俺がホームシックになったホムラに連れられて仙台に行った時のことだ。ホムラの出身校の軽音楽部がライブに参戦するからって行くことになった。俺は音楽にはあまり興味ないけれど暇だから断る理由もないし。
市内の公園でライブは開催される。他の学校のバンドも参加するらしく、会場は大量のお客で溢れかえっていた。
俺はイベントの最初からいたけれど、目的のバンドはなんと最後の方…。上手いんだか下手なんだかよくわからない演奏をホムラとともに聞いた。
「次よ、次! 恩師の先生から聞いたんだけど、あのベース兼ボーカルの子がすごいの!」
自慢げに話すホムラ。お前の後輩でも何でもないのに…。
ステージに上がるバンド。こんな表現失礼だが、ホムラが推すのは、ウーパールーパーみたいな髪型の女の子。耳が鰓のような髪で隠れていて、尻尾のように後ろ髪が長い。かわいいっちゃかわいいけど。
「俺は隣のギター…であってる? スキンヘッドの男子の方が気になるけどな…」
高校生がスキンヘッドって、問題起こして刈り取られたとしか思えん…。
ライブが始まった。歌は上手い。二曲歌うそうで、一曲目が終わるとMCタイム。
「みなさん! 今日は三本持ってきましたよ~!」
ボーカルの女の子がブレザーの懐から三本のスプーンを取り出した。
「何をするんだ?」
彼女はその内の一本だけを右手で掴むと、睨んだ。
「…!」
スプーンが、への字に曲がった。
「これは、プレゼントします~!」
彼女は観客に向かって投げた。運の良い観客は、ゲットできたようだ。
二本目も同じ。今度はWの字に曲げてみせた。そして今度は、違う方向に向かって投げた。
「な、な、な…」
俺は言葉に詰まった。
いよいよ最後の一本。
「フルパワー、出しちゃうわよ~!」
その力たるや、先の二本と比べ物にならないレベル。彼女が投げると、偶然にも俺に向かって飛んできたのでキャッチした。
「やるじゃない、龍堵!」
ホムラが俺の肩を叩く。俺は、手に持っているものが信じられなかった。これが、さっきまでスプーンだった? いやいや、銀色の金属の塊って言われた方がまだしっくりくる…。
かっこよく言えば、メタルベンディング。わかりやすく言えば、スプーン曲げだ。超能力の基本だろうか。俺は一般市民だからよくわからないけどな…。
なぜ超能力者がバンドやってんのかは置いておいて、超能力の話をしよう。と断っても、きっとみんな知ってるだろうから意味なさそうだ。サイコキネシス、テレポート、クレヤボヤンス、プレコグニション、サイコメトリー…。種類を挙げるとキリがない。
超能力者を自称する人は、世界中にいるぞ。それが本物かどうかは別にして。
やはり科学で証明できないことを信じることは難しい。いつの日か、超能力が解明されるかもなぁ。
そんな話じゃ満足しないよな? わかってるよそんな事ぐらい。
俺的には、多くの人に超能力ってあると思うぜ。でもそれは、みんなが想像する一般的な超能力じゃない。
乱暴な話だけど、今の科学で証明できない力が全部、超能力って言える。例えば、ここまで都市伝説について語ってきたのもある意味超能力だ。普通の人じゃあ、できやしないよ。
人には、他人に勝る何かってあるよな。才能でも、努力でも、何でもいい。そのありとあらゆる事象こそ、超自然的じゃないか。俺はそれこそ超能力だと思う。
だってそうだろ? それは科学で証明できないからね。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!