週末、土曜日は午後から、いつもの様にG.M.O.のライブの手伝いに、妹と前田さんと行った。
何事もなく無事完了。
そして、日曜日。
午後から伊達先輩の誕生会をやることになっているので、まずは先日予約した誕生ケーキを池袋まで取りに行く。
ついでに何かプレゼントでも買おうかと思い、適当に考えて池袋の百貨店でハンカチを買ってプレゼント用に包んでもらい帰宅。
ケーキを一旦冷蔵庫に入れると部屋に戻った。
午後になると、前田、丹羽、溝口がやって来た。
そしてしばらくして、伊達先輩も到着。
彼女らは、まずは妹の部屋で勉強会を2時間ほどやるという。
僕はやることがないので、少し残っていた宿題を片付けると、誕生パーティまでVRMMORPG“色彩の大陸”をやって時間を潰すことにした。
という訳で、VRゴーグルをかぶってログイン。
そして、フレンドのログイン状況を見る。
悠斗、六角君、ユミコさんの3人はログインしていないな。
今日もぼっちプレイか。まあ、仕方ない。
さて、今日は何をどうしようか…。
なにか新しいイベントはないかとインフォメーションを見る。
すると、街の中に潜伏している現金輸送馬車の強盗犯を探す期間限定イベントがあったので、それをやることにした。
街中をウロウロ。
多くの他のプレイヤーたちとすれ違う。
プレイヤーたちの頭の上の吹き出しは、相変わらず多くの外国語が飛び交っていて、国際色豊かな雰囲気。
しばらくプレイをしていると、誰かに肩を叩かれた。
妹、勉強会が終わったのか?
などと考えつつゴーグルを外すと、目の前に立っていたのは毛利さんだった。
想定外の人物に、僕はちょっと驚いた。
「わっ!」
「ちょっとだけ早いけど来ちゃった」
毛利さんは微笑んだ。
今日は、毛利さんも伊達先輩の誕生パーティーに参加するので、僕の家に来てもおかしくはない。
「そ、そうなんだね。いらっしゃい」
僕は挨拶をする。
そして、僕は机の上の時計を見る。
妹たちが勉強を始めてもうすぐ2時間程。
そろそろ勉強会も終わる頃かな。
「ゲームをしてたの?」
毛利さんは僕が手に持っているVRゴーグルを指さして尋ねた。
「う、うん。たまにやってるんだ」
「そう」
と、毛利さんは短く言うとベッドに腰掛けた。
僕もVRゴーグルを机の上に置いて、毛利さんの隣に座った。
今は毛利さんと2人きり。
妹はまだ勉強中だから部屋には入ってこないので、邪魔されないのでは?
この前、部室でキスしようとしたところを今川さんと支倉君に邪魔されたので、今がチャンスなのではないか?
よし。
僕は意を決して、毛利さんの肩に手を回して、少し引き寄せた。
そして、顔を近づける。
毛利さんも察したのか、目を閉じてキス待ち。
その瞬間。
「お兄ちゃん! 始めるよ!」
妹が、いきなり扉を開け、大声で叫んだ。
「わっ!」
僕は驚いて、毛利さんから身を離した。
「ノックしろよ!」
僕も叫んだ。
そして、キスを邪魔されたのでムッとして尋ねた。
「始めるって、何を?」
「恵梨香さんの誕生パーティーに決まってるじゃん」
妹は怪訝そうに言った。
そして、妹に続いてゾロゾロと前田、丹羽、溝口も部屋に入ってきた。
彼女たちの手には僕が買って来たケーキや、皿にフォーク、ジュースの入ったペットボトルなどをそれぞれ手にしていた。
僕は驚いて尋ねた。
「えっ?! ちょっと待って、僕の部屋でパーティやるの?」
「そうだよ」
妹は平然と答えた。
「狭いだろ?」
「大丈夫だって」
妹がそう言うのと同時に、女子たちはローテーブルにケーキやジュースを置いた。
後に続いて、伊達先輩が部屋に入ってきた。
そして、雪乃も演劇部の活動を終えて到着。
次に取材ということで支倉君もやってきた。
支倉君の服装はサロペット、私服もスカートなんだな。
「武田先輩の家って、学校から近くていいですね!」
支倉君は嬉しそうに言う。
「ん? そういえば、うちの場所って教えてたっけ?」
僕は尋ねた。
「以前、先輩をつけたことがあったので、知ってました!」
ストーカーかよ。
さらに少し遅れて、上杉先輩もバイトが終わってやって来た。
上杉先輩は何やら大きめの紙袋を持って来ていた。
全員が揃ったところで、
「準備は整っていますから、始めましょう!」
妹が言うと、コップにジュースが注がれて、みんなで唱和。
「恵梨香さん、誕生日おめでとうございます!」
次にハッピーバースデーが歌われ、乾杯の後は和気あいあい?と歓談が始まった。
流石にこの部屋に10人は狭い。ぎゅうぎゅう詰めだ。
僕と毛利さんと雪乃と支倉君はベッドに腰掛け、伊達先輩と妹たちはローテーブルを取り囲む様に座り、上杉先輩はいつの間にかベッドに横になってエロマンガを熟読している。
しばらく歓談していると、雪乃が丹羽さんに柔道の話題を振った。
「ねえ。また寝技を教えてよ」
「いいですよ」
丹羽は笑顔で快諾する。
雪乃、柔道の寝技を覚えてもベッドの上では使えないだろうに。
と、僕は心の中で突っ込んだ。
そして、案の定、寝技の実験台は僕がやらされた。
やれやれ。
床に転がって、締められたり、のし掛かられたり。
誕生会の終盤には、プレゼント贈呈が行われた。
僕のハンカチも無事に伊達先輩に渡された。
先ほど、上杉先輩が持って来た大きな紙袋は、上杉先輩のバイト先の服やアクセサリーなどで、上杉先輩と妹たちが、それぞれプレゼントとして分担して購入したらしい。
皆は、今から着替えて見せて欲しいと、伊達先輩にリクエストする。
上杉先輩のバイト先はギャル系の物ばかりだよな。
伊達先輩までギャル化させる気か。
伊達先輩は隣の妹の部屋で、上杉先輩に手伝ってもらって着替える。
そして、僕の部屋に戻ってきた。
伊達先輩は、服装、アクセ、メイクも上杉先輩にバッチリ施されて、ギャル化していた。
しかし、ちょっと違和感。
「ちょ〜ウケる〜」
などと、伊達先輩はギャル風に話し始めた。
本人はノリノリのようだが、違和感しかない。
他のみんなにはバカ受けして、妹は腹を抱えて笑っていた。
でも、伊達先輩がこんなことするとは、意外だったな。
夕方も遅くなって来たところで、誕生会は解散となった。
伊達先輩はギャル化したまま帰って行った。
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