雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

会場探し

公開日時: 2025年4月12日(土) 21:04
文字数:1,847

 週末は例によって、O.M.G.のライブの手伝いでライブハウスに行く。

 ゴールデンウィーク後半の3日(憲法記念日)、4日(みどりの日)、5日(こどもの日)の3日間は、毎日ライブがあるという。

 僕は5日にお城巡りの予定があるので、3日と4日だけ手伝うことにした。

 でも、ゴールデンウィークなのに、休みが少ない……。


 ライブ会場には、やはり妹と前田さんも来ていて、「物販の手伝い」と言いながら、O.M.G.のファンと一緒にチェキを撮っている。

 彼女たちは手伝いよりチェキ撮影の時間が長いため、その分、僕の仕事が増えている。


 さらに妹と前田さんは、ファンから「アイドルやらないの?」としょっちゅう聞かれるらしく、だんだんその気になってきている。

 僕は「中学3年は高校受験があるだろ?」と言って何とか食い止めている。


 4日のライブは秋葉原の会場で、午後の早い時間に開催された。

 ライブのあと、僕とO.M.G.の3人、妹、前田さんの6人でカフェに入り、打ち合わせをすることに。


「解散ライブの件だけど」

 真帆が真剣な顔で切り出した。

「なかなか適当な会場が見つからなくて、どうしようかと」


 O.M.G.は夏に解散する予定で、その解散ライブの会場を探しているのは以前から聞いていた。


「たしか、キャパ500人くらいの会場がいいんだっけ?」

 僕は確認のために尋ねる。


「うん。でも、500人規模のライブハウスって、貸し切り料金がすごく高いの」


 まあ、そうだろう。

 500人も入るライブハウスなんて行ったことないけど、どれくらいの広さなんだろう? 学校の体育館くらい?

 いや、体育館ならもっと入りそうか。


 いつもの秋葉原や池袋の会場は、100〜150人規模と聞いたことがある。

 それでも貸し切ると20万円くらいするらしい。

 となると、500人規模なら100万円……?


 そんな大金、高校生に出せるわけがない。

 でも前売りチケットが順調に売れれば、なんとかなるのかもしれない。


「純ちゃん、探しておいてよ」

 真帆が唐突に言った。


「え? 僕が?」


「敏腕プロデューサーなんでしょ?」


「いつの間に“敏腕”がついたんだよ?」


 普段は雑用係なのに、こういうときだけプロデューサー扱いだよな。


「お兄ちゃんは、あてにならないと思います!」

 妹がまたディスってくる。


「私は純ちゃんを信じているわ」

 真帆が微笑む。


 信じられても困るよ……。

 僕は曖昧な返事でお茶を濁しておいた。


「解散ライブのときに、オリジナルの新曲を発表して華々しく散ろうと思うんだけど、どう?」

 宇喜多さんが提案した。


 解散ライブで新曲?

 それってどうなんだろう……。僕はそう思ったけど、真帆も龍造寺さんも乗り気らしい。


「またフロイスさんにお願いしようよ!」

 龍造寺さんが言った。


 フロイスさん――以前、徳川さんが紹介してくれた作曲家だ。


「「それがいい!」」

 真帆も宇喜多さんも同意する。


 まあ、いいか。

 新曲には僕が関わることはなさそうだし。


 ほかには「近々、新衣装をお披露目する」とか、そんな話が出て、打ち合わせは終了した。


 帰り道、電車の中で解散ライブのことを考えていた。

 会場探し、やった方がいいんだろうな。

 夏まであと3か月ほどしかないし、悠長に構えてはいられない。


 面倒だから学校の体育館でやればいいのに……。

 でも、アイドルのライブに貸してくれるとは思えない。

 さて、どうしたものか?


 飯田橋駅で電車を降りて地下鉄に乗り換える。

 その道中、解散ライブのことをぶつぶつ考えながら歩いていると、後ろから前田さんに声をかけられた。


「お兄さーん!」


 急に話しかけられて、少し驚いた。


「な、なに?」


「私、毎朝ちゃんとジョギングしてまーす!」


「あ、そうなの……?」


 春休みに、僕との卓球勝負で負けて、スタミナをつけるためにジョギングを始めるって言ってたっけ。

 でも、なんでそんなにアピールしてくるの?


「かなりスタミナついたので、もうお兄さんと卓球しても負けませんよー!」


「ああ……そう……」


 一ヶ月程度でそんなに変わるものなのか?


「今度、リベンジマッチしてください!」


「ええー……いやだよ」


 僕は当然、拒否する。


「お兄ちゃん、対戦してあげなよ」

 妹が絡んできた。


「前にやったから、もういいだろ?」


「お兄ちゃん、負けるのが怖いんでしょ?」


「別に……」


「だったらリベンジマッチしてくださーい!」


 前田さんが畳みかけてくる。


「もう、前田さんの不戦勝でいいから」


「そんなこと言わずにー!」


「ほら、地下鉄乗らないと、いつまで経っても帰れないぞ」


 僕はそう言って、強制的に会話を終わらせた。

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