雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

ホワイトデー~その5

公開日時: 2024年6月29日(土) 22:19
文字数:1,843

 学校を後にして、サンシャインシティへ向かう。

 服飾部につきあっていたので、時間はだいぶ遅くなってしまった。

 今日は、これから真帆にホワイトデーのクッキーを渡すために会う約束をしている。

 サンシャインシティに着く前に、真帆がどこで待っているのか確認するために、歩きながらLINEアプリを立ち上げてメッセージを送る。

 すぐに返事が来た。いつものマックにいるという。

 僕は先を急ぐ。


 数分後、マックに到着して一番安いドリンクを頼んで受け取ると、店内で真帆の姿を探す。

 僕は、すぐに彼女を見つけることが出来た。

 席には真帆だけでなく、O.M.G.のメンバーである龍造寺さんと宇喜多さんも一緒に居た。


 真帆は僕に気が付くと手を振って挨拶をする。

「純ちゃん、こっちこっち」


「遅くなってごめん」

 僕は彼女たちのいる席に着いた。


「大丈夫、みんなで打ち合わせをしてたから」


「そっか」


「それにしても、なんか久しぶりじゃない?」


「そう? 3週間ぶりぐらい?」


「先月までは毎週2回は会ってたじゃん?」


 ライブの手伝いで1回、真帆に平日の放課後に呼び出されて1回。

 習慣のようになっていた。


「そ、そうだったね。で、最近ライブはどう?」


「前にLINEでも言ったけど、純ちゃんがいなくて物販が大変だよー」


「だよねー。やっぱり、手伝いは必要だよねー」

 宇喜多さんが相槌を打った。


「今月はショートムービーの撮影で忙しいんでしょ? 今月いっぱいはかかるんだっけ?」

 真帆が質問をする。


「そうだよ」


「春休みは?」


「撮影は今週末と来週末の4日で終わる予定。だから、春休みは撮影はないよ」


「春休みは、お城巡りなんでしょ?」


「いや…、どうだろう?」

 春休みの予定は何も伊達先輩に聞いていない。

 今月は何かと忙しかったからな。

 そもそも僕がお城巡りに参加するとも、しないとも考えていなかった。

 参加しない方向で考えてはいるが。


「じゃあさ」

 真帆が続ける。

「春休みに右寿のうちに遊びに行くんだけど、純ちゃんも来る?」


「え? いいの?」


「いいよ。大歓迎」

 宇喜多さんが答えた。


「右寿のうち、豪邸だよ」

 真帆が微笑んで言う。


「そうなんだ」

 宇喜多さんは茶道をやっているって言っていたし、お金持ちの雰囲気がしたけど、本当にお金持ちなのか。

 そうだ!

 宇喜多さんのお姉さんに、久しぶりに会いたいなぁ。

 僕がO.M.G.の手習いをすることになったのは、宇喜多姉とお近づきになりたいからだった。全然、達成できてないけど。

 完全に、忘れてたな。

 ひょっとしたら、宇喜多姉にも会えるかもしれない。

「じゃあ、行くよ」

 僕は答えた。

 春休みは、歴史研のお城巡りは放っておいて、宇喜多邸訪問を優先してもいいだろう。


「それで、なにか用だったんでしょ?」

 真帆は話題を変えた。


 そうだった。今日の本題はホワイトデーの件。

 僕は、クッキーを2つ取り出して真帆に渡した。


「これ…、バレンタインのお返し。つまらないものだけど。1つは真帆に、もう1つはO.M.G.に」


 同じクッキーが2つって芸がなかったな。

 別の物にした方がよかったかな?


「ありがとう」

 真帆はクッキーを受け取ると礼をいってくれた。

「1つは、右寿と佐和でわけなよ」

 そう言って、真帆は龍造寺さんと宇喜多さんに1つ渡すと、2人も礼を言ってくれた。


「うちら女子校じゃない? だから、ホワイトデーとか全然盛り上がらないんだよねー」

 真帆はクッキーの入った袋を見ると、ちょっと残念そうに言う。


「他の学校の生徒と交流は無いの?」

 僕は尋ねた。


「人によっては、他の学校の男子と仲良くやっている人もいるけど、かなりの少数派はだよ」


「そっか」


「だから、この前、合コンのセッティングをお願いしたんじゃん?」


 そういえば、そうだ。

 以前、真帆たちにお願いされて、合コンをやったんだっけ。

 女子はO.M.G.の3人で、男子は僕と悠斗と片倉先輩が参加したのだ。


「あの時の参加者と連絡を取り合ってないの?」


「全然」

 龍造寺さんが答えた。


「片倉さんとは、SNSの運用の件でしばらくやり取りしてたけど、今は全然」

 宇喜多さんはそう答えた。


「今度さあ」

 龍造寺さんが前のめりになって話しかけて来た。

「また、合コンをセッティングしてよ」


「ええっ?! やだよ」

 これまでに、O.M.G.の合コンと歴史研の合コンを2回セッティングしたことがあるが、大して楽しいと感じなかったからな。

 そもそも友達のいない僕を幹事をさせるなんて、見る目がない。


 その後も他愛のない話をして20分ほど過ごすと、もう時間もだいぶ遅くなったので解散することになった。

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