雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

奴隷生活8日目

公開日時: 2023年2月8日(水) 20:05
文字数:2,682

 週が明けて月曜日。

 期末試験が始まった。

 試験期間は部室が使えないので、上杉先輩と顔を合わせることはないだろうからちょっと気が楽だ。

 そして、肝心の試験なのだが、中間試験以降は勉強が疎かだったので、ちょっと苦戦している。

 今日の試験も、昨日の勉強会が無ければ、ちょっとヤバかったかもしれない。

 中間試験の時の学年9位は無理としても、とりあえず、以前の定位置である中の上の成績は確保したいところだ。


 試験は午前中に終わる。

 自宅に帰って明日以降の試験勉強をしたいと思い、席から立ち上がった。


 そこへ、雪乃が声を掛けてきた。

「純也! 明日の英語教えてよ」


「え?! えーと…、英語なら毛利さんにお願いすれば? 英語は彼女の得意分野だし」


「そっか」

 雪乃は僕の隣の席で、帰り支度中の毛利さんに声を掛ける。

「歩美、どうかな?」


 毛利さんは少し考えてから答えた。

「いいよ」


「じゃあ、純也のうちでやろう!」


 それを聞いて僕は驚いた。

「え? なんで、うちなんだよ?」


「だって、歩美とあたしんち方向が逆じゃない?」


「だったら、図書室でやればいいのでは?」


「今日、英語の教科書は持ってきてないし」


「えええー…」


「別にいいじゃない。元カレのよしみで」


 まあ、いいか。

 僕も、わからないところがあれば毛利さんに聞けばいいし。


「わかったよ」


 というわけで、僕と織田さん、毛利さんは連れ立って僕の家にやって来た。

 両親はいつもの様に共働きなので居ない。


 以前と同じように、お昼ご飯にはみんなでカップ麺をすすり、食後に少しだけ話をする。


「ねえ、純也と別れてから、私、何て呼ばれてるか知ってる?」

 雪乃が尋ねる。


「いや、知らない。何て?」


「“未亡人”」


「それじゃあ、僕、死んでることになるよ…」

 僕と付き合っているときは“伯爵夫人”、それで別れて“未亡人”ということか。

 いや、やっぱり変だ。

 僕は、まだ生きている。


 僕は話題を変えた。

「土曜日に、2人、一緒にサンシャインシティで買い物してたね。いつの間に仲良くなったの?」


「私たち最近、仲いいのよ。土曜は、あの時も言ったけど、歩美が服を買うから私に選んでほしいって」


「ふーん」


「めっちゃ可愛いのが買えたから。ね、歩美」

 そう言って、毛利さんに話を振った。

「いつか純也にも見せてあげなよ」


「う、うん」

 毛利さんは恥ずかしそうに答えた。


 世間話もほどほどに、3人とも2階の僕の部屋に行き、ローテーブルの上に英語の教科書おいて勉強開始。

 と、思ったら家のインターホンが鳴った。

 慌てて1階に降り玄関を開けると、なんと上杉先輩が立っていた。


「やあ」

 上杉先輩は嬉しそうに手を上げて挨拶をしてきた。


「上杉先輩、何故ここに?」


「え? だって、キミ奴隷でしょ? 今日も言うこと聞いてもらおうと思って」


「ええっ?! これから試験勉強をやろうと思って…。毛利さんと雪乃も来てるんですよ」


「なにー? 女を2人も連れ込んでるの?」

 上杉先輩はニヤつきながら言う。


「だたの試験勉強ですよ」


「別に2人が居てもいいよ」

 そう言って上杉先輩は、ずかずかと家に上がり込んだ。

 そして、僕に向かって言う。

「じゃあ、早速だけど、お腹空いたんだけど、何かないの?」


「カップ麺しかありません」


「それでいいや、ちょうだいよ」


「わかりました」

 やれやれ。

