雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

ミュージカル

公開日時: 2025年1月11日(土) 20:19
文字数:1,804

 昼休み。

 昨日のうちに、雪乃に誘われて食堂で昼食を食べようと言われていたので、僕は弁当箱を持って移動する。

 一緒に食堂に向かっているのは雪乃だけでなく、雪乃の陽キャ友達で教室では大体いつもつるんでいるミユと、もう1人。さらに、毛利さんまで付いてきた。


 食堂は、まあまあの混雑。

 僕が食堂に入った途端、視線を感じる。

 やっぱり、ちょっと注目されているようだった。特に1年生に。

 ともかく、食堂で席取りをしてから、弁当でない雪乃と陽キャ友達は食券を買いに行き、定食が乗ったトレイを持って戻ってきた。

 そして、食事を始める。


 僕は雪乃に尋ねた。

「なんで、今日は食堂で一緒に食べようって思ったの?」


「それは、まだ秘密」

 

「あ、そう…」


 陽キャ友達の2人は、そのやり取りを聞いてクスクス笑っている。

 何か企んでいるな…。

 気になるが、教えてくれないのだから仕方ない、諦めて弁当を食べる。

 雪乃と陽キャ友達は、ワイワイ言いながら食事をとる。

 僕は、毛利さんと静かに食べながら世間話をしている。


 そして、昼食を食べ終わった頃。

 突然、ツカツカと女子生徒が歩み寄って来た。

 そして、雪乃の前で “バン” と手でテーブルを叩いて叫んだ。


「ねえ! 私の彼氏を盗らないでよ!」


 食堂が静まり返える。

 僕も驚いてその女子生徒を見た。

 彼女は確か、演劇部で2年生の金森さん。

 春休みに撮影したショートムービーにも脇役で出演していた。


 で、彼氏とは?


「はあ? 何言ってんの?」

 雪乃は金森さんを睨みつけた。

「純也は私のものよ!」


 ええっ!? 僕のこと??

 どういうこと?? 僕が金森さんの彼氏??


 僕は困惑して、雪乃と金森さんを交互に見た。


「この泥棒ネコ!」

 そう言って金森さんは雪乃に掴みかかった。

 雪乃も立ち上がって、応戦する。

 食堂にいた生徒たちの注目が集まる。


 何が起こっているのかわからない僕は、少しどうして良いか分からず放心状態となった。

 しかし、すぐに我に返る。

 とりあえず、2人を止めないと。


 僕も立ち上がって、2人に割って入ろうとしたその瞬間、どこからともなく音楽が流れて来た。

 次に演劇部の面々が食堂に入って来た。

 そして、音楽に合わせて歌って踊り出す。


 え?  え? え?


 困惑が止まらない。


 食堂にいた生徒たちも困惑しつつ、演劇部員たちを見守っている。

 そして、いつしか雪乃と金森さんも取っ組み合いながらも音楽に合わせて歌い始める。

 歌は英語なのでよく意味話わからないが、どんどんクライマックス向けて盛り上がって来ているのがわかった。


 そして、演劇部の男子達が僕の周りにやって来て、無理やり食堂のテーブルの上に押し上げて立たせた。

 雪乃もそれに続くようにテーブルに登って僕の正面に立つ。

 困惑し続ける僕をよそに雪乃は僕を抱きしめて、そして、キスをした。


 食堂内で「おおーっ!」と、どよめきが起こる。


 そこで、音楽は終わった。


 雪乃は僕から唇を離すと、大声で話し始めた。

「はーい!! 私は演劇部の織田雪乃です! 演劇部は部員を大々々々々募集中でーす!! 是非入部してね!!」


 演劇部員たちがチラシを取り出して、食堂にいる生徒にどんどん手渡していく。

 しばらくして、チラシ配りが終わると、演劇部員たちは食堂を去っていた。

 金森さんもいつの間にか、いなくなっていた。


 僕と雪乃はテーブルの上から降りる。


 ミユは雪乃に声を掛けた。

「大成功だね!」


「大成功! 大成功! 演劇部でミュージカルをやるの初めてだったけど、うまくいってよかった!」

 雪乃は答える。


 大成功という2人に、僕は異論を唱える。

「いやいやいやいや。ちょっと待ってよ! あんなの聞いてないよ!」


「だって、言ってないから」

 雪乃は言う。


「あんなことするなら、事前に言ってほしかったよ!」


「事前に言ったら、OKしてくれた?」

 雪乃は尋ねた。


「え? い、いや…」


「でしょ?」

 雪乃は微笑んだ。

「これで、演劇部の宣伝だけでなくて、私の名前をみんなに知らせることが出来たわ」


「なんで、知らせる必要があるんだよ?」


「だって、生徒会長選挙があるでしょ? 知名度がある方が有利って、伊達先輩も言ってたじゃん」


 そう言うことか。

 これがしたくて、今日、雪乃は食堂に誘って来たんだな。

 僕は、演劇部の宣伝に利用されたということか。

 雪乃のやることは突拍子が無くて、困惑しかない。

 僕はダシにされたことに、モヤモヤしていたが、昼休み終了のチャイムが鳴ったので、僕らは教室に戻ることにした。


 それにしても、音楽はどこから流れていたんだ?!

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