雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

占いメイドカフェ1日目~その2

公開日時: 2022年6月11日(土) 20:19
文字数:1,542

 僕はオムライスづくりを続ける。


 2時間ほど経っただろうか、僕の名前を呼ぶ声がした。


「武田さん」


 この声は、本日2度目の東池女子高の生徒会長、宇喜多さん。

 名前は完璧に思い出せるようになったぞ。


 僕が顔を上げると、宇喜多さんが微笑んで立っていた。


「いらっしゃいませ、お嬢様」

“やれ”と言われる前にやる。


「執事の衣装も素敵ですね」


「あ、あ、ありがとうございます」

 あんまり褒められることがないので、照れるな。

 そして、宇喜多さんは雑司が谷高校の女子たちとは、いろいろと雰囲気が違う、まるで本物のお嬢様のようだ。


「頑張ってくださいね」


 そう言って、宇喜多さんはメイドに誘導されて席に着いた。

 そのメイドが僕に声を掛けてきた。


「何? 彼女?」


「いやいやいやいや。違いますよ。彼女は東池女子校の生徒会長で、この前フライヤー配りの時に知り合っただけです」


「なーんだ」

 そう言うとメイドは去って行った。


 こんなこともありながら、なんやかんやで、オムライスを作り続けて4時間が経った。夕方5時、閉店の時間だ。

 最後のお客さんがはけると、メイドたちは皆、大きな伸びをしたりしながら椅子に座って休み始めた。

 僕も疲れたので、大きくため息をついてから近くの椅子に座った。 


 学園祭1日目も終わり、占いメイドカフェも閉店となった。

 僕とメイドたちは、ほっと一息ついている。


「お疲れ様。オムライス、好評よ」


 そう言って僕に声を掛けてきたのは、占い研の部長の松前先輩。

 彼女もメイド服なのだが、占い担当なので、その上から紺色のローブを羽織って、ちょっと神秘的な雰囲気を醸し出している。


「好評でよかったです。ありがとうございます」


「ところで、よかったら、あなたも占ってあげる。お客さんは1回500円取ってるけど、タダでいいわ」


 占いとかあまり信じないけど、折角だからやってもらうか。

「じゃあ、お願いします」


 占いコーナーの机に行く。

 なんか机の上に水晶玉っぽいものが置かれているが、これは本物なのだろうか?

 松前先輩と僕はその机に対面で座る。


 松前先輩は水晶玉に両手をかざすと、何やらブツブツ言っている。

 そして、突然、僕の方を向いて言った。


「武田君、あなたの顔」


「は?」


「とても悪いわ」


「はあっ?!」


「あなたの人相よ」


 人相かよ。そして、人相見るのに水晶玉、いらないよね?

 さらに、これは、どこかのマンガであった展開と同じ。


「女難の相が出ているわね」


「そうですか」

 確かに、雑司が谷高校に入学してから、正確に言うと歴史研に入ったあたりから急激に女難に遭っているような気がするが。


「それを、なくす方法があるわ」


「えっ! 本当ですか?」


「後ろの手芸部の物販で売られている、フェルトのぬいぐるみ。犬のやつ。あれを買えば、たちまち女難がなくなるわ」


「はあ…」


「通常なら1000円のところを500円にしてあげるから、買って行ってね」


 霊感商法かな?


「という感じで、占いをやっているのよ」


「これ、クレーム出ませんか?」


「大丈夫。お客さんの時は、ちゃんと真面目にやっているから」


 おいおい、僕の時も真面目にやってくれよ。タダだと無理なのか?

 やれやれと内心で思いつつ席を立つ。折角だから、手芸部の物販を見る。


 机の上に大きさ10cm程度のフェルトのぬいぐるみがたくさん並んでいる。

 犬、猫、熊、パンダ、豚の5種。


 犬が売れ行きが悪いな。だから、売りつけようとしたのか。連係プレーが素晴らしいな。

 手芸部の部長、津軽先輩が声を掛けてきた。


「買ってく?」


「えーと、じゃあ、犬を一つ」


「ありがとうね」

 津軽先輩は犬のフェルトのぬいぐるみを手渡してきた。

 机に貼ってある値札、元々、500円だった。


 とりあえず、500円を支払う。


 そんなこんなで、しばらく休憩した後、簡単に掃除をして今日のところは解散となった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート