雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

後輩はおとこのこ

公開日時: 2025年2月5日(水) 22:53
文字数:2,215

 女装男子にイカしたセリフを笑われた翌日。

 今日は放課後に僕と毛利さんは歴史研の部室で、新入部員獲得の作戦会議を開くことにした。

 というわけで、2人して部室で話し合いをする。

 1時間程話し合ったが、いい案が全く浮かばなかった。

 去年、上杉先輩がやっていたように、図書室で部活に入って無さそうな1年生を見つけるしかないのだろうか。

 以前の僕のように図書室に通っている生徒が他にいるのかどうか。


 ともかく、図書員の毛利さんが週2日ほど放課後の図書室で受付をやるので、目ぼしい1年生がいないかどうか見張っていてくれるそうだ。

 僕のほうは、生徒会室でやらないといけない仕事も溜まっていて、これもやらないといけないのでが、なんとか時間を取って週2日ほど図書室に行って見張ることにした。


 他にも何か案が無いか、2人でもう少し考えてみようということで、しばらく部室に残っている。

 少し時間が経っただろうか、部室の扉をノックする音が。


 僕は「どうぞ」と扉の外の人物に声を掛けた。

 

「失礼しまーす!」

 部室に入って来たのは、噂の女装男子の支倉君。

 今日もスカート姿だ。

「武田先輩! 今、ちょっといいですか?!」

 支倉君は元気よく話しかけて来た。


「お、おう。いいよ」


 支倉君は部室に入って来て、空いている椅子に座った。


「紹介するよ」

 僕は毛利さんに支倉君を紹介する。

「こちらは、新聞部の支倉君。後輩の“おとこの娘”」

 続いて、支倉君に毛利さんを紹介する。

「こちらは、僕と同じ2年で歴史研の毛利さん」


「よろしくお願いしまーす!」

 支倉君は元気よく挨拶した。


「よろしく」

 毛利さんも応える。


「で」

 僕は尋ねた。

「支倉君、なにか用?」


「武田先輩にお願いがあって」


「何?」


「武田先輩の密着取材をしたいんです!」


「はあ?! なんだって?!」


「密着取材ですよ!」


「わかっているよ。驚いて、聞き直したんだ」


「じゃあ、OKということですね?!」


「待って、待って…。どうして僕なんかの密着取材を?」


「雑司が谷高校一のモテ男の生態を知りたいんです!」


「うーん…。僕のことを知っても、何も得る物はないと思うけど?」


「それは、読者が考えます!」


「読者? 学校新聞に掲載するの?」


「いえ。さすがに学校新聞には無理でしょうから、Xで晒す…、掲載するんです!」


 今、『晒す』って言ったよな。

 新聞部のXで晒されているのは今に始まったことではないのだが…。


「どれぐらいの期間、僕に密着するの?」


「まずは1学期の間は密着します!」


「結構長くない?」


「全然ですよ! Xで炎上…、バズったら、1学期以降も晒し…、掲載します!」


 今、『炎上』って言ったよな。


「それより、支倉君は取材とかやったことあるの?」


「大丈夫です! 中学生の時も新聞部に所属してましたから!」


「あ、そう…。じゃあ、あまり悪い風に掲載しないのであれば良いよ」


「はい! 改竄…、脚色も得意なんです!」


 今、『改竄』って言ったよな。


「やっぱり、辞めとこうかな…」


「そんなー! 選挙の時も、次期副会長として当選できるようにうまく改竄…、脚色しますから!」


「そういうことなら、雪乃…、織田さんを取材した方がいいのでは?」


「織田先輩も取材しますが、やっぱり新聞部として面白い標的…、対象は武田先輩なんです!」


 今、『標的』って言ったよな。

 ここで拒否しても勝手についてきそうだし、許可して僕の目の届く範囲でやってもらったほうが良さそうだ。

 それに、いざという時には小梁川さんにクレームを入ればいいし。


「じゃあ、僕のことは良い風に改竄してよ」

 僕は正式に承諾した。


「はい! 任せてください!」

 支倉君は元気よく答えた。

 そして、メモとペンと取り出した。

「早速ですが質問です」


「武田先輩と毛利先輩の馴れ初めを教えてください!」


「いやいやいやいや。僕と毛利さんは付き合っているわけではないから、“馴れ初め”はおかしいでしょ?」


「えー?! 先輩たちは付き合っているわけじゃあないんですか?」


「付き合ってない」


「みんな付き合っていると思っているようですよ!」


「誤解だ」


「ともかく、お2人の出会いをおしえてください!」


 しょうがないなあ。

「えーと…。僕と毛利さんは同じ中学で、1年と2年は同じクラスで…。そんな感じ」


「中学1年生の時から付き合っていたんですね!」


「どうしても、 付き合っていることにしたいのかよ?」


「そっちのほうが面白いじゃあないですか? “おしどり夫婦”ですね」


「“夫婦”って、結婚しているわけでないぞ。そこは改竄するな。それに“おしどり夫婦”って最近でも言うの?」


 支倉さんは何かメモを取っている。

 今、なにか書くところあった?

 そして、僕の今の言うことを聞いているのか、わからない。


「でも」

 僕は続ける。

「毛利さんと、良く話をするようになったのは高校になって歴史研に入部してからだよ」


「へー。そうなんですね。どうしてお2人は歴史研に入部しようと思ったんですか?」


「無理やりだったな」

 僕は答えた。


「私は歴史に少し興味があったから」

 毛利さんが答える。


「普段、歴史研の活動は何をしているんですか?」


「普段は…、あまり何もしてないな。今日は新入部員勧誘の打ち合わせをしてたけど。連休とか夏休みなどの長期の休みの時に、お城巡りをやってる」


「全国を回っているんですよね」


「そうだね」


「いいなあ」


 密着取材ということは、支倉君はお城巡りにはついて来るのだろうか?


 そんなこんなで、下校時間も迫って来たので今日のところは終了となった。

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