料理を特訓した翌日の日曜日も自分一人でオムライスを作ってみた。復習は大事だからね。
ちゃんとできた。
週が開けて月曜日。
朝、いつもの様に学校に登校する。
今朝も、げた箱付近で毛利さんに出会って教室まで一緒に行く。
1時限の授業の予鈴が鳴る直前ぐらいに悠斗が登校してきた。
ところが、どうしたことか、悠斗は松葉杖をついているではないか!?
僕や他のクラスの何人かが悠斗に集まって、カバンを持ってあげたり、手を貸したりした。
悠斗は、慣れていない松葉杖に悪戦苦闘している様子で何とか席に着いた。
「足、どうした?」
クラスの誰かが尋ねた。僕もそばで話を聞く。
「いやー。サッカーの練習試合で張り切りすぎて、ひどい捻挫をしたよ」
「大丈夫なの?」
「お医者さんの言うことには全治2週間ぐらいだそうだ。だから、しばらくは松葉杖生活だね」
他にも別の生徒から質問が飛んだが、授業が始まるので皆、一度、席に着く。
その日は、休憩時間も皆が悠斗を色々助けようと声を掛けている。特に女子数名。悠斗はイケメンで人気者だからな。
僕も“困ったことがあったら何でも言ってくれ”と、言っておいた。
そして、放課後、悠斗を見た。
相変わらず女子たちが松葉杖をついた悠斗を取り込んで我先に助けようとしている。これを機会にお近づきになろうと企んでいるんだろう。悠斗がちょっとうらやましい。
僕がケガしたら誰かチヤホヤしてくれるだろうか? 多分、居ないな。
まあ、悠斗は女子たちに任せればいいな。
ということで、僕は歴史研の部室に向かうため立ち上がった。隣の席の毛利さんも一緒に行こうと立ち上がった。
そこへ、織田さんが近づいて来た。
「ちょっと相談があるんだけど」
急に声を掛けられて、僕はちょっとびっくりした。何だろう?
「え? 相談って、何?」
「演劇の件だけど、足利君があの足じゃあ、本番の王子様役は無理そうなのよ。全治2週間だと、本番に松葉杖が要らなくなるかどうかギリギリという感じ」
「なるほど。確かにそうだね」
「それで、武田君に王子様役をやってほしいのだけど」
「ええっ!?」
僕は驚いて思わず大声を出した。
「足利君や他の出演者にはOKもらったわ」
「いやいやいやいや。無理だよ」
「大丈夫よ。セリフ、少ないでしょ?」
「セリフは少ないけど、悠斗のようなイケメンでもないのに…。それに、他に王子様やりたい人は、いくらでも居るんじゃあ?」
「大丈夫。武田君は有名人だから。“木”よりも王子様のほうがバカ受け間違いなしよ」
おいおい、受けるか受けないか、それが基準なのか?
それに有名人と言っても、“エロマンガ伯爵”は件は、僕は早く忘れ去られてほしいのだが。
「武田君の王子様、見てみたいな」
横で話を聞いていた毛利さんが、とんでもないことを言いだした。
「ほらね」
織田さんはドヤ顔で笑った。
そこへ松葉杖をついた悠斗がやって来た。
「劇の話かい? 純也、王子様、よろしくな」
仕方ないなあ。事情が事情だし、悠斗のお願いだから、聞いてあげるか。
「わかったよ。やるよ」
「おお、ありがとう!」
それを聞いて織田さんは満足して笑って見せて、最後に、
「じゃあ、明後日の読み合わせの時、よろしくね」
そう言うと立ち去った。
悠斗も、「ありがとな。後は、よろしく」と言って、女子たちに囲まれて、松葉杖を付きながら立ち去った。
やれやれ。
「僕らも行こうか」
僕と毛利さんは歴史研の部室に向かうため教室を後にした。
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