雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

部員探し~その2

公開日時: 2025年5月14日(水) 20:00
更新日時: 2025年5月14日(水) 22:29
文字数:1,801

 翌日の放課後は、古典部を作りたいと言っていた1年生たちに会って、歴史研に勧誘をする。

 支倉君は放課後までに、その1年生たちとの会合をセッティングしてくれたので、僕は1年生の教室に向かった。

 ちなみに毛利さんは図書委員の仕事で不在。


 放課後の1年生の教室。

 僕らが1年生の時に使っていたのと同じ教室だった。

 そこで待ち構えていたのは、支倉君と、男女2名ずつの4人組の計5名。


 1年生とは言え、初対面の人たちとはちょっと緊張する。

 しかも1対4だからな。支倉君が横に居てくれなかったら、とてもじゃないけど来れないよ。

 とりあえず挨拶をする。

「こ、こんにちは」


「「「「こんにちは! よろしくお願いします!」」」」

 古典部志望の4人は元気よく挨拶をして来た。


 僕は彼らの近くの適当な席に座った。

 そして、うち女生徒の1人が話を始めた。

「なんでも、副会長として古典部が部活として適正かどうか私たちの話を聞いて、審査してくれると聞きました!」


「え?」

 何それ? そんな話になってるの?


 すかさず支倉君が小声で耳打ちする。

「(そうでも言わないと、わざわざ放課後に残ってくれそうになかったので)」


「(えええ…)」

 どうすんのこの後。話の整合性が取れないぞ。


 とりあえず、なんか話をしないと…。

「ええと…。じゃあ、どうして古典部を作ろうと思ったの? 詳しく教えて」


 先ほどの女生徒が答える。

「はい! 私たち、中学が同じで、一緒に文芸部に入部していて、高校になっても文芸部に入部しようって言ってたんですが、雑司が谷高校には文芸部はないというので、しかたなく自分たちで作ろうと思ったんです!」


 そうなのだ、雑司が谷高校には文芸部はない。その代わりと言っては何だが、執筆部が存在している。

 僕はそのことを指摘した。

「執筆部には入ろうと思わなかったの?」


「私たちは読むほうが好きなんですよ。ちょっと書いたりもしますが、基本は読むのが好きなんです!」


「なるほど…。じゃあ、なんで文芸部って名前じゃあなくて、古典部なんだい?」


「それは」

 別の男子生徒が口を開いた。

「僕らはミステリー小説が好きで、そんなのばかりを読んでいたので、文芸部よりも古典部にした方が良いとおもったんですよ」


「え? 良く分からないんだけど?」


「ほら。某太郎が主人公の学園ミステリーで、古典部ってのが出て来るので、それにあやかったんです」


「某太郎?」


「某太郎です」


「そうか…。理由はわかったけど、基本的に5人いないと、生徒会としては “部” として認められないんだよ」


「そうですか…」

 男子生徒は残念そうに肩を落とした。


「頑張ってもう1人、部員候補を募らないといけないね」

 と僕は言う。

 他の部活にもう1人探せって言ってる場合でなくて、自分たちの歴史研でも1人見つけないといけないのだ。

「それよりも、君たち、歴史に興味ないかな?」

 僕は尋ねた。


「「「「全然ありませーん!!」」」」

 4人は声をそろえて答えた。


 なんだよ…。


「それより、武田先輩!」

 さっきの女子生徒が尋ねて来た。

「怪文書の謎を追ってるんですよね!?」


 昨年から、僕や新聞部が犯人を追っている怪文書のことだろう。


「え? ああ、うん。1年生なのに怪文書のことを良く知ってるね」


「はい! 新聞部のXの投稿で読みました」


「あ、そう…」


「私たちもミステリーが好きなので、この謎解きをやりたいです!」


「え? ま、まあ、いいんじゃない?」


 今のところ、犯人の手掛かりはない。

 次のターゲットが応援部かもしれないということだけだ。


「私たちが犯人をつかまえたら、古典部設立の許可をください!」

 もう1人の女生徒がズイっと身を乗り出して言った。


「いやいや。いくら犯人を捕まえても、部員は5人いないとダメだよ。それは曲げられない」


「じゃあ、犯人を捕まえられたら、そのご褒美に武田先輩が古典部に入部してください。それで5人じゃあないですか?」


「それはいいですね!」

 隣に座っていた、支倉君が大声を上げた。


 え? 支倉君、なんで同意してんの?


「「「「やったー!!!!」」」」

 古典部設立希望の4人が立ち上がって、跳ねまわっている。


「はあ? 待ってくれよ…」

 僕は抗議するも、喜びで騒いている皆に声は届かない。


 まあ、いいや。

 手掛かりが全くないし、どうせ犯人を捕まえることなんて、無理だろうからな。

 

 結局、歴史研の部員勧誘は空振りとなった。

 帰り際、支倉君と相談して、明日は“てさぐり部”設立希望のメンツに会うことにした。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート