雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

班決め

公開日時: 2025年6月21日(土) 20:42
文字数:1,742

 不調だった歴史研の新入部員集めは、「来週こそ頑張ろう」ということで、週末は気分を変えることにした。

 土曜日は、妹と前田さんと一緒に、恒例のO.M.G.のライブの手伝いに行き、日曜日は、最近おろそかになっていた勉強をしたり、VRMMORPGでユミコさんと一緒に冒険したりして過ごした。


 そして、明けて月曜日。

 すっかり忘れていたが、来週は中間試験があり、その翌週には修学旅行が控えている。

 修学旅行の行き先は、お約束の京都。

 今日は、その班決めのためにホームルームの時間が割かれた。

 僕はクラス委員長なので、仕方なく教壇に立って司会進行を任されることに。

 担任の島津先生が監視役としているので、真面目にやらざるを得ない……。


 班決めが始まると、僕が特に何かを言わなくても、教室では自然と仲の良い者同士でグループができていく。

 クラスメイトたちはワイワイ楽しそうに、次々と班を組んでいった。


 では当の僕はというと――陰キャのボッチなので、同じ歴史研の毛利さんと「同じ班になろう」とは話していたが、それ以外のメンバーがいない。

 雪乃は、いつもの陽キャ仲間とすでに班を作ってしまっていた。

 やれやれ、困ったな……。

 陽キャのノリは正直苦手なのだが、背に腹は代えられない。僕と毛利さんも、雪乃の班に混ぜてもらうしかないか……。

 などと考えていると、横から突然、腕をバシッと叩かれた。


「武田氏!」


 驚いて振り向くと、そこにいたのは小柄なポニーテールの女子。

 水泳部の山名さんだ。

 なんで彼女は、いつも全力で叩いてくるんだろう?

 僕は叩かれた腕をさすりながら答えた。


「な、な、何だよ?」


 山名さんはにこやかに言う。

「私たちも班ができてないから、一緒にならない?」


「私たちって?」

 僕が尋ねると、山名さんは教室の端を指さした。

 その先には、赤松さんがいた。

 彼女とはバレンタインデーの一件があって、ちょっと気まずいのだけど……。

 とはいえ、他にメンバーがいないなら、仕方ない。


 というわけで、僕は毛利さんに声をかけて、山名さん・赤松さんと一緒の班になることにした。

 4人の班は小規模だが、他の班はすでに6〜8人で固まっており、これで確定となった。


 その後、ホームルームの時間が少し余ったので、班ごとに集まって、京都でどこを巡るか相談することになった。

 修学旅行は2泊3日だが、自由行動の時間は実質1日半ほどなので、行ける場所は限られている。


 僕らの班では、山名さんがその性格でグイグイと提案してくる。

 僕は特に行きたいところがないので、お任せにした。


「清水寺と金閣寺は外せないよね!」

「あと、嵐山も!」


 控えめに赤松さんが言う。

「銀閣寺も行ってみたい」


 毛利さんも加える。

「伏見稲荷大社に行ってみたいな」


「ああ! 千本鳥居があるところね。いいね!」

 山名さんが同意する。

「とりあえず1日あれば全部回れるでしょ」


 そして、山名さんは僕にも一応尋ねた。

「武田氏は、行きたいところないの?」


「うーん……特にないな。みんなの行きたいところについて行くよ」


「OK。じゃあ、あと半日分、どうしようか?」


 3人とも、特に思いつかないらしい。

「じゃあ、みんなで考えておこう」

 と山名さんが提案した。


 半日分を残して、おおまかな行動予定表の作成と、班長も山名さんに決定した。

 ホームルームが終わり、皆が元の席に戻る。

 ほどなくして休み時間になり、毛利さんが僕の席まで来て話しかけてきた。


「ねえ」


「なに?」


「あの赤松さん……だっけ? 彼女と何かあったの?」


「えっ!? なんで?」

 赤松さんとの一件は誰にも話していない。

 いや、山名さんは元から知っていたか……。

 でも、彼女が毛利さんには話してはいないと思うが。


 毛利さんは言う。

「2人とも、目を合わせようとしなかったから……、何かあったのかな、って」


 毛利さん、鋭いな。


「い、いや。なんでもないよ……。ほ、ほら、僕は人見知りでさ。話したことのない人とは、いつもあんな感じだから。それに、彼女も同じように人見知りなんだよ、きっと……」


「ふーん……。じゃあ、山名さんとはどうして知り合ったの?」


「えっ? ちょっと前に、いろいろあって……」

 僕は答えに困って、ごまかそうとした。


「ふーん」

 毛利さんは納得がいっていない様子だったが、それ以上は何も言わず、その場を立ち去った。

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