雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

2年生になって初のお城巡りは…

公開日時: 2025年3月29日(土) 21:36
文字数:2,141

 翌日の昼休み。

 僕と毛利さんは、いつものように机を並べて一緒に弁当を食べていた。

 世間話の途中、毛利さんが尋ねてきた。

「ところで、お城巡り、どうする? どこか行く?」


 そうだった。

 歴史研の活動で日本100名城巡りをしなければならないのだ。

 僕らが2年生になってからもう1か月。

 しかし、新しい部員が入らないまま、4月が終わってしまう。

 僕は少し考えてから答える。

「うーん…。でも、新しい部員が入ってからの方がいいかも」


「でも、部員が入らなければ、スケジュールが後倒しになって、後々、大変なことになりそう」


「確かに、そうだね…。じゃあ、どこか行く? まだゴールデンウイークだし、今週末から月曜、火曜と4日間休みがあるから、結構回れるかもしれないね」


「でも…、私たち2人で泊りがけって、許可が下りるかしら?」


「あっ…」

 僕と毛利さんの2人きりで泊まり…。

 そういうことになったら、楽しい展開になるかもしれないな…。

 ゴム持っていこうかな、箱で。

 いや。そもそも許可が下りないかもしれないが。

「放課後に島津先生に聞いてみるよ。許可が下りたら、どこに行くか、例の“ノート”を見ながら考えるよ」


 僕が部長に就任したとき、歴史研のお城巡りのルートを書いたノートを引き継いだので、それを見ればいいだろう。

 まずは、島津先生に話をしなければ。

 そして、許可が下りたら、旅費の相談もしないといけないな。


 そんなわけで放課後。

 毛利さんは図書委員の仕事があって、図書室に行ってしまったので、僕1人で職員室の島津先生に話をしに行く。

 緊張しつつ職員室に入るが、島津先生の姿が見えない。

 どこ行ったんだろう…?

 そうか! 島津先生は卓球部の顧問だから、卓球部が練習している体育館かもしれないな。


 というわけで、職員室を後にして体育館に向かう。

 そこでは卓球部と、見たこともない競技をやっている一団が、体育館を半々で分け合って練習をしていた。


 僕は体育館の中を見回す。

 すると、壁際で卓球部の練習を見ている島津先生を発見したので、ゆっくりと近づいた。


「島津先生」

 僕は声を掛けた。


 島津先生は僕を見て微笑んだ。

「あら、武田君。卓球部に入部かしら?」


「いえ、違います」

 このやり取り、何回目だ?

 僕は、やれやれと思いつつも本題に入る。

「歴史研のお城巡りの件です。ゴールデンウイークの後半を使って、どこかに行こうかと思うのですが…」


 島津先生は怪訝そうな表情になって言う。

「歴史研って、まだ新入部員がいないでしょ? 武田君と毛利さん2人きりで泊まりの旅行は許可できないわ」


 まあ、そうだろうな。

 とはいえ、ちょっと期待してた僕は肩を落とした。


 島津先生は続ける。

「日帰りだったら構わないけど」


「日帰り…、ですか?」

 日帰りで行けそうなお城が残っていたっけ?

 遠い場所のお城ばかりが残っていたような気がするが。

「じゃあ、どこがいいか調べてみます」


 僕は軽く会釈をして、島津先生から離れた。

 体育館の出口のあたりまで移動して、卓球部でないもう1つの部活の様子が気になったので、それを見ている。

 バレーボールで使うようなネット越しにボールを激しく蹴り合っている。

 あんな部活あったっけ? 何というスポーツだろう?


 しばらく見ていると、背後から声を掛けられた。

「武田先輩! 探しましたよ!」

 僕が振り返ると、支倉君が立っていた。


 僕は目の前のスポーツについて支倉君に尋ねる。

「あれって、なんてスポーツか知ってる?」


「知ってますよ! “セパタクロー” です!」


「セパ…? 何?」


「セパタクローです。あれは、マイナースポーツ研究部ですよ」


「ああ…。そんな部があったような気がする」


「その名の通りマイナースポーツばかりやってるんです」


「へー」

 支倉君、入学して間もないのによく知ってるな。

 さすが新聞部。

「マイナースポーツって、他にどういうのがあるの?」


「ワタシも、すべては知りませんが、マイスポ研では、“カバディ”とかもやってるそうです」


「ふーん…」

 全然知らないや。

 そして、マイスポ研って略すんだ。


「それで、武田先輩はなぜ体育館に?」

 支倉君は話題を変えた。


「ああ…、島津先生に用があったので、ここに来てたんだよ」


「なんの用ですか? 卓球部に入部でもするんですか?」


「しないよ。歴史研のお城巡りについて相談してたんだ」


「そっか、島津先生は歴史研の顧問でもありましたね。で、お城巡り、行くんですか?」


「うん。日帰りだったら良いといわれた」


「どこに行くんですか?」


「これからどこにするか決めるよ」


「ワタシも行っていいですか?」


「え? まあ、良いけど…。旅費はそっちでもってよ」

 お城巡りまで密着取材するのかよ。


「旅費は何とかします! じゃあ、どこに行くか決まったら、旅費のおおよその金額を教えてもらえますか?」


「わかった」


 僕は例のノートが自宅に置いてあるので、いったん帰宅することにし、ここで支倉君と別れた。


 自宅に着くと、一息ついてジュースを飲みながらノートをめくって見る。

 行っていないお城で、一番近そうなのは…。

 長野県の高遠城。 

 ノートには、日帰りコースが書いてある。

 行程は高速バスを使うのか、初めてだな。


 ここで良さそうなので、2年生になって初のお城巡りは、高遠城にしよう。

 毛利さんには、LINEで高遠城に行くことをメッセージしておいた。

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