雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

年上女子は苦手

公開日時: 2022年4月27日(水) 20:52
文字数:1,659

 翌日。

 今日は、雨が降っているので憂鬱だ。


 登校をすると、いつものようにげた箱付近で毛利さんと出会い、連れ立って教室へ向かう。

 悠斗が松葉杖をついて、登校してきた。今日も数名の女子の取り巻きを引き連れている。雨の日の松葉杖は傘もあって大変そうだな。いや、女子たちがいるから大丈夫か。


 さて、先日、上杉先輩に悠斗を紹介してくれとお願いされたのだが、このところ女子の取り巻きが常に張り付いているので、その話をするタイミングが無い。

 仕方ないので、LINEで聞いてみることにする。昼休みにメッセージを送った。


『歴史研の上杉先輩が、悠斗を紹介してくれと言っているが、どうだろう?』


 しばらくして返事が来た。


『上杉先輩って、あの小柄なギャルの人だよね?』


『そうそう。知ってるんだ?』


『見かけたことがあるよ。うちの学校でギャルは少ないから目立つし』


『で、どう?』


 しばらく経って返事が。


『悪いけど、年上には興味ないな。ちょっと苦手で』


『そうか、わかった』


 そうか、悠斗は年上には興味ないか。

 悠斗はイケメンだから、その気になれば女子は選びたい放題だろう。だから、あえて好みでない女子と知り合うことをしなくてもいいのだ。

 羨ましい。


 ちょっと嫌味を送ってやろう。


『イケメンは女子が選り取り見取りで良いよなー。うらやましい』


『別に良くないし、うらやむこともないだろう? それに、純也は毛利さんがいるじゃん』


『毛利さんとはそう言う関係じゃないよ (;・∀・)』


『そうかい? まあ、時間の問題だね ( ̄ー ̄)ニヤリ』


 というわけで、上杉先輩に悠斗が“年上には興味ない”ことを伝えなくてはならなくなった。

 彼女は、どういう反応をするかな?


 放課後。

 僕と毛利さんは一緒に歴史研の部室である校舎の4階、端の端、理科準備室に向かう。

 扉を開けるも部室には、誰もいない。


 僕と毛利さんは、学園祭の展示を作る作業に取り掛かる。

 しばらくすると上杉先輩がやって来た。そして彼女も展示作りに取り掛かった。


 悠斗の件は、毛利さんが居るので遠慮して話題にしなかったが、毛利さんがお手洗いに立ったので、今がチャンス。


「足利悠斗を紹介する件ですが…」


「おお! どうだった?!」

 上杉先輩は嬉しそうに顔を上げた。


「本人曰く、“年上には興味ない”そうです」


「なんだー。残念」

 上杉先輩は落胆して肩を落とした。


「先輩だったら、他のイケメンがすぐ見つかりますよ」

 と、心にもない慰めの言葉を口にした。


 などと、やり取りをしていると毛利さんがお手洗いから戻り、続いて伊達先輩が部室にやって来た。


 伊達先輩は、僕の作業している展示物を見ると感想を言う。

「私の分もやってくれて、ありがとう。良くできてるわ。さすがね」


 なんたって、一昨年の展示やネットで検索した内容をパクっ…、いやいや、インスパイヤされて作ったからね。


「ところで」

 伊達先輩が話題を変えた。

「図書委員の毛利さんは知っていると思うけど、来週の木曜日と金曜日の放課後に図書室で本の整理をするのよ。OBから大量に書籍の寄付が来る予定で、それの整理と、元々、図書室にあった人気の無い書籍を書庫に移したり、処分したりする作業もついでにやろうということになったの」


 よりによって学園祭直前にその作業か。OBの人も寄付のタイミングが悪かったな。そして、作業をやらされる生徒会も図書委員もご苦労なことだ。

 などと考えていると、伊達先輩が僕に近付いて言った。

「武田君も手伝ってくれないかしら?」


「え?」

 なぜ巻き込む?


「武田君には寄付された書籍のリスト化をお願いしたいのよ。タイトルと著者名をパソコンで入力してほしいの」


「なぜ僕が?」


「以前、“パソコンを使う作業があるときは、手伝ってくれる”という約束をしてくれたから」


 しまった。

 たしかに、夏休みに生徒会室で、そう言う約束をしたな。

 運の悪いことに、クラスの出し物の演劇のリハは水曜日なので、予定がかぶらない。


 仕方ないな。

「わかりました」

 僕は、しぶしぶ承諾した。


 それを聞くと伊達先輩は満足そうに微笑んだ。

 やれやれ、僕も年上女子が苦手になりそうだ。

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