都市伝説体験日記

杜都醍醐
杜都醍醐

スケアリー・トライアングル

公開日時: 2020年9月1日(火) 07:00
文字数:1,491

 これは俺が大学三年生の時だ。

 単位が足りなくて仕方なく、夏休みに実習に参加した。ランドウが一緒だったな。


「ひゃっほう~!」


 実習とは名ばかりで、ほぼ旅行だ。ランドウが勢いよく海にダイビング。俺は砂浜で美女探しだ。夏の海は小麦色の人が多いぜ。

 しかし俺の視線は、全然違う所に行った。


「何だあの人たちは?」


 夏真っ盛りなのに、水着じゃない。普段着の人たちがいる。


「龍堵、どうかしたのか?」


 俺が気になっていると、ランドウも気がついたようだ。

 その人たちは、何やら地図を広げたり、単眼鏡を覗いたり…。意味あり気。


「俺たちよりも若いみたいだが…。何してるんだろうか?」


 好奇心には常に負ける。すぐに脱衣所に戻って着替え、彼らとの接触を試みる。


「すみません、何してるんですか?」

「………」


 無言だったので、もう一度。


「気になりますよ、こんなところで何を?」

「…あなたは、この海は初めて?」


 女の子が答えた。


「そう…だけど?」


 いきなり沖の方を指差して、


「あっちの海域には、行っては駄目。戻って来られなくなってしまう」


 と言う。


「おい瑠璃ぃ! 無関係な人を巻き込むなよ!」


 女の子は男の子に怒鳴られた。そしてこれ以上は何を言っても口を開いてくれなかった。


 次の日。俺たちは愚かなことに、船をチャーターしてその海域に出航。


「ここから先は行けね」


 船長がそう言って船を止めた。


「どどどどうしてですか?」

「金は返す。だから、勘弁してくれ。俺は命、まだ投げたくねえんだ」


 ランドウが船長に掴みかかろうとした。俺が止めた。


「じゃあせめて、この海域に何があるのかだけ、教えてくれませんか?」


 辺りを見回す船長。そんなに言いにくいことなのか?


「安心して下さいよ。周りには、船は一隻も存在しませんし。この船に乗っているのは、俺たち三人だけでしょう?」

「…わかった」


 船長は渋々納得し、話し始めた。


「昔っからな、この海域で何故か海難事故が多発すんだ。いつの時代からかは本当にわからねえ。それ程昔からなのさ。だから漁師は誰も近づかねえ」


 俺はその海域の方を向いた。そんなに曰く付きには見えないのだが…?


「船だけじゃねえ。飛行機もよう落ちる。戦時中ときたら、それは散々だったらしい。この海域だけは、アメリカの飛行機も避けたんだとよ」


 戦時中にアメリカ兵が気にする程に、か…。


「あんたら昨日の、高校生見たんだろ? 毎年夏になると近所の高校生が自由研究に、あの海域のこと調べんのさ。で、決まって収穫は無しだ。だってそこには、何もないことになっているからな」


 船長は船を港に向け出発した。それ以上は何も聞かなかったし、語ってもくれなかった。



 この手の話だと、バミューダ・トライアングルが有名だろうか? ブラックホール説、宇宙人説等、色々とある。


 だが俺は、バミューダ・トライアングルについては、ある考えが有力でないかと思う。某芸能人が話していた内容だ。

 あそこには、当時としては最新鋭の兵器が配置されていた。その存在がバレるわけにはいかず、通り過ぎる船や飛行機を片っ端から攻撃していた。

 この説に妙に説得力があるのは、バミューダ・トライアングルの位置はキューバに近く、有名だったのが冷戦時代だからだろう。ソ連をけん制する兵器があってもおかしくないわけだ。


 で、話を戻そう。俺もあの海域について、同じ説が適用できると思う。

 つまりはその、恐怖の海域には、第二次世界大戦中としては最新鋭の兵器が配備され、その存在がバレるわけにはいかず…後は同じだ。


 バミューダ・トライアングルは冷戦の産物。スケアリー・トライアングルは太平洋戦争の産物。戦争は、負の遺産しか産み出さないと痛感させられる。

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