「お父様から子供の頃に聞かされたことを言います」
「ゆっくりでいいから教えてくれ」
伊織に言われた愛理は、分かりましたと言った。
「その昔、世界は闇に覆われた。人々は神秘なる力を用いて強大な闇と戦った。しかし、巨大な闇を作ったのは我々の方であった」
「我々とは何だ?」
「いいから黙って聞いてなさい」
伊織は茉莉に怒られてしまい黙ることにした。愛理は静かになったことを確認すると続けて話すことにした。
「世界を壊す闇と思われていた存在は、実は我々であった。我々は自身の豊かさのために大いなる闇を作り出してしまったのである。我々は世界に大いなる闇を作り出し、その闇は遠い未来で再度世界を闇で覆うために動き出すだろう」
愛理はそう言うと水を一口飲んで伝承を話すことを再開をする。
「我々は神秘が具現化した存在に願い、光を闇の存在に変えてしまったのである。闇を光りに戻すためには、神秘が具現化した存在に願う他ないだろう。遠い未来の人々が闇を光りに戻すことを願う。これが私が聞いた伝承の全てよ」
愛理が説明を終えると、伊織が難しい話だなと言う。茉莉も話を聞き終えると、具現化した存在とは何なのかしらと小首を傾げていた。
「具現化した存在……神秘って言わば魔法のことよね? 誰しもが使っている、昔に突然使えるようになったっていう」
「だと思うが、魔法の具現化した存在って聞いたことがないな……」
伊織と茉莉が悩んでいると、出雲が何かあるのかなと呟いた。愛理は何か分かったのと出雲の顔を見ながら聞いた。
「魔法の具現化ってことは何か魔法の特性を持った存在が物体として存在をしているってことなのかな?」
「そんな存在なんて聞いたことないけど……伝承だからどこかで話が変わったりしているのかしら?」
「それは分からないけど、具現化した存在ってことは物体として存在をしているんだろうと思って……」
出雲がそう言うと伊織が聞いたことないがそうとしか考えれないよなと言う。茉莉がそんな存在聞いたことがないわねと言い続けていると、伊織が伝承だからと言う。
「途中で話が変わってしまった可能性はあるが、具現化した存在が話しにあるのは確かだろう。この大陸にも伝承や噂はあると思うから一度大きな町に行くか?」
「そうしましょう。大きな町はどの辺りにあるの?」
愛理が伊織に聞くと、茉莉に地図を出してと伊織が言った。茉莉は腰に巻いていた大きめのポーチから小さめの地図を出した。
「そうだった! 小さめのしか持ってなかったんだ……」
肩を落とす伊織に対して、茉莉が大きめを買いましょうと伊織の肩を軽く叩いた。愛理は町に出たら買いましょうと2人に言った。3人が話していると、出雲は愛理の服を買えた方がいいんじゃないと話した。
「忘れてたわ……私ずっとドレスじゃない……」
愛理が自身の服を見て改めてドレスでいることに気が付いた。普段から着ているので違和感を感じていなかった。出雲に言われたことで服を着替えないといけないことに気が付いた。
「この村に服屋はあるけど、それほど種類があるとは言えないよ? 大丈夫?」
「大丈夫です! 普通の服があれば平気です!」
「なら良かったわ。今行く?」
茉莉が愛理に今から服を買いに行くかと聞くと、愛理が行くと笑顔で返した。出雲と伊織はここで待っているからと言い、二人は店を出て行く。
「二人になったな……」
「そうですね……」
出雲と伊織は男二人でカフェで待つことにした。伊織は出雲と対面で座っているので、お互いの顔がたまに目に入っていた。
「君はあのお姫様の騎士になったばかりなのか?」
「え?」
突然話しかけられた出雲は驚いてしまった。出雲はその言葉を聞くと、伊織に専属ではないですが騎士になって一年くらいですと答えた。
「まだ1年ということは、それほど鍛錬をしていないな?」
「基本的なものを半年程度したくらいです……」
その言葉を聞いた伊織は師匠と思える人を探したほうがいいなと出雲に言う。出雲は師匠ですかと聞き返すと、伊織がこれからの戦いで通用しなくなるかもしれないぞと言った。
「そうですよね……俺も強くなりたいと思っています。少し前に魔族っていう特別な魔物と戦った時に、自身の弱さを実感しました」
「魔族って初めて聞くけど、誰かそう言ったんだ?」
「戦った魔物が俺は魔族だと自身で言いました。凄い強くて前に持っていた長剣を軽々と折られましたし……」
出雲の話を聞いた伊織は、俺より強いかもしれないと呟いていた。続けて伊織は出雲に対して君たちは大和王国の人だろと言葉をかけた。
「えっ!? そ、そんなことはないですよ!」
「雇われた身だけど対等にということだから聞いたけど、君の着ているその服って大和王国の騎士団の制服だよな?」
出雲はそこまで分かっているなら嘘をついても仕方ないと思った。
「そうです。魔族に国を襲われて、俺と愛理は王様によってこの大陸に転移魔法で移動させられたんです」
「転移魔法!? あんな誰も使えない使ったこともないとされる伝説の魔法で!?」
「そうなんです……愛理は大和王国の第2王女で、王様に守ってくれと言われました……」
その言葉を聞いた伊織は、なら強くならないとなと笑顔で出雲に言った。そして続けて君も服を変えた方がいいなと水を飲みながら言っていた。
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