大阪から帰って、次の日は疲れから死んだように眠っていた。
次の歴史研のイベントは来週合宿があるがそれまでは平和な日々だ。
さらに次の日の昼過ぎ、イケメン同級生の足利悠斗が僕の家に遊びにやって来た。悠斗はサッカー部所属だが、この日は練習が休みとのことだった。
僕らは家のリビングでTVゲームを久しぶりに楽しんでいたのだが、お城巡り中に聞いた気になったことを僕は悠斗に確認してみた。
「ところでさあ」
「なんだい?」
「学園祭にクラスで演劇をやるとか聞いたけど、知ってたか?」
「ああ、なんか演劇部のヤツがどうしてもやりたいらしくて、裏で根回しをしてるみたいだね。でも、まだ決定じゃないよ」
「なんだ、そうなのか…」
面倒臭いであろう根回しするほど、やりたいのか?
そんなに演劇が好きなのか? まあ、演劇部だから好きなのか。
「ん? そういえば演劇部としては学園祭は何もやらないのか?」
「部としても舞台やるらしいけど、1年だからあまり良い役がもらえなくて、そいつはそれが不満だったらしい。それで、自分が良い役で舞台をやりたいらしいよ」
「なんだそりゃ…。いい迷惑だな」
僕はため息をついた。
「嫌なのかい?」
「嫌だねえ」
「でも、まだ決定じゃあないし、どうしても嫌なら、クラスで決める時までに他の企画で多数派工作をすればいいんじゃないか」
僕が多数派工作とか面倒なことをするはずもない。
「それで、その演劇部のヤツって誰だい?」
「織田さんだよ」
「あー。あいつ、演劇部だったんだ」
織田雪乃。僕は口を利いたことがないが、クラス・カーストのトップのほうにいるようだ。それ以上の事は知らない。
「純也はクラスの事、本当に何も知らないよなあ」
そう言って悠斗は笑った。そんな僕にさらに追加情報を話してくれる。
「あいつ、ちょっと性格が自己中だからクラス内でも好き嫌いが真っ二つに分かれているんだよ。あいつの取り巻きが中心になって演劇の根回しをしているようだよ」
「そうか」
「後、彼女には良くない噂があってね」
「ほほう」
「短期間で男をとっかえひっかえしているとか」
「そうなんだ?」
いわゆる “ビッチ” ってやつか?
まあ、悠斗みたいなイケメンならターゲットになりそうだな。普段からモテない僕には関係なさそうだ。
それより、クラスの出し物が演劇になるのを阻止したい。面倒なことはやりたくないし。どうしたものか。
「悠斗は演劇には賛成なのか?」
「別にどっちでもいいよ」
「そうか…」
誰か正義の味方みたいなヤツが、『何もしない』で多数派工作をしてくれないだろうか。
とりあえず、そんなことは一旦忘れて、夕方ごろまで僕は悠斗とTVゲームを楽しんだ。
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