ラグビーボールが盗まれたことが発覚した翌日の放課後。
新聞部の片倉先輩、小梁川さん、そして、毛利さんと僕、さらには僕を密着取材中の支倉君はぞろぞろと連れ立って、コーラス部にやって来た。
小梁川さんが昨日ラグビー部の部室に置いてあった楽譜“コンコーネ”を井伊さんに手渡した。
井伊さんはなぜ他の部室に楽譜があったのか不思議そうにしていたが、僕らも“P”の意図がわからないので、なぜラグビー部の部室に楽譜があったのかは分からないままだ。
とは言え、井伊さんは楽譜が無事に戻ってきたことについては、ちょっと安心したようだった。
彼女によると、その後は音楽教室から何か盗まれたり、不可解な事件などは無いと言うことだ。
僕らは音楽教室ではもう手掛かりは無いだろうと判断して、一度、新聞部の部室に向かった。
新聞部の部室では、部員一同と僕と毛利さんが椅子に座って推理大会を始める。
新聞部の部員は新入部員が数名入ったようで、見覚えのない1年生が数名増えていた。
その一方、3年生は、ほとんどが引退して、片倉先輩以外は居なくなっている。
推理大会の話を進めるのは部長の小梁川さん。
「さて、今回、なぜラグビーボールが盗まれたのか?」
「ラグビー部の部室に出入りできるのは、部員だけなんですかね?」
僕は尋ねた。
「基本は部員だけね」
「じゃあ、部員の誰かが怪しいのでは?」
「そうね。今後はちょっと部員を探ってみるわ」
支倉君が言う。
「怪しそうなラグビー部員に『犯人はお前だ!』って言ってしまえば?」
「でも、しらばっくれられたら、どうしようもないわ。確実に証拠があるか、盗みの現行犯逮捕じゃあないと」
「そうですか…」
支倉君は、肩を落とした。
「楽譜とボールに何か意味があるのかな?」
僕は尋ねた。
「どうかしら…。楽譜にボール、共通点が全く分からないわ…」
小梁川さんも少々困った様子だ。
他の部員や、僕や毛利さんも何も思い浮かばない。
しばらく、部室内を沈黙が包む。
しばらくして、僕は尋ねた。
「ラグビー部にあった手紙では、次の犯行予告は無いよね?」
「ええ、無いわね」
「2月、3月、4月といずれも14日だったから5月も14日に犯行があるんじゃない?」
「そうね…。警戒しておきたいところだけど、次が何を盗むか全く読めないから、警戒のしようがないわね」
「手の打ちようがないか…」
「私は」
毛利さんが言う。
「やっぱり、成田さんが怪しいと思う」
「毛利さん、前も言ってたわね。成田さんの自作自演って」
小梁川さん答えた。
「ええ」
「成田さんが、ラグビー部の部室に行ったという証拠でも出ればいいんだけど。女子は授業でラグビーは無いから、そうだとしたら決定的ね」
「とりあえず」
片倉先輩が立ち上がって口を開いた。
「これまでの怪文書でわかってない部分を書き出してみよう」
片倉先輩は部屋にあるホワイトボードに書き始めた。
「まず、最初の怪文書の
“CROWNから盗む”
の意味。
そして、2番目の怪文書の
“ぶかつのなまえ。”
の意味についてだ」
一同、考えるも、全くわからない。
「それに報酬の“1.57M”の意味も分かってないけどね」
確かにそうだ。
157万円の意味だと良いのだけどな。
片倉先輩は続ける。
「小梁川さん。とりあえず、この2つの不明点と、ラグビーボールが盗まれた件を新聞部のXに投稿しておいてよ。その投稿を見た誰かが良い答えを見つけてくれるかもしれないしね」
「わかりました」
小梁川さんは答えた。
その後もしばらく推理大会を続けるが全く分からないままだった。
話が終わると、僕と毛利さんは新聞部を後にした。
今日は歴史研の部室には寄らず、今日のところは解散となった。
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