雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

このピーラー、めんどくさい

公開日時: 2023年4月12日(水) 20:18
文字数:2,573

 金曜日。終業式だ、怒涛の2学期がやっと終わる。

 いろいろあったが、一旦は区切りとなるだろう。

 気がかりなのは、上杉先輩の奴隷状態が年明けまで続くということだ。

 

 とりあえず、登校して終業式に参加。

 校長の有難い長い話を聞き終えると、教室に戻り通知表をもらう。

 期末試験の成績が以前の通り、中の上の定位置に戻ったが、中間試験の9位というがあったので、結果、通知表の内容は中の上というか上の下というか、まあ、こんなもんか。


 10時半頃には担任の話も終了し、放課となった。

 さて、これからは、生徒会室の掃除をするというので、呼び出されている。

 というわけで、生徒会の総務の役職でもある雪乃と一緒に生徒会室に向かった。


 生徒会室に着くと、ほかの生徒会役員である伊達、松前、佐竹、津軽の各先輩たちもぞろぞろとやって来た。

 全員揃うと、ほどなく掃除が開始される。

 掃き掃除と拭き掃除を誰が何ををやるか、じゃんけんで決める。

 負けた僕は、雑巾がけと窓拭きをやらされることになった。冬にこの作業は辛いが仕方ない。

 掃除を始めて約1時間と少しぐらいでそろそろ完了というときに、伊達先輩に話しかけられた。


「この怪文書だけど」

 伊達先輩はコルクボードに貼ってあった例の怪文書を手にして、僕に尋ねて来た。

「もういらないから、捨てようと思うけど、武田君いる?」


 怪文書の内容、特に報酬の『1.57M』が気になっている僕は、それを取って置きたかった。

「もらってもいいですか?」


「どうぞ」

 伊達先輩は怪文書を手渡してきた。

 僕はそれを折りたたんでポケットにしまった。


 その後、掃除の最終盤、いらないゴミを体育館裏のゴミ捨て場まで持って行くという。一番重い紙ごみの入った段ボールを運ぶ役目を仰せつかう。


 ごみ捨ても終わり、生徒会室の戻ると、みんな椅子に座って休みながら最近の生徒会の話題を話し始めた。


 僕が副会長になってからは、新聞部の協力もあって支持率も上がり、将棋部との対立もガリガリ君の領収書の件が無くなったので収拾し、北条先輩の動きも新聞部部長の片倉先輩の脅しが功を奏して、まったく動きがないという。

 とりあえず、懸念事項がすべて消えたので、今後の運営には大きな支障は無さそうとのことだ。


 他の役員みんなに、副会長に就任したことに対し改めて礼を言われた。

 とりあえず、僕は役に立ったいうことか。副会長としての本来の仕事は何もしてないけど。


 世間話もほどほどに生徒会は解散となった。

 それぞれ、帰路に就くか、自らが所属する部活の方へと散開する。

 僕と伊達先輩は、もちろん歴史研の部室に向かう。

 本当は、行きたくないが、今日も奴隷労働をやらされることだろう。


 部室に着くと、上杉先輩が1人でスマホいじりをして待っていた。

 毛利さんは…? そうか、金曜日だから、図書委員の仕事で図書室に居るのだろう。


「来たね!」

 上杉先輩は僕の姿を見ると嬉しそうに声を掛けてきた。

「今日は、弁当は?」


「え? 今日は、弁当なしって話でしたよね?」


「そうだっけ?」


「そうですよ」


 上杉先輩、わかってて言ってるだろ?


「その弁当のことなんだけど」

 上杉先輩はしかめっ面になって話を続ける。

「冷凍食品と昨晩の残り物で作っているから、キミはほとんど何もしてないっているタレコミがあったんだけど」


「え?」

 そうか、妹が言ったんだな。

 僕は弁明する。

「いや、弁当なんて、そんなもんですよ」


「じゃあ、これから君んちで料理作ってよ」


「なんで、『じゃあ』になるんですか?」


「もう、お昼でお腹空いたし、キミは奴隷だから言うこと聞くの!」


 また無茶ぶりを。しかし、奴隷は言うことを聞かないといけないのだ。

 やれやれ。

 そんなわけで、上杉先輩、伊達先輩、僕は部室を後にして学校から徒歩5分の自宅へ来ることになった。


 僕は、2人を家に招き入れる。

 妹もすでに帰宅していた。妹も終業式だったから、早く帰宅したんだろう。

 流れで、妹も僕の料理を一緒に食べることになった。

 僕はあきらめて冷蔵庫を開けて食材を確認する。

 あまり入ってなかったので、まずは、食材を買いに行くことになった。


 米はあったので、炊飯器で準備しておいて、僕は一人で近所のミニスーパーに向かう。

 そう言えば、料理は何を作るかはリクエストを受けてないので、また簡単な物を作ってやろうと企んだ。

 オムライスやカレーだと、『前と同じだ』とクレームが来そうなので、別の物で簡単にできそうなのを少し考える。


 何が良いか…。

 よし! トン汁にしよう。

 以前、読んだ某マンガでトン汁を作るシーンがあったので、それを思い出しながら作ればいいか。

 そして、具だくさんのトン汁にしてしまえば、別におかずは、いらないのでは?

 そもそも、昼食だし、そんなに量はいらないはずだ。


 確か、味噌はあったので、具だけ買えばいい。

 と言うわけで、トン汁の具を購入する。

 財布の中身の都合上、豚肉、大根、ニンジン、長ネギのみを購入して帰宅。


 帰宅すると、伊達、上杉、妹の3人はリビングのソファに座ってTVを観たりしてくつろいでいた。

 僕は、それを尻目に料理を作り始める。


 料理の途中、上杉先輩が様子を見に来た。


「何を作ってるの?」


「トン汁です」


「おっ! いいねぇ」

 上杉先輩はトン汁に納得してくれたようだ。しかし、僕の作業の様子をみて怪訝そうに尋ねて来た。

「それ、何やってるの?」


「大根の皮をむいているんですよ」


「ちょっと待って、大根の皮をむくときは、切る前にやるんだよ!」


「え? そうなんですか?」


「切った大根の皮をいちいちピーラーでむくなんて見たこと無いし」


「いや、マンガではこういうやり方をしてましたよ」


「それ、間違いだから! めんどくさいでしょ! それに、トン汁は、大根の皮はむかなくてもいいんだよ」


「えっ?! そうなんですか?」


「まあ、むいても良いけど、むくときは切る前!」


 上杉先輩のダメ出しが出たが、トン汁自体の品質には問題なさそうなので、このまま続行。


 そして、完成。

 トン汁をお椀に人数分よそう。

 ご飯も炊けていたので、これも茶碗によそって、出来上がり。


 女子3人に食べさせる。僕も食べる。

 結果、3人には及第点をいただけたようなので、とりあえず良かった。

 その後、女子3人はリビングでしばらくくつろいでから帰って行った。

 僕もその後は自室でのんびり過ごすことができた。


 あれ? 今日は卓球部に顔出さなくても、よかったんだっけ?

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