雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

クリスマスイブ~その1

公開日時: 2023年4月15日(土) 20:10
文字数:2,189

 さて、土曜日となった。

 今日はクリスマスイブである。

 彼女が居ない僕は、あまり嬉しくない日ではあるが、昼から雪乃が所属する演劇部の公演が池袋のミニシアターで開催されるので、歴史研のメンバー全員で観劇に行くことになっている。

 これは、クリぼっちは回避といったところなんだろうか?


 そして、観劇の後は歴史研のメンバーでプレゼント交換会をやるとかで、そのプレゼントと、それとは別に雪乃と毛利さんにあげるプレゼントも忘れないように、それらを紙袋に入れて家を出た。

 プレゼント交換会は、どこでどうするとか聞いてないが、伊達先輩あたりが何か考えているだろうから、お任せする。

 さらに、その後は毛利さんとプラネタリウムを見に行く約束だ。

 意外に充実しているクリスマスイブだなあ。リア充?


 そんな訳で、待ち合わせ場所は、いつものように池袋の地下の“いけふくろう”前。

 一番早くついた僕は、他のメンバーを待つ。

 土曜日ということもあって、いけふくろう前の人手は多い。

 そして、クリスマスイブなので、カップルが目立つ。

 しばらく待って、伊達先輩、上杉先輩、毛利さんがやって来た。

 挨拶もそこそこに、劇が開催されているミニシアターまで移動する。


 到着すると開場時間少し前だが、並んでいる人で一杯で、長い列が出来ていた。

 その中には学校で見た顔もちらほら。みんな出演者たちの友達なんだろう。

 列の中に、新聞部の部長の片倉先輩と、小梁川さんの姿も見えた。新聞部のメンバーも来ているのか。

 まあ、彼らは取材が目的だろうけど。


 そして、開演の時間となってゾロゾロと入場。

 料金を払うと今日の公演のフライヤーを手渡された。


 タイトル『隠された手紙』


 内容はミステリーのようだ。

 シナリオを書いたのは、『アンナ・鶴ゲーネフ』となっていた。

 ん? これは確か、雑司が谷高校の学園祭の時に漫研で買ったR18で無いけどギリギリまで追求したマンガ『距離0.01mm』の原作者だ。

 同じ人物がシナリオを書いたということか。

 以前、雪乃がシナリオを書いたのは執筆部の誰か、と言っていたような気がする。

 ということは、当初、アンナ・鶴ゲーネフの正体は誰かわからず、校外の人物の可能性も考えていたが、雑司が谷高校の生徒だということで、間違いないようだ。


 僕は、コートを脱いで劇場の中の席に着いた。

 左隣の席は上杉先輩、右隣には毛利さんが座る。

 毛利さんがコートを脱ぐ。すると、コートの下には彼女らしくない丈の短いスカート。しかも淡いピンク色。

 いつも、毛利さんは地味なのを身に着けているのに…、と思って思わず注視してしまった。

 毛利さんは僕の目線に当然気付いた。

「はずかしいから、あんまり見ないで」

 彼女は恥じらうように言う。


「お、おう…」

 僕は目線を逸らした。


「これ、織田さんと一緒に服を買いに行って、選んでもらったの」


 ああ、そう言えば、先日、サンシャインシティのカフェで偶然会った時にそんなこと言ってたっけ。

 スカートが短いので、太ももがまぶしい。生足。


 僕は慌てて答える。

「そ、そうなんだ」

 えーと…、そして、ここは褒めておくのが正解だっけ?

「いいね。似合ってるよ」


「ありがとう」

 毛利さんは恥ずかしそうに礼を言う。


 僕は、彼女の太ももに気を取られているのに気付かれないように、演劇のパンフレットに方に目をやった。

 ちなみに上杉先輩はジーンズで、伊達先輩はロングスカート。

 左隣に気を取られることは無さそうだ。


 でもなんで、毛利さんはこんな露出の高い服装なんだろう?

 イメチェンかな?


 などと考えていると、舞台『隠された手紙』の開始の時間。

 幕が上がり、始まった。

 内容は、密室殺人での犯人探し。

 メインの配役は2年生。1年生の雪乃は脇役ながらも、まあまあ目立つ役柄をやっていた。


 そして、約90分観劇。

 犯人も捕まった。

 なかなか、面白い話だった。

 原作者の鶴ゲーネフもなかなかやるなあ。そして、演劇部員達の演技も上手かった。


 僕らは席を立って、ミニシアターの表に出る。

 出演者たちも挨拶のため表に出ていた。

 伊達先輩と上杉先輩は同学年の出演者に挨拶に行った。

 毛利さんは、新聞部の片倉部長に声を掛けられて、何か話をしているようだ。

 僕のほうは、雪乃の姿をみつけたので彼女に歩み寄って声を掛ける。


「雪乃、お疲れ様」


「おお! 純也! 来てくれてありがとう!」


「すごく良かったよ。雪乃の演技が一番良かった」

 お世辞を言っておく。


「ありがとう!」

 雪乃は嬉しそうに礼を言って来た。


「ストーリーも良かったよ。最後のどんでん返しが意表を突かれたよ」


「でしょ!? 森さんの書く脚本はすごく良いよ」


 そうか、アンナ・鶴ゲーネフは、執筆部の森さんと言う人だったか。


「彼女は昨日、見に来てくれたよ。後、彼女は映研のムービーの脚本も書くんだよ」


「学園祭の時に上映したやつ?」


「そう、それもあるけど、春休みに撮影するやつも書いてくれたの」


 なるほど、森さんって人は、漫画の原作も、演劇部や映画研究部のシナリオを書いたりして、なかなか活躍してるんだな。


 そうだ!

 僕は思い出して、紙袋の中から、雪乃にあげるクリスマスプレゼントを取り出して手渡した。

 そして、雪乃も僕にくれるプレゼントを用意してたいようで、リボンのついた袋を手渡してきた。

「家に帰ったら、開けてみて。じゃあ、お城巡りでね」

 雪乃はそう言うと、別の人に挨拶をしに行った。


 僕の方は他の歴史研のメンバーと再び合流する。

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