週が明けて月曜日。
世間的にはもうゴールデンウイークなのだが、カレンダー通りなのでいつものように登校する。
ちなみに明日は祝日で休みなので、気分は金曜日だ。
日中、つつがなく授業は終わり、放課後となった。
今日は毛利さんが図書委員の仕事で図書室に行ってしまったので、僕の方は資料のデータ化の仕事の続きをするため生徒会室に向かった。
「失礼します」
僕はそう言って、扉を開けて生徒会室に入る。
生徒会室では、生徒会役員である伊達、松前、佐竹、津軽の4人が何やら議論をしてきた。
伊達は僕に気づいて返事を返した。
「あら、いらっしゃい」
「ねえ、武田君も意見を聞かせて」
そう言ってきたのは、佐竹先輩。
「意見といいますと?」
僕は尋ねた。
佐竹先輩は束になった数枚の書類を手渡してきた。
「1年生が新たに部活を作りたいと言って、いくつも申請してきたのよ。見てみて」
「へぇ…」
僕はその束を1枚1枚めくって内容を確認する。
新規部活の申請用紙で、それぞれ申請された部活の名前は…、
古典部。
隣人部。
帰宅部。
てさぐり部。
ふしぎ研究部。
あそび人研究会。
囲碁サッカー部。
と、あった。
「なんですか、これは?」
僕は困惑して尋ねた。
「今年の1年生はアグレッシブみたいで、昨年より新規の部活設立申請が多いの。それはそれでいいのだけど、活動内容がよくわからない部活は認めることはできないと思っているのよ」
伊達先輩が言う。
「そもそも、ほとんどの部員が5人以上になっていないから、それらは却下ね」
松前先輩が追加する。
「部員が5人以上になっている部活って…」
僕は改めて申請用紙を眺めた。
「帰宅部だけですね」
しかし、帰宅部?
家に帰るだけでは?
申請理由の欄を見る。
『仲良し5人組で、楽しいことをする部活』
漠然としてるなあ…。
「全部、却下でいいのでは?」
僕は意見を言った。
「そうよね」
伊達先輩は相槌を打った。
「じゃあ、全部却下で」
「「「異議なーし」」」
残りの生徒会役員も同意した。
僕は席についていつもの資料のデータ化の作業を始める。
伊達先輩たち役員はなにやら議論をしているが、僕は内容は聞こえないふりをしている。
しばらくすると、支倉君がやってきた。
「失礼します! 武田先輩、遅くなりました! 新聞部の打ち合わせがあったので」
「お、おう…」
支倉君は、他の生徒会役員にも挨拶をすると、僕のそばにやって来て、なぜか僕の仕事を手伝ってくれる。
しかし、おかげで思ったより作業が進んで、最初は作業の終わりが見えなかったが、来月5月いっぱいもやれば終わりそうだ。
伊達先輩が話し合いをいったん休憩にして、僕に話しかけてきた。
「武田君。昨日は誕生日プレゼントありがとう」
「いえ。大したものでは…」
「昨日は話せなかったけど、歴史研の部員集めの進捗はどうかしら?」
「えっと…、今のところだれも入部希望者が居なくて…」
「苦戦してるわね。去年もそうだったけど。でも、そろそろ1人でも部員が入らないと、正式な部から、非公式な部に格下げになるわね」
まあ、別に非公式になってもいいのではないのだろうか? と僕は思っている。
伊達先輩は続ける。
「『別に非公式になってもいいのでは?』って思ってるでしょ?」
エスパーかよ。
僕は弁解する。
「なんとか1人でも入部させます」
と、いってもアテは全然ないのだけど。
はっと、突然思い立った。
そういえば、さっきの新規部活の申請をしてきた人たちを勧誘してはどうだろうか?
ただ、放課後に集まって駄弁っているのは、歴史研究部も同じだからな。
独特な点と言えば、お城巡りをやるだけだ。
ちょっと考えてみよう。
僕は伊達先輩に頼んで、もう一度、新規部活の申請書の束を見せてもらった。
そして、その束をもって、支倉君に見せる。
「ねえ、この中で、知ってる人、いる?」
支倉君は申請書をすべて確認してからいった。
「同じクラスの人が何人かいますね」
そして、支倉君は興味津々で訪ねてきた。
「武田先輩、この中から歴史研にスカウトするつもりですね?」
「ま、まあ、そう思っているよ」
「歴史研と内容がかぶりそうなのは…、“古典部”と“遊び人研究会”ですかね?」
「え? なんで?」
「歴史と古典って、似てませんか? 古臭いことの研究ということで」
「古臭いっていうな」
「でも…、古典部の活動内容は、『学園で起こる事件を解決する部活』ってなってますけど?」
「古典と全く関係ないじゃん?」
「じゃあ、“遊び人研究会”は?」
「歴史研と、どこが活動内容がかぶってるんだよ?」
「だって、武田先輩は遊び人じゃあないですか?」
「僕は、遊び人じゃあないぞ」
「遊び人ですよ!」
「違う!」
僕と支倉君が言い合っていると、生徒会役員の皆が割り込んできた。
「武田君は、遊び人よ」
伊達先輩が言う。
「そうそう」
他の役員たちも同意する。
伊達先輩が続ける。
「毛利さんや織田さんと付き合ってるし」
「僕らは付き合ってないですよ」
松前先輩が突っ込んできた。
「武田君がどう言おうと、周りのみんなはそう見てるってことよ」
やれやれ、誤解もいいところだ。
そんなこんなで、いろいろ話をしていると下校時間も近くなったので、今日のところは解散となった。
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