雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

冷熱の卓球男~その1

公開日時: 2023年12月6日(水) 19:58
文字数:2,406

 僕、妹の美咲と前田さんは、自宅から徒歩で池袋までやって来た。

 前田さんによると、卓球が出来る場所があるという。

 受付をした後、少し待って、卓球台の置いてある場所へ移動する。

 卓球台は2台。僕らは1つを利用する。

 もう1つの台は、他のお客もおらず、今は使われないようだ。


 ここでは、ラケットも玉も貸してくれる。

 前田さんは部活では通常マイラケットを使うらしいが、今日は家に置いてきたらしい。

 まあ、前田さんと妹は、今日はチョコづくりがメインだったからな。

 

 早速、僕は卓球台のそばに歩み寄り、ラケットを構える。

 対戦相手は、当然、前田さん。

 すでに、かなり熱が入っているようだ。

 一方の僕の熱は上がらない。

 それより、前田さん、今日、スカートだけど大丈夫なのかな?

 丈が長めのスカートなので、めくれることは無さそうだけど。

 妹は得点ボードの横に立って、得点係。


「じゃあ、行きますよ!」

 前田さんのサーブ。

 玉が打ち出された。


 彼女のフォームを見て、僕は瞬時に分析する。


 このサーブは、確か横回転サーブ。

 横スピンが効いているので、玉が台に着いたら外側に跳ねるのだ。


 年末に、上杉先輩の奴隷をやっていた時に、命令で卓球をやらされ、卓球部の福島さんに教えてもらったなぁ。

 こういう玉の返し方を教えてもらったような気がする。

 あの時の福島さん、あたりも柔らくて、教え方もうまかった。

 結局、卓球をやったの3日ほどだが、夏休みに卓球の合宿に付き合わされたこともあって、卓球の初歩の初歩は知識としてある。

 それで、年明けに、福島さんは、僕をミックス(混合)ダブルスの試合に一緒に出ようとに誘ってきた。

 まあ、当然、断ったけど。


 現在の前田さんは、かなり気合が入っている。

 目つきが、さっきまでと全然違う。別人だ。

 よっぽど卓球が好きなんだろう。

 それに対して僕はやる気ゼロだ。

 適当にやって、さっさと終わらせて、帰ってゆっくりしたい。

 寝るかVRゲームでもやって、またチマチマとレベル上げをやりたい。


 しかし、ここで適当にやり過ぎても、何か文句言われそうだしな。

 特に、妹が黙っていなさそうだ。

 妹が、文句を言いだすとうるさい。

 さっき、もらって食べたチョコを返せ、とか言いそうだし。

 でも、食べてしまったものを返せるわけもなく…。

 かなり長めの押し問答が始まりそうだ。それは、嫌だなぁ…。

 ここは少しだけでもやる気があるように見せた方がいいのか。

 そして、負ける。

 よし、そうしよう。


 ここまで0.1秒。


 玉が手前に落ちる。

 想定どおり、僕の左側に曲がるように跳ねた。

 やる気のない僕は、やる気があるところを見せるために、とりあえず適当にラケットを出す。

 玉は、僕のラケットの先端にわずかにかすって、全然違う方向に弾かれて玉は床に落ちた。


「いやー、すごいサーブだねー(棒)」

 僕はそう言って、再びラケットを構える。


 再び、前田さんのサーブ。

 彼女の目つきが、いつもと違いすぎて卓球よりも、そっちが気になる。

 前田さん、普段はトロそうなのに、卓球の時は別人のようだな。


 おや、さっきとフォームが違うぞ。

 彼女のフォームを見て、僕は瞬時に分析する。


 このサーブは、確か下回転サーブ。

 年末に、福島さんに教えてもらったなぁ。

 縦スピンが効いているので、玉が台に着いたらサーブした側に、戻るように跳ねるのだ。


 年末に、上杉先輩の奴隷をやっていた時に、命令で卓球をやらされた時、卓球部の福島さんに教えてもらったなぁ。

(中略)

 ここは少しだけやる気があるように見せた方がいいのか。


 ここまで0.1秒。


 玉が手前に落ちる。

 想定どおり玉は前田さんの方に戻るように跳ねた。

 やる気のない僕は、とりあえず適当にラケットを振る。

 僕のラケットは虚しく宙を切り空振りとなった。


「いやー、すごいサーブだねー(棒)」


「お兄ちゃん!!」

 横から、妹は叫んだ。

「真面目にやりなよ!!」


「そーですよー」

 前田さんもクレームを言う。

「だって、棒立ちですもーん」


 やっぱり、やる気の無さが出てたか。

 仕方ないので、とりあえず弁解する。

「でもなあ、そうは言っても、やる気が出ないんだよ」


「確かに、トロフィーとかが無いとやる気が出ないですよねー」

 前田さんがそう言って少し考える。

 いや、トロフィーがあってもやる気は出ないけどな。


 しばらく考えたあと、前田さんが再び口を開く。

「じゃあ…、お兄さんが勝ったら、何でもいうこと聞いてあげますー」


 その言葉を聞いて、妹が再び叫んだ。

「のぞみん、だめだよ!! このエロ男に『何でも』とか言ったら、エロいことされるにきまってるじゃん!! お嫁に行けなくなるよ!!」


 僕は妹に向かって言う。

「そんなことするわけないだろ」

 そんなことになったら、エロいことするけど。

 でも、本気でやっても勝てる可能性はゼロだろう。


「でも、私が勝ったら…」

 前田さんは笑顔で言う。

「お兄さんに、何でも言うことを聞いてもらうということでー」


「そんなの僕が勝てるわけがないから、何でも言うこと聞くで確定じゃん」

 僕は文句を言った。


「じゃあ、もう勝負なしで、のぞみんの奴隷になりなよ」

 妹が、ありえないことを言いだした。


「なんでだよ?」


「それでもいいけど、本当は、お兄さんの天才ぶりを見たいんですー」

 前田さんがいう。


「じゃあ、お兄ちゃんが負けたら、また紗夜さんの奴隷を1か月やるということにしたら?」


「なんで、上杉先輩が出てくるんだよ!」

 まったく、何を言い出すんだ。あり得ない提案だ。


「お兄ちゃんの場合、これぐらいじゃないと罰にならないでしょ!?」


「もう、帰っていい?」


「逃げるな!」

 妹が僕に近づいて、腕を掴んだ。


「待ってくださーい!」

 前田さんが改めて提案する。

「じゃあ、私の奴隷を1か月やるということでどうでしょー?」


「やだよ」


「じゃあ、なんだったらいいんですかー?」


 などと押し問答をしばらくしていたら、隣の卓球台に別のお客の団体数人がやってきたようだ。

 そのうちの1人が声を掛けてきた。

「武田君じゃん?」

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