自室で睡眠中。
上半身が起こされてる…?
「うーん…」
誰かが背中側に入ってきた?
「えっ!?」
僕は驚いて目を覚ました。
そして、いきなり寝巻の襟当たりを引っ張られ首を絞められた?!
く、く、苦しい…。
状況が理解できない。
気づくと、ベッドの横で妹と前田さんが大笑いしながら立っているのが分かった。
「ち、ちょっと…、どう…なってるの?」
僕は声を出すのもやっとの状況。
どうやら後ろから誰かに絞められているようだ。
そして、意識が遠のいていきそうなところで、締めるのが止まった。
「今のは、“送襟絞”というやつです」
背後から聞いたことある声がした。
「「おおーっ!」」
妹と前田さんが歓声を上げた。
僕がなんとか振り向くと、丹羽さんが笑顔でベッドの上に座っている。
「お、おい。 何するんだよ!」
「いや、美咲ちんが、お兄さんを起こしてほしいっていうから」
「普通に起こせばいいだろ? なぜ、技を掛けた?」
妹が割り込んできた。
「普通の起こし方だと、芸がないじゃん?」
「まあ、一度起きても絞め技で失神して、また寝ちゃったかもしれないけど」
と、平気な顔で丹羽さんは言った。
「それ、意味ないじゃん…。まったく…」
僕は首のあたりをさすって、なんともないのを確認してから尋ねた。
「それで、なんで、お前らがここにいるんだよ? 前田さんは“妹”は昨日で終わりだって言っただろ?」
「今朝は、はるるんと、ジョギングに行ってたんですよー」
前田さんは嬉しそうに答えた。
見ると、前田さんと丹羽さんはジャージ姿だった。
そして、前田さんは話を続ける。
「お兄さんが一緒に走ってくれないから、他に誰か一緒に走ってくれる人がいないか、はるるんに相談したら、一緒に走ってくれるってー」
「あ、そう…。それは、よかったね…。でも、今、僕の部屋にいる理由にならないんだけど?」
「明日からお城巡りじゃあないですかー? 旅の準備をどうすればいいか、お兄さんに教えてほしくてー」
「旅の準備? そんなのカバンに着替えとか日用品とか入れて終わり」
「ええー。電車に12時間も乗ってるって聞いたので、途中の暇つぶしの道具とかないんですかー?」
「まあ、スマホでマンガ読むとか、ネット見てるとか、そんな感じ」
「みんなでトランプとかしないんですかー?」
「だって、旅で使う“青春18きっぷ”って、在来線の普通電車しか乗れないから社内は通勤や日常利用の乗客ばかりだよ、そんなところでトランプとか、邪魔だし、目立つし、恥ずかしいぞ」
「ええー。それじゃあ退屈じゃん?」
妹は文句を言う。
「上杉先輩とか伊達先輩とおしゃべりでもしてな」
「そっか…」
妹は、ちょっと不安そうにつぶやいた。
「旅行、いいなー」
丹羽さんがつぶやいた。
「はるるんも来ればいいのに」
妹が言う。
「春休みは、柔道の練習で予定がいっぱいなのでちょっと無理なんだ。この後も練習に行かないといけないし」
丹羽さんは残念そうに答えた。
僕は、時計を見た。
午前9時。
不本意な形で起こされたが早朝じゃないから、ちょうどいいか。
そんなこんなで、丹羽さんは柔道の練習ということで去っていった。
僕と妹、前田さんは、ダイニングで朝食を一緒に食べる。
前田さんは、なんか家族みたいになってるな。
「お兄さん、これからサンシャインシティに買い物に行こうと思うんですー」
前田さんはトーストを食べながら言った。
「行けばいいじゃん」
「お兄さんも一緒に行きましょうよー」
「なんで?」
「いつもお世話になってるので、ジュースでもおごりますよー」
「ええっ!? お金、大丈夫なの!?」
「昨日のバイト代が沢山もらえたのでー」
そうだった、昨日、前田さんと妹はO.M.G.のファンとチェキを撮って、売り上げに貢献したんだっけ。
それで、僕より多めにバイト代をもらったらしい。
でも前田さん、いい娘だなあ。美咲も見習えばいいのに。
「そうか、そういうことなら、付き合ってもいいぞ」
とりあえず快諾した。
朝食を食べた後、少し休んでから自宅から徒歩でサンシャインシティーに3人で向かう。
日曜日なので、買い物客などで人がいっぱいだ。
僕は、妹たちに濡れ落ち葉のようについていく。
妹たちは、服とかファッション関係の店ばかり回る。
先ほどの話の流れだと、旅行グッズでも買うのかと思ったが違うのか。
妹たちは、キャッキャ言いながら、何店舗も回ってようやく買うものが決まったようで、服を購入してた。
僕は、案の定、購入した服の荷物持ちをやらされている。
なんやかんやで、気づいたら2時間程度過ぎていた。
お昼も少し過ぎたので、昼食を食べようということで、マックへ。
前田さんと妹で折半で僕の分をおごってくれた。
ハンバーガーを食べながら、僕は気になったので尋ねた。
「旅行グッズは買わなくていいのか?」
「そうだ! 買わなきゃ!」
妹は叫んだ。
昼食の後は、旅行グッズを買うのをさらに1時間半ほど付き合わされて、自分の旅行の準備を始めたのは結局、帰宅後の夜となってしまった。
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著者の都合により、次回更新は10月下旬になる予定です。
いつも楽しみにしていただいている読者の皆様、申し訳ございません。
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