雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

ジャージャー麺

公開日時: 2025年1月29日(水) 20:41
文字数:2,155

 週が明けて月曜日。

 日中はつつがなく授業が終了して、もう放課後。

 今日はもう帰ろうかな、いや、生徒会室で古い資料をスキャンしPDFデータで保存していく仕事がまだ、たんまり残っているんだった。

 あの仕事は特に締め切りは決まっていないので、今日はまっすぐ家に帰ろうかな、などと思いつつカバンに教科書などを詰め込む。

 うん。やっぱり、かえってダラダラしようと思い立ち上がると、毛利さんが歩み寄ってきて言う。

「じゃあ、行こう」


「え? どこへ?」


「みんなで新大久保にジャージャー麵を食べに行こうって言ってたじゃん?」


「あ…、ああ、そういえばそうだっけ…」

 先週のうちに新聞部の小梁川さんにそう誘われてたんだっけ。

 約束していたのはしょうがない、付き合うか。


 僕と毛利さんは一緒に校門の前までやってきた。

 すると、そこに新聞部の小梁川さんと将棋部の成田さんが僕らを待っていた。

「じゃあ、行こっか」

 小梁川さんが言う。


「行くお店は決まっているの?」

 僕は尋ねた。


「ええ。事前にネットで調べておいたわ」


 そんなこんなで移動のため、地下鉄の雑司が谷駅にやってきた。

 副都心線で移動するのだが東新宿で降りれば、徒歩で新大久保まで移動できるので、乗り換えなしなのだ。

 というわけで、2駅4分で東新宿駅に到着。


 東新宿駅周辺はさほど観光客はいなかったが、新大久保駅に向かうと、徐々に観光客がいっぱいになってきた。

 平日の午後という時間だが歩道は人でいっぱいで歩くのも困難。

 小梁川さんの誘導で僕らは目的のお店に到着した。


 お店の中は混んでいたので15分程待って、テーブルへ。

 早速、4人ともジャージャー麵を注文する。

 待っている間、世間話。


「この中に本当にジャージャー麵を食べる資格がある人はいるのかしら?」

 と小梁川さんが尋ねた。


「“資格”とは?」

 僕は尋ねる。


「バレンタインデーもホワイトデーも関係のなかった人ってこと、つまり、チョコをあげたり、もらったりしなかった人のことね」


「そうか…。僕はチョコもらったな」


「かなりの数をもらったんでしょ?」


「まあ…、15個程…」


 それを聞いて成田さんが驚く。

「すごいですね!」


「武田君は、我が高1番のモテ男だからね」

 小梁川さんが解説する。


「それって」

 僕が尋ねた。

「新聞部が、ある事ない事Xで拡散しているからでしょ?」


「まあ、そうだけど。まったくの素養が無かったら、いくら新聞部がデマを拡散しても受け入れられないから」


 今、明確に“デマ”って言ったよな。


「武田君にはモテの素養があると思うでしょ? 毛利さん?」

 小梁川さんは唐突に毛利さんに話を振った。


「う、うん…。そう思う」

 毛利さんは恥ずかしそうに答えた。


「本当に武田さんと毛利さんは付き合ってないんですか?」

 成田さんが笑顔で尋ねた。


「い、い、いや。付き合ってないよ」

 僕は答えた。

 毛利さんは、悠斗が本命なのかもしれないのだぞ。

 もしくは悠斗が毛利さんを好きとか。

 毛利さんは相変わらず、よくわからないな。


「武田君は、二股なのよ」

 小梁川さんは平然という。


「誰が二股だよ」

 僕は抗議する。


「でも15個もチョコもらったのなら、15股もできるんじゃないですか?」

 成田さんが言った。


「何言ってんの。そんなの無理だって。そもそも15個のうち、義理チョコがほとんどだっただから」


「じゃあ、本命チョコは誰からもらったの?」

 小梁川さんが興味津々に訪ねてきた。


 新聞部にあまり詳細を話すと、後が面倒そうだから、ごまかす。

「だれでもいいじゃない」


「まあ、いいわ。大体、予想はついているから」

 小梁川さんはそう言ってニヤリと笑った。


 そうなんだろうか。

 さすがに赤松さんのことは知らないと思うけどね。


 そうこうしていると、ジャージャー麵が4人分テーブルに運ばれた。

 見ると、確かに麺の上に肉や野菜の入った黒いソースがかかっている。

 黒みそを使っているからこんな色になるんだそう。

 1口食べてみると、ソースは意外にも甘い。


 みんながジャージャー麵を食べ終わって、まったりしていると小梁川さんが再び話し始めた。

「今日、たぶんどこかで“P”の犯行が行われていると思うから、情報が入ったら知らせるわね」

 

 “P”の犯行。

 そういえば、そうだったな。


「“P”とはいったい誰なのか、その人が何のためにこんなことをするのか…、私、気になります!」

 成田さんは目を輝かせながら言った。


「“P”は名前ではなくて、誰かのあだ名なんじゃあと思っているんだけど?」

 僕は言った。


「それについては以前、新聞部のXで情報提供を呼び掛けたけど、結局、有効な情報はなかったわ」

 小梁川さんが言う。

「だから、何か別の事なんだろうと思っているわ」


「あとは、最初の怪文書の“CROWNから盗む” の意味もまだわかっていないよね」


「そうね。次の犯行で何か手がかりがつかめればいいけど」


「頑張って、捕まえましょう!」

 成田さんはちょっと気合をいれた感じで言った。

 なんで、成田さんはこんなに張り切っているんだろうか?


 とりあえず、僕も同意する。

「そうだね。さっさと犯人を捕まえて、1.57Mをゲットしよう」


「おー!」

 成田さんは拳を上げた。

 

 最後は、ちょっと決起集会ぽくみたいになったな。

 まあ、それはそれで、いいでしょう。

 僕らはジャージャー麵の料金を払って帰路に就いた。

 ジャージャー麵は、美味しかったです。

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