自室で睡眠中。
僕は体に重さを感じたので目を開けた。
すると目の前に、上杉先輩が居た。
なんだ、また夢か…。
上杉先輩は横になっている僕の上に覆いかぶさるようにして、何やら、ごそごそとしている。
彼女の長い金髪が僕の顔に掛かっている。そして、いい匂い。
彼女はセーターを着こんでいた。
今日の夢は、いつもの様に下着姿じゃあないんだな…。
ちなみに、セーターの色は白だ。
僕は、ぼんやりとした頭で考えた。
そう言えば、以前、悠斗が『夢だったら好きなようにやってみたら』と言っていたのを思い出した。
よし! Hなことをしてみよう!
僕は両手を動かして、上杉先輩の胸を鷲づかみにした。
「ぎゃっ!!」
その瞬間、上杉先輩は悲鳴を上げて、身体を後ろに避けた。
「えっ?!」
僕は驚いて、起き上がった。
夢じゃない?!
上杉先輩は胸を腕でかばうようにしてから、僕を睨みつけた。
そして、言った。
「おい! 何すんだ!」
僕は、なんとか言葉を絞り出した。
「えっ?! えっ?! 上杉先輩?! 本物?!」
「本物って何よ?!」
「えーと…、寝ぼけていて…、夢かと思いました」
「寝ぼけてた割には、的確に両胸をつかんだよね?」
「いや、その…」
「キミ、夢だといつもそんなことしてるんだ?」
「いや、してません」
「説得力ゼロだよ」
「いや。そんなことより、なんで、上杉先輩がここにいるんですか?!」
「え? エロ漫画を借りようと思って。いつもベッドと壁の隙間に隠してあるじゃん」
だから、エロ漫画を取ろうとして僕の上に覆いかぶさっていたのか。
「部屋に入るなら、ノックしてくださいよ」
僕は抗議する。
「ノックしたけど、キミ、寝てて返事がなかったから。そんなことより、あたしの胸、触ったから通報するね」
「それは、勘弁してください。寝ぼけていたことなので…」
「どーしよーかなー?」
「不可抗力なので、無罪で」
「有罪でしょ。罰は…、一生、私の奴隷とかで、どう?」
「何、言ってんですか?」
その時、僕の部屋の扉が開いた。
「いま、叫び声が聞こえたけど?」
そう言って妹の美咲が部屋に入ってきた。
そして、その後ろに伊達先輩が続く。
妹はわかるけど、伊達先輩は、なんで居るの?
いや、そもそも上杉先輩がいるのが、訳わからないんだけど。
妹はベッドの上で対峙している僕と上杉先輩を見て、困惑した表情で尋ねた。
「お、お、お兄ちゃん。紗夜さんに何したの?」
「何もしてないよ!」
「あたしの胸、触ったでしょ!」
上杉先輩が抗議する。
「それって、強制わいせつ?!」
妹は叫んだ。
「いやいやいやいや。不可抗力!」
僕は弁明する。
「刑法第176条、6か月以上10年以下の懲役刑ね」
伊達先輩は、冷たく言い放った。
なんで、刑法に詳しいんだよ?
「寝ぼけてただけので、本当に勘弁してください」
僕は取り敢えず、下手に出る。
「やっぱり、一生私の奴隷で」
上杉先輩が繰り返した。
「懲役6か月以上10年以下のほうが、ましじゃないですか?」
僕は抗議する。
「じゃあ、通報」
「待ってください」
「懲役6か月以上10年以下かあ…。じゃあ、奴隷3か月でどう?」
上杉先輩が提案してきた。
「勘弁してください」
「まあ、初犯だし、執行猶予とか?」
そう言って、伊達先輩が助け舟(?)を出してくれた。
「それじゃ、あたしが納得いかない!」
上杉先輩が叫ぶ。
「じゃあ、1か月ぐらいかしら?」
伊達先輩が提案する。
「まあ…、いいや。じゃあ、1か月、あたしの奴隷で」
上杉先輩は少々不服そうに言う。
「そんなの出来ませんよ」
「じゃあ、通報だね」
「えええー……」
これ以上の問答は時間の無駄だ。
「わかりました、1か月ですね……」
僕は渋々了承し、がっくりと肩を落とした。
「それで、なんで、上杉先輩と伊達先輩がうちにいるんですか?」
僕は尋ねた。
「美咲さんの家庭教師で来てるのよ」
伊達先輩が答えた。
「そうでした…。それで、上杉先輩は何故いるんですか?」
「今日は、家庭教師の前は美咲ちゃんと遊んでたんだよ。夕方から恵梨香が来るっていうから、勉強中はキミの部屋に居させてもらったんだよ」
「へ? いつからここに居たんですか?」
「2時間ぐらい前かな?」
僕は時計を見た。
午後5時。
たしか、昼寝を始めたのは午後3時ぐらいだから、僕が寝てすぐにここに来たということか…?
「2時間も何をしてたんですか?」
「何、してたと思う?」
上杉先輩はそう言ってニヤリと笑った。
「僕に触ってたら、それこそ強制わいせつですよ」
「触るわけないじゃん。マンガを読んでただけ」
そうか…。普通のマンガは本棚に並べてある。
「じゃあ、奴隷よろしくね」
「奴隷って、何をやるんですか?」
「えーと…、いろいろ楽しい事。考えとく」
と言って、上杉先輩はニヤリと笑った。
「あと、これからキミのことは、“おっぱい星人”って呼ぶから」
「えええー…」
最悪だ。
伊達先輩と上杉先輩と妹は、その後もしばらくは僕の部屋で座って世間話をしていた。
この人たち、なんで僕の部屋でくつろいでいるの?
僕は昼寝の続きをする。
そして、1時間ばかり経って夕食の時間。
伊達先輩と上杉先輩は、夕食を僕のうちで家族と一緒に食べてから帰宅した。
なんか先輩方は、僕の家族にも馴染んできたな。
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