だ。
「俺が怪談話をしてやろう! タイトルは、牛の首だ」
カゲトが話を始めた。俺ともう一人の友達が黙ってそれを聞く。
「…!」
カゲトにしては、完成度の高い話だった。俺ももう一人も、汗びっしょり。
「次は僕がしよう。鮫島事件だ」
友達はその話を始めた。カゲトの牛の首と、負けず劣らずの怖さ。話が終わった直後に部屋のインターフォンが鳴った。
「ちゃんと寝てるか? ゲームとかしてないだろうな?」
先生の巡回だったが、俺たちは三人とも背筋が凍った。
この流れで俺も、何か一つ話をすることになった。
「じゃあ俺は、非有らずの熊にしよう」
ところが俺が用意したこの話、前二つと比べるとそこまで怖くないらしく、二人の表情は微妙だった。
牛の首や鮫島事件って、名前は聞いたことがあると思うんだ。
でも話の内容は、誰も知らない。とても恐ろしい話ではあるらしいのだが。もしお耳に入ったのなら、俺にも教えてくれないか?
このように都市伝説の中には、名前だけが語り継がれているものも少なくはない。一応、「身の毛もよだつ恐ろしい内容」ってことだけは同じだが、詳しい内容を知っている人はやっぱいない。
コレらについては、それが一番の特徴だ。何でもその話を聞いてしまうと、呪われて死んでしまうって。それ程怖い話なんだとよ。
だが怖いもの見たさで関心を抱く人が続出。人間って本当、好奇心に弱い…。
でも牛の首について、後に俺がカゲトから聞いた内容を教えよう。
舞台はバスの中。小学生の校外学習の帰りで、外はもう真っ暗。先生が暇つぶしに怪談話を始める。
それは想像を絶する展開で、何とゲロっちまう児童が続出した。
急に、バスが止まる。話を意図せず聞いていた運転手も、もう限界だったのだ。
これをきっかけに先生は、牛の首の話を封印することに決めた。
牛も首も何処にも出てこないし、そもそも話の内容がやはり語られてないが、それを突っ込んではいけないぞ。
ちなみに、俺が話した非有らずの熊も同じ類の話だ。内容なんて無い様なものだから、各自で勝手に考えてオッケー。
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