雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

取材

公開日時: 2022年8月10日(水) 20:07
文字数:1,768

 その日の放課後、僕と織田さんは連れ立って新聞部の部室に向かう。

 僕は新聞部の部室の場所を知らなかったが、織田さんが知っていたみたいなので、彼女の後をついて行く。


 新聞部の部室は校舎3階の端の端にある英語準備室だった。歴史研の部室である理科準備室の真下。

 織田さんが扉を開けると、中には片倉部長はじめ数名の部員がパソコンに向かって何やら作業をしているようだった。


「やあ、よく来てくれたね」

 片倉部長は僕と織田さんを見ると、笑顔で歓迎してくれた。

 僕らは用意されていた椅子に座る。


 早速、片倉部長が話を切り出した。

「来月の新聞は学園祭の特集でね、新聞部独自でやった出し物の人気投票をやったんだ。そのトップ5に順番に取材しているんだ。君たちの“白雪姫”は好評だったからね、是非詳しく話を聞かせてほしくて」


 人気投票? いつの間にやったんだろ?


「“白雪姫”って、そんなに人気あったんですか?」

 僕は質問する。


「1番人気だよ。当日の観客席もほぼ満席だったし」


「そうなんですね……」

 あんなもんで1番人気か。


「それは、武田君の出演があったからじゃない?」

 織田さんが笑顔で言う。1番人気だったのが嬉しそうだ。


「そうだね」

 片倉部長が太鼓判を押す。

「“エロマンガ伯爵”の人気は依然高いよ」


 全然嬉しくない。

 というか、それは“人気”というのとはだいぶ違うと思うが。


 片倉部長は続けて言う。

「それに、イケメンコンテストがあっただろ? あれでも武田君は5位に入っていたよ」


「はあ?!」

 僕は驚いて声を上げた。

「僕は全然イケメンじゃあないですけど。それに他薦もありなんでしたっけ?」


「ありだよ。まあ、一部の男子生徒たちが面白がって大量投票したみたいだね」

 片倉部長は笑いながら言った。

 そして、投票結果の紙を見せてくれた。


 1位・2年B組 北条 星《そら》

 2位・3年C組 大友 翔太

 3位・1年A組 足利 悠斗

 4位・2年D組 浅井 蓮

 5位・1年A組 武田 純也

 …


 生徒会長候補だった北条先輩、歴史研の先輩で爽やかイケメン風の大友先輩、サッカー部の将来のエースである悠斗は確かにイケメンで、わかる。浅井という人は知らない。

「1~3位は、まあ納得できますが…」


「4位の浅井先輩は、演劇部の部長だよ」

 織田さんが解説してくれた。

「イケメンだよ」


「そうなんだ。でも、その次が僕とは…」


「大丈夫、武田君もイケメンだから」

 織田さんは僕の肩を叩きながら、憐れみを含んだ声で言う。


「さて、本題に移ろう」

 片倉部長が話題を強引に変えた。

「舞台のことを聞かせてよ。そもそも、クラスで“白雪姫”をやろうと言い出したのは誰なの?」


「私です!」

 織田さんはちょっと元気よく手を上げて言った。


「どうして、“白雪姫”をやろうと思ったんだい?」


「私は演劇部なのですが、演技が大好きで、クラスでも是非やりたいなと思って。私が仕切って演劇をやることになりました」


 裏事情を知っている僕は心の中でつぶやいた。

『本当は、織田さんは自分が目立ちたいだけでやったことなんだけどな』


 片倉部長は質問を続ける。

「クラスで決めるときも、すんなりと決まったのかな?」


「はい、早い時期から、クラスのみんなと相談していましたから、大きな問題なく進めることができました」


 裏事情を知っている僕は心の中でつぶやいた。

『クラスの投票でギリギリ1票差だったけどな』


「配役も問題なく?」


「はい、私が主役、武田君が王子様ですんなりと決まりました」


 裏事情を知っている僕は心の中でつぶやいた。

『主役も投票でギリギリ1票差だったし、僕の王子様役は足を捻挫した悠斗の代役だったけどな』


 こんな感じで片倉部長の質問は続く。織田さんはそれに対して、あることないことを澱みなく答える。僕は横で聞いているだけだった。

 織田さんが、これまでどういう経緯で演劇に興味を持つようになったとかなども取材されて、やや長い話になった。


「武田君は演劇には興味あったの?」

 突然、片倉部長に話を振られた。


「え? えーと…。あんまり…」

 あんまり、と言うより、全く興味ないのだが。


「機会があったら、また協力してもらおうと思っています!」

 織田さんが元気よく言った。


 その機会が来ないことを祈る。


 そんなこんなで取材は終了した。

 僕はあまり話をしなかった。僕はここに来る必要はなかったよな…。


 こんな感じで取材は終了し、僕と織田さんは新聞部部室を後にした。

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