休みが明けて木曜日。
昨日は、あの後、上杉先輩は夜まで僕の部屋でダラダラして、さらには僕の両親とも一緒に夕食を食べて帰宅していった。
両親とも、仲良くなってしまっている。
やれやれ。
さて、今日は放課後に伊達先輩に呼び出されていたので、しぶしぶ部室に毛利さんと一緒に向かう。
校舎4階の端の端、理科研究室でもある歴史研の部室の扉を開けた。
「「こんにちは」」
僕と毛利さんは挨拶をした。
「いらっしゃい」
「来たね!」
伊達先輩と上杉先輩はいつものようにポテチを肴に、ジュースを飲んでいた。
僕と毛利さんは椅子に座る。
早速、僕は質問をした。
「何か用があると聞きましたが」
「そうよ」
伊達先輩はジュースの紙パックを机の上に置くと話始めた。
「春休みのお城巡りのことよ」
「やっぱり…」
そうじゃあないかと思った。
「春休みは、岡山、香川、徳島のお城を巡るわ」
「岡山は中国地方、香川、徳島は四国だから簡単にはいけないのでは?」
「瀬戸大橋があるから、問題ないわね」
「そうなんですね」
「今回は、どのお城を廻るんですか?」
毛利さんが尋ねた。
「岡山城、津山城、備中松山城、鬼ノ城、徳島城、高松城、丸亀城の7つよ」
伊達先輩はスラスラと答える。
「多くないですか?」
僕は少し驚いて言う。
「そんなことないわよ。7つ巡ってちょうど50巡ったことになるし」
「まえに関西に行ったときも7つ巡ったでしょ!」
上杉先輩にツッコまれた。
「100のちょうど半分ですね」
毛利さんが言う。
「予定どおりね」
伊達先輩は冷静に答えて、ジュースを一口飲んだ。
「えーっと、何日ぐらいかけるんですか?」
僕は尋ねる。
「4月1日から5日までの4泊5日よ」
再来週か。
「それで、新幹線使いますよね?」
「この時期は青春18きっぷでしょ!?」
上杉先輩に再びツッコまれる。
「えええーっ…」
青春18きっぷは、JR在来線で乗り放題になるきっぷだ。
新幹線や特急には使えない。
「東京~岡山間って、何時間かかるんでしょうか?」
伊達先輩が説明する。
「池袋を8時16分に出発して、岡山に着くのは20時35分よ」
「12時間以上かかるってことですか?!」
「そうね。途中で食事で下車しようとも考えているから、実際はもっとかかる予定ね。1日目と5日目は移動のみ、2~4日目で7つのお城を巡るのよ」
「そうですか…」
過酷すぎる。
やっぱり参加しないことにしよう。
「今回はさすがにO.M.G.と一緒にはならないよね?」
上杉先輩が尋ねた。
「ええ、確か遠征はないと聞いています」
「そっか、今回は久しぶりに4人で移動かなあ」
上杉先輩は残念そうに、椅子の上で反り返った。
まあ、僕は行かないから3人で行ってください。
「織田ちゃんとか、行かないかなあ?」
上杉先輩は尋ねた。
「さあ、どうでしょうか。演劇部なんかもありますから、難しいのでは?」
「新聞部は、どうかなあ?」
上杉先輩は畳み掛けるように尋ねた。
「さあ…」
「キミ、最近新聞部とも仲がいいみたいじゃない? 聞いといてよ」
「まあ、聞くぐらいなら…」
「将棋部の成田ちゃんとか、どうかなあ」
「上杉先輩が直接聞けばいいじゃないですか?」
「それもそうだけどさ」
そうだ、忘れてた。
「そう言えば、成田さんとの将棋対決の撮影はどうだったんですか?」
「ああ! なかなか楽しかったよ! 色々教えてもらったら、かなり強くなったよ」
「本当ですか?」
「あーっ!? 疑ってるな?」
「疑ってます」
「昨日、キミんちで対決すればよかったね」
「そうですね。今度、対決しましょう」
上杉先輩が強くなっているはずがない。
「また、来週に続きの撮影があるんだよ」
上杉先輩は嬉しそうに言う。
「そうなんですね」
「前回のYouTubeの再生回数が、結構いってるからね」
「へー」
そう言えば、まだ見てなかったな。
家に帰ったら見てみるか。
この後も、つまらない会話をしながら下校時間まで過ごした。
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