 僕はダイニングに行きお湯を沸かしカップ麵にお湯を注ぐ。

 3分経って、上杉先輩はカップ麺を食べ始める。


 僕は尋ねる。

「上杉先輩は、試験勉強はやらなくていいんですか?」


「アタシ、いつも、やらないの知ってるでしょ?」


 まあ、知ってるけど。

 でも勉強しなくても赤点取らないとか言ってたような。

 その赤点回避テクニックを教えてほしいものだ。


 上杉先輩はカップ麵を食べ終える。

 そして、僕の部屋に一緒に向かった。

 部屋に入ると、上杉先輩は明るく挨拶をする。

「やあ。毛利ちゃん、織田さん」


「「こんにちは」」

 2人は挨拶を返す。


「勉強してて、いいよ」

 上杉先輩は2人に言った。

 そして、ベッドに寝転んでベッドと壁の隙間に隠してあるエロマンガを探り当てて、それを読み始めようとする。

 その前に思い出したように僕に行った。

「武田君、ジュースをみんなに出さないなんて、気が利かないねぇ」


「はいはい」


 僕は1階に降りて台所の冷蔵庫に行き、コップに人数分のジュースを注いで、部屋に戻った。


「ご苦労」

 上杉先輩はマンガから目線も逸らすことなく言う。


「ありがとう。忠実な奴隷だね」

 雪乃はコップを受け取ると言った。


「まあね」

 僕はやや憮然と答えた後、上杉先輩に尋ねた。

「試験勉強してて、いいですか?」


「いいよー」

 上杉先輩はマンガから目線も逸らすことなく答えた。


 許可が下りたので僕は勉強会に参加する。

 しばらくは平穏な時間が続き、勉強もはかどっている。

 途中、雪乃は毛利さんに何度か質問をする。

「この問題なんだけど…」


「ああ、これは、……」

 毛利さんは丁寧に解説をする。


「おおっ! わかったよ!」


 わかったらしい。


 しばらく経って、今度は僕が毛利さんに質問をする。

「この英語の訳なんだけど…」


「これは、……」

 毛利さんは僕にも変わらず丁寧に解説をする。


 良く分かった。 

 いつもそうだが、毛利さんは普段から良く勉強してるんだなあ、と感じる。


 しばらく経って上杉先輩がベッド上から、エロマンガのあるコマを指して尋ねて来た。

「ねえ、キミ。このシーンなんだけど、この体位…」


「知りませんよ!」


 僕はそう言うも、代わりに雪乃が答える。


「この体位はですね…」


 雪乃は百戦錬磨(?)の経験者だから、いろいろ知ってるんだろうな…。

 彼女と付き合い続けてたら、僕もいろいろ経験出来たんだろう。

 残念…、いや、後悔はしてないぞ。


「そうかー」

 上杉先輩は雪乃の説明を聞いて納得しているようだった。

 いろんな意味で“勉強会”になってるな…。


 しばらく経って、妹の美咲が帰宅した。

 すぐに妹は僕の部屋にやって来て、軽やかに挨拶をする。

「おお! 紗夜さんに毛利さんに織田さん、こんにちは」


 みんなそれぞれ、妹に挨拶をする。

 そして、上杉先輩はマンガを読むのを止め、妹と一緒に妹の部屋に遊びに行ってしまった。

 上杉先輩が居なくなったので、気が楽になった。

 そして、その後は何事もなく、無事に夕方ごろに勉強会は終わった。


「ありがとう」

 僕と雪乃は毛利さんに礼を言う。

 そして、雪乃と毛利さんは帰宅して行った。

 上杉先輩もいつの間にか帰ってしまったらしい。


 まあ、奴隷生活もジュース出す程度だったら、別に良いか。

 リードに繋がれて散歩のように人目に付かないし。

 試験期間は少しは平穏な日々が送れそうだ。

 僕は少し安堵して、他の科目の試験勉強などをして、就寝まで過ごした。

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