翌日の放課後。
僕は今日も生徒会室で資料の電子化作業をしている。
毛利さんは帰ってしまった。
しばらくしてから、支倉君が新聞部の打ち合わせが終わったと言って、手伝いに参加してくれた。
生徒会のパソコンは以前から動きが鈍く、そろそろ新しいものが欲しいところだが、生徒会の予算では新しいパソコンを買うことができないと以前、伊達先輩が言っていたな。
でも、いつかは買い換えないといけないんだけどなあ。
途中、支倉君が話しかけてきた。
「そういえば、織田先輩、ヌードモデルをやるって話なんですが…」
「そんなこと言ってたね」
「ヌードモデルの件を風紀委員が、どこかから嗅ぎつけて、先生たちに報告したそうなんです」
「ふーん」
まあ、風紀委員は頭が硬そうだからな。特に今川さんは。
支倉君が話を続ける。
「それで、美術部と交渉して、結局、織田先輩はヌードだけどシーツを纏って全身を見えないようにする。さらに後ろ姿で、女子の美術部員のみ参加であれば、という条件でOKが出たそうです」
「あ、そう」
それって、ヌードって言うのか?
まあ、学校の部活でオールヌードは無理だろうな…。
「それで、今日から3日間ほど放課後は、織田先輩はモデルをやるので美術室にいるそうです」
「ふーん。でも見学できないよね?」
「はい。見学できないです。今週、美術室は男子禁制なので」
「なるほどね…」
でも、雪乃に言えば裸を見せてくれそうだよな。
先日、下着専門店で雪乃の上半身なら見えたけど。
「完成した絵は、見せてもらえるのかな?」
「それは、たぶん大丈夫だと思います」
支倉君は続ける。
「それにしても、生徒会選挙での票の取りまとめをお願いするためにヌードになるとか、織田先輩もやりますね」
「どうしても生徒会長をやりたいんでしょ?」
僕には理解できないが。
選挙は、たしか5月末締め切りで6月上旬に候補の討論会と、応援演説があるんだっけ?
「武田先輩もヌードモデルの話があったんですよね?」
「うん。断ったけど」
「どうしてですか?」
「人前で裸になるのが嫌だから」
「ですよね。わかります」
「結局、服を着たまま、変なポーズをやらされて、それでモデルをやったよ」
「変なポーズって、どういうのですか?」
「うーん…」
口では説明できないので、僕は立ち上がって、モデルの時にやらされたポーズをしてみた。
「こういうの」
「それって…、“夜叉の構え”では?」
「そうなの?」
なんか聞いたことがあるな。いつ聞いたんだっけ?
「このポーズを長時間やらされたおかげで、翌日はちょっと体が痛くなったよ」
「モデルって大変ですね」
「そういえば、雪乃が何か2つ発表するって言ってなかったけ? 1つはヌードモデルの件でしょ? もう1つは何か聞いてる?」
「いえ。聞いてません」
「そうか…」
雪乃のことだから、もう1つもヌードとかエロいことなのかもしれん。
会話を適当に終え、その後も資料のデータ化作業を進めている。
そろそろ下校時間に差し掛かった頃、意外な人物が生徒会室に現れた。
「あ。いたいた」
そう言って入ってきたのは上杉先輩。
「あ…、ど、どうも」
僕は軽く挨拶をした。
「歴史研の新部員は集まったの?」
上杉先輩は僕にずいっと近づいて尋ねてきた。
「ま、まだです」
「ちょっと焦った方がいいんじゃないの?」
「え、ええ。まあ、焦ってますよ…」
「5月いっぱいまでに何とかしなよ」
「そ、そうですね」
僕が上杉先輩に歴史研に勧誘されたのも昨年の5月下旬ごろだった。
まだ、猶予は2か月ある。何とかなるといいのだが。
これ以上、ツッコまれるのはいやなので、僕は話を逸らす。
「上杉先輩は今日はバイトじゃないんですね」
「うん、今日は行かない。その代わり将棋部でYouTube用の動画の収録をしていたよ」
「それ、まだやってるんですね」
「うん。月1回ぐらいで2、3個分まとめて撮っているよ」
「なるほど」
「成田さんに教えてもらっているから、だいぶ強くなったよ。もう君より強いよ」
「そうなんですか?」
僕も大して強くはないが、さすがに抜かされてはいないと思うが。
「今度、対局してみようよ」
上杉先輩はニヤリと笑って言った。
「ま、まあ、いいですよ」
僕は答えた。
などと話をしていると下校時間となったので、今日のところは下校する。
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