不調だった歴史研の新入部員集めは、「来週こそ頑張ろう」ということで、週末は気分を変えることにした。
土曜日は、妹と前田さんと一緒に、恒例のO.M.G.のライブの手伝いに行き、日曜日は、最近おろそかになっていた勉強をしたり、VRMMORPGでユミコさんと一緒に冒険したりして過ごした。
そして、明けて月曜日。
すっかり忘れていたが、来週は中間試験があり、その翌週には修学旅行が控えている。
修学旅行の行き先は、お約束の京都。
今日は、その班決めのためにホームルームの時間が割かれた。
僕はクラス委員長なので、仕方なく教壇に立って司会進行を任されることに。
担任の島津先生が監視役としているので、真面目にやらざるを得ない……。
班決めが始まると、僕が特に何かを言わなくても、教室では自然と仲の良い者同士でグループができていく。
クラスメイトたちはワイワイ楽しそうに、次々と班を組んでいった。
では当の僕はというと――陰キャのボッチなので、同じ歴史研の毛利さんと「同じ班になろう」とは話していたが、それ以外のメンバーがいない。
雪乃は、いつもの陽キャ仲間とすでに班を作ってしまっていた。
やれやれ、困ったな……。
陽キャのノリは正直苦手なのだが、背に腹は代えられない。僕と毛利さんも、雪乃の班に混ぜてもらうしかないか……。
などと考えていると、横から突然、腕をバシッと叩かれた。
「武田氏!」
驚いて振り向くと、そこにいたのは小柄なポニーテールの女子。
水泳部の山名さんだ。
なんで彼女は、いつも全力で叩いてくるんだろう?
僕は叩かれた腕をさすりながら答えた。
「な、な、何だよ?」
山名さんはにこやかに言う。
「私たちも班ができてないから、一緒にならない?」
「私たちって?」
僕が尋ねると、山名さんは教室の端を指さした。
その先には、赤松さんがいた。
彼女とはバレンタインデーの一件があって、ちょっと気まずいのだけど……。
とはいえ、他にメンバーがいないなら、仕方ない。
というわけで、僕は毛利さんに声をかけて、山名さん・赤松さんと一緒の班になることにした。
4人の班は小規模だが、他の班はすでに6〜8人で固まっており、これで確定となった。
その後、ホームルームの時間が少し余ったので、班ごとに集まって、京都でどこを巡るか相談することになった。
修学旅行は2泊3日だが、自由行動の時間は実質1日半ほどなので、行ける場所は限られている。
僕らの班では、山名さんがその性格でグイグイと提案してくる。
僕は特に行きたいところがないので、お任せにした。
「清水寺と金閣寺は外せないよね!」
「あと、嵐山も!」
控えめに赤松さんが言う。
「銀閣寺も行ってみたい」
毛利さんも加える。
「伏見稲荷大社に行ってみたいな」
「ああ! 千本鳥居があるところね。いいね!」
山名さんが同意する。
「とりあえず1日あれば全部回れるでしょ」
そして、山名さんは僕にも一応尋ねた。
「武田氏は、行きたいところないの?」
「うーん……特にないな。みんなの行きたいところについて行くよ」
「OK。じゃあ、あと半日分、どうしようか?」
3人とも、特に思いつかないらしい。
「じゃあ、みんなで考えておこう」
と山名さんが提案した。
半日分を残して、おおまかな行動予定表の作成と、班長も山名さんに決定した。
ホームルームが終わり、皆が元の席に戻る。
ほどなくして休み時間になり、毛利さんが僕の席まで来て話しかけてきた。
「ねえ」
「なに?」
「あの赤松さん……だっけ? 彼女と何かあったの?」
「えっ!? なんで?」
赤松さんとの一件は誰にも話していない。
いや、山名さんは元から知っていたか……。
でも、彼女が毛利さんには話してはいないと思うが。
毛利さんは言う。
「2人とも、目を合わせようとしなかったから……、何かあったのかな、って」
毛利さん、鋭いな。
「い、いや。なんでもないよ……。ほ、ほら、僕は人見知りでさ。話したことのない人とは、いつもあんな感じだから。それに、彼女も同じように人見知りなんだよ、きっと……」
「ふーん……。じゃあ、山名さんとはどうして知り合ったの?」
「えっ? ちょっと前に、いろいろあって……」
僕は答えに困って、ごまかそうとした。
「ふーん」
毛利さんは納得がいっていない様子だったが、それ以上は何も言わず、その場を立ち去った。
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