夜になった。
VRゲームも、ほどほどに終了。
夕食はダイニングルームが定員オーバーなので僕と両親、パジャマパーティーをやる4人は、時間をずらして夕食を食べることになった。
夕食を食べた後は再び自室に戻る。
自室でノートパソコンで動画配信サイトで映画を見たりして、のんびり過ごしていると、扉をノックする音が。
「どうぞ」
僕が返事をすると、妹たち4人が部屋にぞろぞろと入ってきた。
皆、パジャマ姿だ。
妹のピンクのパジャマ姿は見慣れているが、その他にも3人いるので、ちょっと目のやり場に困るなあ。
そして、風呂上がりのようで皆、髪の毛がちょっと濡れている。
「お兄ちゃん、何見てるの?」
妹が尋ねる。
「映画だよ」
「エロいやつ?」
「いや、普通のやつだって」
「ふーん」
妹たちは僕の部屋でベットに座ったり、ローテーブルの脇に座布団を敷いて座ったりしてくつろぎ始めた。
「なんで、居座るの?」
「みんな、お兄さんに興味があるんですー」
前田さんが言った。前田さんは黄色いパジャマを着ている。
「お話ししたいと思って」
溝口さんが言った。溝口さんは水色のパジャマを着ている。
「お兄さんは、柔道の寝技が得意だと聞いています」
丹羽さんが前のめりになって言った。
ちなみに彼女は、白地に赤の水玉模様のパジャマ。
「はあ? 寝技? 何それ? 誰に聞いたの?」
僕は突然、妙なことを言われたので困惑している。
「紗夜さんが言ってたよ」
僕の質問には、妹が答えた。
「白雪姫に鍛えられてる、って」
雪乃の寝技は、エロいほうの寝技だ。
「いや、その “寝技” って、意味が違うだろ? そして、なんで断定型なんだ?」
「で、鍛えられてるの?」
妹が睨みつけながら訪ねた。
「そんなことするわけない」
「えー。残念」
丹羽さんが悔しがる。
「なんで、残念なの? そもそも意味が違うし」
「ボク、柔道やってるんです。だから、お兄さんが寝技が得意って聞いたから柔道やってるのかと思いました」
なるほど、だから丹羽さんは体つきががっしりしてるんだな。
「全くの誤解だね」
僕は答える。
「お手合わせ願いたかったのに」
「え? 無理無理。そもそも、柔道って男女別じゃあなかったっけ?」
「試合じゃあ別ですけど、練習では男女で手合わせすることがあります」
「そうなの?」
「ちょっと、はるるんの技が見たいから、お兄ちゃんにやってみてよ」
妹がまた訳の分からないことを言い出した。
いや、こうなることは、ちょっと予想はしてたが…。
待てよ…。
どさくさに紛れて、胸とかお尻とか触れるのでは…?
「じゃあ…、ちょっとだけ」
僕は、下心ありありで承諾した。
「では、横になってください」
丹羽さんは指示を出す。
僕は、言われた通りに床に仰向けに寝そべった。
「じゃあ、“袈裟固め”を」
そういうと、丹羽さんは素早く僕に覆いかぶさって技を掛ける。
えっ!?
まったく動けない。
右腕は丹羽さんの脇にがっちりと挟まれて、左腕はかろうじて動くけど、せいぜい丹羽さんの背中に触れるぐらい。
胸とかお尻とか触れるどころではない。そもそも無理。
そんなことより、苦しい。
「ち、ち、ち、ちょっと…、もう無理…」
「もっと、やれー!」
苦しんでいる僕の姿を見て喜んでいる妹の声と、前田さんの笑い声が聞こえる。
しばらく、技を掛けられたまま。
苦しい…。意識が…。
意識が完全になくなる前に、丹羽さんは技を解いた。
「どうですか?」
丹羽さんは訪ねた。
僕は、仰向けのまま 答える。
「一瞬、魂が異世界に行ってたよ」
その言葉を聞いて、妹は腹を抱えて笑っている。
下心ありありで、技を掛けられるのを承諾するんじゃあなかったよ。
「ところで、お兄ちゃん」
妹は笑うのを止めると話題を変えた。
「明日も学校でショートムービーの撮影するんでしょ?」
「するけど」
「私たちも見学していいかな?」
「え? どうだろう…? うーん、別にいいと思うけど」
「じゃあ、私たちもついていくね!」
もう、勝手にしてくれ。
妹は、さらに話題を変える。
「お兄ちゃんも、お風呂入ってきたら?」
「ああ、そうだな」
「私たち、さっき入ってきたから」
「4人一緒に?」
「そう、狭かった」
「さすがに4人一緒は狭いだろ…、じゃあ入ってくるよ」
僕は部屋を出ようとする。
「お兄ちゃん」
妹は僕を少し睨んで言う。
「私たちの後だからって、お風呂のお湯、飲まないでよ」
「飲むわけない」
やれやれ。
前、雪乃の家に泊まった時にも同じこと言われたな、どういう目で見られているのか。
僕は妹たちを部屋に残して、階段を下りながら気になった。
あの4人、僕の部屋にまだ居座る気なんだろうか?
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