雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

文豪ストレンジクレイン

公開日時: 2022年10月16日(日) 20:22
文字数:1,356

 木曜日。

 あっという間に放課後。

 今日は、毛利さんと一緒に歴史研の部室に向かう。

 部室に到着すると、中では上杉先輩が紙パックのジュースを飲みながらスマホいじりに興じていた。


 僕と毛利さんが席に着いたところで、毛利さんはカバンの中から本を取り出した。

 先日、僕が文豪ツルゲーネフが原作かどうかの確認をお願いした、R18ギリギリを追求した、R18でない同人誌『距離0.01mm』だ。

 これのこと忘れてた。


「これだけど」

 毛利さんは僕に同人誌を手渡しながら言う。

「ツルゲーネフの原作じゃないみたい」


「そうか…」

 ということは原作者の“アンナ・鶴ゲーネフ”というのは、文豪とは関係のないペンネームということか。


「ただ」

 毛利さんが続ける。

「ロシア文学に詳しくないと、“鶴ゲーネフ”なんてペンネームをつけないと思うよ」


 確かに。

 しかし、何で“鶴”?

 奇妙だ。


「学校でロシア文学に詳しい人って誰だろ?」


「さあ? あんまり聞かない」


 僕はふと思い出した。

「確か、語学研究部ってのがあったよね? ロシア語をやっている人もいたような」


「語学研究部なんてあるの?」

 上杉先輩が尋ねた。


「あります。学園祭の時に“インターナショナル・カフェ”というのを2軒隣の教室でやってました」


「ああ、そう言えば、あったね」


「語学研究部って、部室どこだろう?」

 僕は尋ねるも、上杉先輩も、毛利さんも、部室がどこか、部員が誰かも知らなかった。


「そもそも、漫研の人に聞けばいいんじゃないの?」

 毛利さんが言う。


「それもそうだ」

 灯台下暗し。


 でも、ここに居る3人は、漫研にも知り合いがいなかった。

 僕たちは友達が少ない。


 まあ、いいか。

 すぐに原作者の正体がわからなくても別に構わない。

 いい作品なので、ちょっと興味があっただけだ。作画の“バタフライ・ビー”と共に、ゆっくり探すとしよう。


「毛利ちゃん、さあ」

 上杉先輩が話しかける。

「その同人誌、最後まで読んだの?」


「はい」

 毛利さんは、恥ずかしそうに答えた。


「どうだった?」


「えーと…」

 毛利さんは回答に困っている。


 エロに免疫が少ない毛利さんには過酷な質問だ。

 僕は止めに入る。

「上杉先輩、セクハラになりますよ」


「そうだね。ゴメン、ゴメン」


 この話はこれで終了し、今日も上杉先輩はスマホいじり、毛利さんは読書、僕は勉強をして過ごす。


 しばらくして、毛利さんが話しかけてきた。

「昨日、部室に来なかったけど、どうしてたの?」


「ああ、図書室に行って、そのあと直接家に帰ってしまったよ」


「水曜日に図書室に行くの珍しいね」

 僕が図書室に行くのは、上杉先輩と2人きりになるのを避けるため。毛利さんが図書委員の仕事で図書室に居る時だ。

 だから、大抵、火曜日と金曜日に図書室に行く。


「小梁川さんと会ってたんだよ」


「新聞部の? 火曜日も話をしてたよね?」


「うん、ちょっと、聞きたいことがあってね」


 横から上杉先輩が割り込む。

「なになに~? 逢引き?」


「違いますよ」


「じゃあ、何よ?」


「ツイッターの運用について聞いてたんです」


「なんで?」


「個人的に興味があって」

 宇喜多さんとお近づきになりたいなどとは言えず、適当にごまかす。


「あ、そう」


 上杉先輩は、納得したようだった。

 しかし、毛利さんの表情を見ると、ちょっと納得いってない感じだった。

 僕は、それに気が付かないふりをして、自分の勉強に戻った。

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