翌日の日曜日。
「「起きろー!」」
大声で起こされた。
僕は驚いて目を開けると、妹と前田さんがベッドの横で僕を覗き込むようにして立っていた。
僕は驚いて身を起こす。
「ステレオで起こすんじゃあない!」
僕は目をこすりながら時計を見た。
朝の10時だ。
「お前ら、なんで僕の部屋にいるんだよ? 勝手に入ってくるなよ」
「だってノックしても返事がないから」
「返事がないなら入ってくるなよ」
「だって、死んでたらいけないと思って」
「死んでない。寝てるだけだ」
やれやれと思いながら、着替えるためにベッドから降りる。
「で、なんで、ここにいるんだよ?」
「これから紗夜さんのバイト先に買い物に行こうと思ってるんですー」
前田さんが答えた。
昨日、上杉先輩がサンシャインシティのアパレルショップでバイトを始めたというのをこの2人から聞いた。
なにやらギャル専門店らしいのだが。
「あ、そう…。でも、それ、僕の部屋にいる答えになってないけど?」
「お兄ちゃんは荷物持ちだよ」
妹が不機嫌そうに言う。
「なんで荷物持ちなんだよ?!」
「いいじゃん。どうせ暇でしょ? それに紗夜さんが『お兄ちゃんも連れてきてきたら?』って言ってたから」
「え? なんで?」
「さあ? 本人に聞けば?」
やれやれ。
上杉先輩が来いというなら、行ったほうがいいのかな? あとでうるさそうだしな。
それに、あの上杉先輩がちゃんと接客できるのか、ちょっと見てみたいとも思った。
「じゃあ、着替えて、朝食を食べたら、付いて行ってやるよ」
というわけで、2人を部屋から追い出して着替える。
そして、ダイニングに行って朝食に食パンを食べたら、妹と前田さんと一緒に家を出た。
徒歩20分ほどでサンシャインシティに到着した。
ここは日曜日は輪をかけて人が多い。
家族連れや、僕らみたいな中高生らしき客も結構多いのだ。
早速、上杉先輩がバイトしているというアパレルショップまでやってきた。
お店の中はまあまあ混雑していたが、すぐに上杉先輩を見つけることができた。
「「こんにちはー!」」
妹と前田さんは元気よく挨拶をした。
上杉先輩は僕らに気がつくと返事をする。
「来たね! 武田兄も来たんだね!」
上杉先輩は、いつもよりちょっと派手なギャルの服装とメイクだった。
服は、多分、お店で売ってるやつなんだろう。
「なんか、上杉先輩が来いと言ったと聞いたので」
僕は答えた。
「ああ…。冗談だったんだけどね」
「えええ…」
帰ろうかな?
妹と前田さんは、早速上杉先輩におすすめの服を紹介してもらっている。
「お前ら、お金大丈夫なの?」
僕は少々不安で尋ねた。
「大丈夫だよ。昨日、O.M.G.の物販でバイト代もらったから、あまり高くないやつなら大丈夫だよ」
なら、いいんだけどな。
ワイワイいいながら、試着などもしたので1時間ほどかかったが、妹と前田さんはトップスもボトムスもアクセサリーも色々購入した。
たくさん買った割には、かなり安かったらしく、妹も前田さんも満足している様子。
途中、上杉先輩は他のお客さんの対応もしていたが、ちゃんとできてた。
なんか失敗してくれたら面白かったのにと思ったが、当てが外れてしまった。
なので、僕はあまり満足していない。
目的を達成したので僕らは、上杉先輩に別れを言ってお店を出た。
そして、僕は荷物持ちをやらされている。
妹と前田さんは早速、買った服を着てみたいというので、自宅に帰ってきた。
2人は妹の部屋にこもって着替えるらしい。
僕は昼ごはんでも食べようとダイニングへやってきた。
今日は両親がいて、父親はTVを見ている。
母親が、昼ごはんにパスタをつくってくれたので、それを平らげると部屋に戻った。
隣の部屋から、妹と前田さんの笑い声が時折り聞こえてきた。
昼ごはんも食べずに、楽しそうにやっている。
僕はヒマになったので、VRMMORPG"色彩の大陸"をやるためにVRゴーグルを装着した。
そして、ゲームを開始する。
フレンドのログイン状況を確認するも、悠斗も六角君もユミコさんもいない。
今日もボッチプレイだな。
インフォメーションで、限定イベント“ヴェールテ家屋敷で幽霊退治”というのをやっていたので、参加してみる。
説明を読むと、最初の街に建っている貴族が住んでいた空き屋敷に幽霊とかゾンビとかが出没しているので、それをどんどん倒していくイベント。
そんなこんなで、屋敷の中へ。
幽霊とかゾンビとか、そんなに強い敵ではないので、どんどん倒して進んでいく。
しかし、映像的に結構グロい感じ。
突然、ゾンビとか、バケモノが現れたりして、驚かされる。
季節外れのお化け屋敷だな、これは。
しばらくプレイしていると、肩を叩かれた。
また、妹だな。
やれやれと思いながら、僕はゴーグルを外す。
すると、目の前に見たことのないバケモノが2匹いて、驚いて叫び声を上げた。
「うわーーーーっ!!」
「何が、『うわー』よ!!」
バケモノの1人が言う。
「その声は美咲か?!」
「当たり前じゃん! 誰だと思ったのよ!」
僕は目を凝らして目の前のバケモノを見た。
どうやら仮装?した妹と前田さんのようだ。
「お前ら、一体その顔はどうしたんだ?」
「はあ? これはギャルメイクだよ!」
「いや、どう見てもバケモノ」
「失礼だな!」
妹らしきバケモノが文句を言う。
「ゲームの中から出てきたのかと思ったよ」
「お兄さん。私たち完璧なギャルでしょー?」
前田さんらしきバケモノが言う。
「お前ら、鏡みたか?」
「2人でお互いにメイクし合ったから、まだみてませーん」
「お互いでメイクしたんだったら、おかしいと思うだろ?」
バケモノメイクに気を取られて、今、気がついたが、2人の服装はさっき買ったのであろうギャル風の服装に着替ていた。
ヘソだし。これは、グロップドトップスっていうんだっけ?
さらに、ラメ入りのタイトスカート、短いな…。
こんなのいつ着るんだ?
「お前ら、そのスカートだとパンツ見えるんじゃない?」
「見るな!」
妹らしきバケモノが、スカートを押さえながら叫んだ。
自分たちの姿を僕に見せつけて満足したのか、2人のバケモノは僕の部屋を出て行った。
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