雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

飽きてきた

公開日時: 2023年8月26日(土) 23:08
文字数:2,034

 金曜日。


 雪乃と毛利さんと僕での、週一回の“お弁当交換会”は継続中である。

 という訳で、朝、早起きしていつもの手抜き弁当を作る。

 そして、登校、午前中の授業が終わり、雪乃と毛利さんと僕の3人で体育館の観客席まで移動して弁当を食べている。

 僕を真ん中に、両サイドに雪乃、毛利さんが座るという、“両手に花”状態。

 

 食事中、世間話をしていると、毛利さんが僕に質問をして来た。

「最近、部室に来ないけど、アイドルの手伝いってそんなに忙しいの?」

 先日、部室に寄った時、幽霊部員になった理由をアイドルの手伝いをしている、という風に言い訳に使い始めたのだ。

 本当は、アイドルの手伝いは毎日は無い。一昨日、真帆と打ち合わせをした程度。


「えっ? アイドルの手伝いって、何?」

 雪乃が食いついてきた。


「えーと…、ちょっと知り合いになったアイドルユニットの手伝いをやってるんだよね」


「何それ? 具体的には何をするの?」


「オブザーバー的に意見を言ったり、物販の手伝いをしたり、とか」


「へー」


「雪乃は、そのアイドルを見てるし、メンバーの1人に会ってるよ」


「えっ!? いつ!?」

 雪乃は驚いて僕のほうを向いた。


「去年、お台場デートをしていた時、ガンダム横のステージに出てたユニットだよ。それに、僕とメンバーがサンシャインシティのカフェにいた時、雪乃と毛利さんが通りかかったことがあったじゃん?」


「ああ! お台場! それに、純也と池袋デートしていた女の子?!」


「いや、あれはデートじゃない…」


「女の子は、『デートだ』って言ってなかったけ?」


「いや、それは見解の相違だよ」


「あの子、うちの生徒じゃあないんでしょ?」


「違うよ。東池の人」


「どうやって、知り合ったの?」


「去年、学園祭でやった“占いメイドカフェ”のフライヤーを配りに東池に行ったときに知り合った」


「へー」


 O.M.G.の話題が出て来たので、ちょうどいい。

 昨日、真帆が『雪乃に会いたい』と言っていたので、雪乃の予定を聞いてみよう。

「そう言えば、そのアイドルの細川さんって言うんだけど、雪乃に会いたいって言ってたよ」


「え? なんで?」


「なんでも演劇に興味あるらしくて、YouTubeにUPしてる演劇部の動画を教えたら、いたく感動したみたいでね」


「会うこと自体は良いけど、最近はショートムービーの撮影で忙しいから…」


「全然、予定は空いてないの?」


「そうね…」

 雪乃は少し考えてから答える。

「来週の水曜なら何とか大丈夫だよ」


「そうか、じゃあ、水曜日で細川さんの予定も確認してから、また連絡するよ」


「わかった」


 そんな感じで、雪乃の予定も確認できた。

 昼休み、午後の授業も終わり、今日もさっさと下校する。


 いつものように、サンシャインシティのマックだ。

 そろそろここも飽きて来たので、別のところも考えたいところだ。

 120円ドリンクを買って適当な席に着く。

 

 そして、宿題を始めようとするとすぐに正面の席に誰かが座った。

 僕は驚いて顔を上げたら、前髪に赤いヘヤピンのメガネ女子=新聞部部員小梁川さんがいた。


「久しぶり」

 彼女は笑いながら挨拶してきた。

 1か月ぶりぐらいか? 今年始めて会うな。


「や、やあ」


「最近は、ここに入り浸ってるみたね?」


「うん。っていうか何で知ってるの?」


「新聞のネタを探しているのよ。武田君なら面白いネタを持っているんじゃないかと思ってね」


 てか、僕の後を付けて来たのか?

 そして、人の事をネタ扱いしないでほしいのだが。

 僕は憮然として答える。

「別にないよ」


「どうして、ここに入り浸っているの? 部活は?」


「最近は、あまり行ってないんだ」


「どうして?」


「とくに理由はないけど…」

 幽霊部員やっているとか、その言い訳としてアイドルの手伝いをしていると言っているとか、いちいち教えることはないだろう。説明するのも面倒だし、言ったら言ったで、いろいろ聞かれるだろうし。

 ちょっと話題を僕のことから逸らそうと思った。

「そう言えば、新聞に毛利さんの小説が連載されるとか?」


「ええ、2月号からね」


「前に毛利さん本人に読ませてもらったんだけど、なかなか良かったよ」


「私も読んだわ、彼女も才能あるわね」


「彼女“も”?」


「そう。執筆部の森さんぐらい、いい文章を書くと思う。得意ジャンルは違うけど」


「森さんの文章は読んだことはないな…。いや、彼女原作の同人マンガは読んだことある」


「ああ、『距離0.01mm』ね。私も読んだ。新聞部でもちょっと話題になったわ。エロい内容だけど、推理サスペンス要素もしっかりしているって」


「うん。そう思う」


 その後も、卓球部の件とか、小一時間ぐらい話しかけられてしまった。

 結局、宿題がろくに出来なかった。

 仕方ないので、帰宅して自宅でやることにした。

 なんか、ここいるといろんな人に会うから、 落ち着いて勉強ができなくなってきなた。

 もう場所を変えた方が良いのかもしれん。ちょうど、飽きてきたしな。


 帰宅後、LINEで真帆にメッセージをして、来週水曜日の放課後に雪乃と会う約束を取り付けておいた。

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