雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

キスする場所

公開日時: 2024年5月11日(土) 20:40
文字数:1,767

 土曜日

 3月恒例のショートムービーの撮影で学校までやって来た。

 午前中から、空き教室で撮影をする。


 途中、昼食時の休憩に窓の外を見ると、サッカー部が練習をしていた。

 悠斗や六角君の姿も見えた。

 彼らとのVRMMORPGもしばらくプレイしてないので、近々また一緒にパーティー組みたいと思っている。


 午後、撮影を再開。

 この日の撮影も大きな問題もなく、夕方頃に終わった。

 撮影の後、後片付けをする映研の横で、僕と雪乃は立話をする。

 話題は、昨日の毛利さんのサプライズ誕生パーティーの件。


「昨日、毛利さんのサプライズは失敗だったんじゃない?」

 僕は雪乃に意見を求める。


「そう? なんで?」


「毛利さん、ちょっと不機嫌そうだったし」


「そうだっけ?」


「だって、パーティー中、ずっと腕をつねられてたんだよ」


「そうなんだ?」

 雪乃は声を上げて笑った。


「笑いごとじゃないって」


「それは、純也とエッチできそうだったのに、できなかったからじゃない?」


「いや、エッチまでは求めてなくて…、昨日は、キスしたかったんじゃないの?」


「じゃあ、キスしてあげればいいんじゃん? 純也と歩美、まだキスしてないんだよね?」


「キスすると言っても、そう簡単にいかなくて」


「なんで?」


「なかなか、キスする場所が無くて…。自室だと、なんか邪魔が入るんだよ」


「邪魔?」


「いつも妹がタイミングよく、乱入するんだよ」


「そうなの?」


「ひょっとしらた、盗聴されてるんじゃないかと思って」


「えー?! そこまでする? 本当なら、いくらなんでも怖いよ」


「うーん、そうだよね…。でも、その疑惑があって…。盗聴器を見つける機械がないかなあ?」


「そうね…、新聞部とかなら持ってるんじゃない?」


「新聞部?」


「なんか、盗聴とかやってそうじゃない?」


「ああ…。やってそうだね」

 片倉部長や小梁川さんの情報収集力をみると、盗聴とかやってる可能性はありそうだ。

「今度、聞いてみるよ」


「話を戻すけど」

 雪乃はちょっと真剣そうな顔で話を続ける。

「キスする場所が無いって、そんなのどこでもいいじゃない?」


「どこでも、って言っても…。例えばどこ?」


「学校だったら空き教室とかトイレとか、どこでもあるじゃん?」


 そう言えば、雪乃とは演劇の練習といって、空き教室でキスしたことあるよな。

「空き教室は良いけど、トイレはちょっとなあ…」


「なによ。私なんかトイレでエッチしたことあるのに」


 そう言えば、以前そんなこと言ってたな。


 雪乃は僕の顔を覗き込んだ。

「じゃあさ。私の部屋はどう?」


「ええっ!?」

 雪乃が妙な提案をしてきたので僕は驚いた。

「そんなこと出来るわけないじゃん」


「だから、純也と歩美が私の部屋に遊びに来るって話にして、2人が来たら私はちょっと用があるからって言って30分ほど出かけるから、そのうちにキスしちゃえば?」


「うーん。どうなの…、それ?」


「なんだったら、エッチしててもいいし」


「えっ!? いや、さすがに人の部屋でできないでしょ?」


「私の部屋だったら、2人のエッチ終わったら、次は私がすぐに純也とエッチ出来るじゃん?」


「いやいやいやいや…」

 雪乃の突拍子もない提案には困惑するな。

 でも、キスだけなら、場所を提供してもらってもいいのか?

「まあ、キスの件は考えさせて」


「うん」

 雪乃は笑顔で返事をした。


 撮影チームの後片付けも終わり、僕らは校舎を出た。

 すると、ちょうどサッカー部の練習も終わったようで、悠斗と校庭近くで顔を合わせた。


「おや、純也、土曜なのにどうしたんだい?」

 悠斗は尋ねるが、すぐ、そばにいた雪乃に気が付いて言う。

「ははーん。学校でイチャついてたのかい?」


「違うよ! 映研のショートムービーの撮影だよ」


「そんなことやってるんだ?」


「悠斗には、言ってなかったっけ…? 実はそうなんだよ」


「ふーん。どんなムービー?」


「ラブコメだよ」


「へえー。純也が主役なのかい?」


「そうだよ」


「ヒロインは織田さんかい?」


「そう」


「なんだ。やっぱり2人でイチャついていたんじゃん?」

 悠斗は笑いながら言った。


「ムービーは、あくまでも演技だから」


「それはそうと」

 悠斗は話題を変える。

「また近いうちにVRやろうぜ」


「ああ、いいよ。ちょうど一緒にやりたいと思っていたところだよ。またLINEするよ」


「ああ、じゃあな」

 悠斗はそう言って部室棟へ向かって行った。


 僕ら撮影部隊も帰路についた。

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