雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

バレンタインデー~その4

公開日時: 2024年1月3日(水) 20:09
文字数:1,959

 僕は小走りで、いつもの待ち合わせ場所のサンシャインシティのマックへ急ぐ。

 なんとかたどり着くと、先に待っていた真帆を見つけて声を掛けた。

「遅くなってごめん」


「ううん。そんなに待ってないよ」

 真帆は微笑んで答えた。

「じゃあ、ちょっと移動しよっか」

 そう言って、真帆は立ちあがって僕の腕を引っ張った。


「どこ行くの?」


「てんぼうパーク行こう」


 てんぼうパークはサンシャイン60の展望台。

 60階なので景色が良いのだ。

 以前も1度、真帆と一緒に行ったことがある。


 エレベーターで60階に登り、入場料700円を払って、てんぼうパークに入る。

 てんぽうパークは遊びに来ている親子連れが多い。

 床に敷かれた人工芝の上で、転がって遊んでいる幼児がたくさん。なんか楽しそう。

 さらに中を少し歩く。真帆は僕の腕を組んだままだ。


 僕と真帆は、てんぼうパークにあるカフェまでやって来て、前回と同じようにバナナスムージーを購入して、テーブル席についた。

 真帆は僕のカバンを見て尋ねた。

「なんか、たくさんもらったんだね?」


 カバンのファスナーが開いていて、チョコの入っているのであろう袋とか箱とかが覗いている。


「え? あ、ああ…、なんか、こんなにもらえるとは、全く思ってなかったから」


「モテモテだね」


「いや、ほとんど義理チョコだよ」


「“ほとんど”ってことは、少しは本命チョコも混ざっているってことね」

 そう言って真帆は笑う。


 まあ、そのとおり。


「純ちゃんって、本当にモテモテだよね」


「全然、そんなこと無いよ」


「いや、そのチョコの数で、“全然”ってことないでしょ?」


「でも、中学のころは1個ももらえなかったので、ちょっと戸惑っているんだよ」


「へー。中学の頃は見る目のない女子ばっかりだったんじゃない?」


「そ、そうなのかな?」


「でも、今、モテてるんだからいいじゃん?」


「ま、まあ…。そうかな」


「私もチョコあげる」

 そう言って、真帆は赤い箱を手渡してきた。


「えっ? 真帆はこの前、ライブ終わった後にチョコくれたじゃん?」


「あれは、O.M.G.からの義理チョコだよ。今日のは、私個人から」


「そ、そうなの…? ありがとう」


 僕は真帆からチョコを受け取った。

 そして、カバンからチョコがあふれ出ないように入れるのが難しい。


 真帆はバナナスムージーを一口飲んでから言う。

「ちなみに、“義理”じゃないからね」


「え?」

 と、いうことは…、そう言うことだよな。

 まあ、真帆が良く呼び出してきて放課後デートしているし、薄々感づいてはいたが。


 その後は、真帆は告白みたいなことは言って来ず、他愛のない世間話をしてから、てんぼうパークを後にして帰路に着いた。


 帰宅すると、台所で妹とかち合った。

 妹は僕の姿を見るといきなり言い放った。

「見せて」


「え? 何を?」


「チョコだよ。今日、もらったんでしょ?」

 そして、妹はチョコがあふれ出そうな僕のカバンを見た。

「えっ?! もしかして、そんなにもらったの?!」


「ああ、そうだよ」


「早く見せて!」

 妹が迫って来た。


 しょうがないので、ダイニングテーブルの上にもらったチョコを並べた。

 まず、それぞれ雪乃、毛利さん、赤松さん、伊達先輩、上杉先輩、真帆からもらったもの。

 そして、げた箱に入っていたチョコ6つ。

 合計12個。


 げた箱に入っていたチョコの差出人を確認する。

 新聞部の小梁川さん、卓球部の福島さん。

 あとは、名前は書いてあるが、顔が思い出せない女子から4つ。


 妹は一言、言い放つ。

「スケコマシ」


「なんだよ」


「ホワイトデーの時に苦しめばいいよ」


「え?」


「ホワイトデーのお返し、倍返しが基本だからね! お金が大変でしょ? ざまぁ」


 そうだった、ホワイトデーにお返しをしないといけない。

 だが、しかし…。

「ホワイトデーに倍返しって、初耳なんだけど?」


「今、私が決めたよ」


「そんなのは却下だ」


 妹は、無視するように先日、妹が手作りしていたチョコが入った包みを手渡してきた。

「やっぱり、私もチョコあげるから、倍返しして」


「そんなんだったら、いらない」


「お兄ちゃんに拒否権は無いんだよ!」


「無茶言うな」


 僕はチョコを全部抱えて、ブツブツ言って来る妹を無視してダイニングから自室へ。

 チョコを改めて机の上に並べる。


 このうち、雪乃、赤松さん、真帆の3つは本命。

 毛利さんのは、義理疑惑。

 伊達先輩、上杉先輩は義理。

 そして、げた箱に入っていたチョコだが、これらは義理なんだろうか?

 袋や箱を開けたりして確認してみるが、手紙的な物は入ってなかった。

 本人に確認する必要があるのかな?

 6人にいちいち確認して回るのは面倒だから、相手が何か言って来るのを待つことにする。


 それにしても、改めてもらったチョコの数の多さに困惑している。

 妹の言う通り、ホワイトデーのお返しも考えなければ。O.M.G.のバイトで稼ぐしかない。

 そして、当面のおやつはチョコだな。

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