雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

遭遇再び

公開日時: 2023年3月2日(木) 04:36
文字数:2,046

 僕がサンシャインシティのカフェに入るとすぐに、先に来ていた毛利さんを見つけることができた。いつも座る通路に面した座席。

 ここは、以前、毛利さんと図書館での勉強会の後で来たところだ。そして、先週は細川さんと来た。

 僕と毛利さんはドリンクをカウンターで注文し、いつもの通路から近い席に着いた。

 

 少し世間話をした後、毛利さんが話題を変える。

「クリスマスは、どうするの?」


 雪乃と別れた今、リア充イベントとは全く無縁だ。

「僕にクリスマスに用事があると思う? クリぼっち確定、クルシミマスだよ」


「そう…」


「毛利さんは、デートするんでしょ?」


「えっ? デートなんかしないよ」


 伊達先輩とはクリスマスを一緒に過ごさないのだろうか。

 この2人は良くわからんな。

 まあ、冬休みが始まったら、歴史研のお城巡りで4泊5日の旅があるから、別に良いのかな? でも、2人きりにはなれんよな…。

 やっぱり、もう別れたのか?

 それを聞くのも何か気が引ける。


 あっ、唐突に思い出した。

「そう言えば、クリスマス当日には織田さんの舞台があるから、見に行こうと思っているよ。毛利さんも行くって言ってたよね?」

 危うく織田さんの舞台を忘れるところだった。


「うん、行く」

 毛利さんは話を続ける。

「舞台、昼間でしょ? その後、プラネタリウムに行かない?」


「え? プラネタリウム?」


「ほら、東池の学園祭に行ったとき、約束したでしょ?」


 そう言えば、そんなことを約束をしたような気がする。すっかり忘れていた。

 何とか記憶を辿って答える。

「サンシャインシティの“プラネタリウム満天”だっけ?」


「うん」


「いいけど」

 まあ、クリぼっちよりましだろう。


 などと、しばらく世間話をしていると、近くから僕の名前を呼ぶ声がした。


「武田さん」


 声の方を向くと、そこには、なんと宇喜多姉妹が立っていた。

 メガネに黒髪三つ編みの姉、茶髪で姉より背が少し高い妹。


 僕はちょっと驚いた。

「あっ! 宇喜多さん! こんにちは」


 宇喜多姉が話しかけてきた。

「お久しぶりです。お元気ですか?」

 彼女に会うのは東池女子校の学園祭以来だ。


「ええ、元気です」

 僕は答える。

 宇喜多姉に会えて、ちょっと嬉しい。


「デートですか?」


「いやいやいやいや、違いますよ」


 次に宇喜多妹が挨拶をしてくる。

「先週はどうもでした」


「こちらこそ」


 宇喜多姉が話を続ける。

「先週、合コンだったんですてっね。妹が、そちらの新聞部の方を紹介していただいて、SNSの運用方法をいろいろ教えてもらったのを、聞きました」


「そうなんですね」

 片倉先輩、合コンで何の話をしてたんだよ。


「それで、うちの生徒会のSNS運用の参考にしようと思っています」


「それは良かった」

 片倉先輩のツイッターが参考になるとは思えないが、宇喜多姉が参考にすると言うのであれば、それで良いのであろう。


「武田さんが、その方を連れてきてくれたおかげです。ありがとうございました」

 宇喜多姉は丁寧に頭を下げた。


「いやいや。大したことしてませんよ」

 かしこまって礼を言われると、こちらも恐縮してしまうな。


 偶然、懸念事項だった宇喜多姉にSNSの運用方法を教えるというミッションがクリアになっていた。

 しかし、お近づきになる理由が消えたな…。


「お邪魔になると悪いので、これで失礼します」

 そう言って再び頭を下げると、宇喜多姉妹は去って行った。


 一部始終を見ていた毛利さんが尋ねた。

「いまの2人、誰?」


「メガネの人が、東池女子校の生徒会長。もう1人はその妹」


「合コンとか言ってたけど?」


「妹の方が、先週の合コンに来てたんだよ」


「ということは、学園祭でアイドルステージに出てた人?」


「そうだね」


「どこかで見たことあると思った」

 そして、不満そうに続ける。

「なんか、嬉しそうだね」


「そ、そんなこと無いよ」

 僕は、ごまかす。

 まあ、宇喜多姉に会えて嬉しいけどな。顔に出てたか。


 そして、その後、30分ほど世間話をしてから毛利さんとは別れ、帰宅した。


 帰宅すると、自宅の居間で妹に声を掛けられた。

「お兄ちゃん、今日の合コン、最悪だったよ!」


 まあ、隣がずっと僕だったからな、不満はわからないでもないが。

 それでも言い返しておく。

「お前のくじ運が悪いだけだろ」


「人生初合コンだったのにー! 私が隣で、お兄ちゃんも面白くなかったでしょ?」


 そう言えば、歴史研の女子3人も人生初合コンだったのでは?

 しかし、あんまり盛り上がらなかったから上杉先輩も、もう合コンやろうって言わないのではないか?

 ということは、今後、面倒な合コンの幹事をやらされることはないだろう。

 僕にとっては、盛り上がらなくて逆に良かったということになる。


「いや、別に。良かったんじゃない」


「なんで?! 私とずっと一緒で良かったってこと?」


「いや、そうじゃない…」


「私たち、兄妹だよ! キモイ!」


 妹は真っ赤な顔で激怒して自分の部屋に戻っていった。

 勘違いしてるな。

 まあ、どうでも、いいや。


 その後は、自宅でのんびり過ごした。

 そして、明日、日曜日は予定が何もないので、引き続き自室に籠ってゆっくりすることにする。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート