金曜日。
今日は恒例のお弁当交換会の日だ。
昼休みは中庭のベンチに、僕と雪乃と毛利さんで座っている。
そして、なぜか支倉君もいる。
せっかくなので支倉君のお弁当のおかず交換をしている。
支倉君は自分で弁当を作ってきているそうなのだ。
そして話題は、伊達先輩の誕生パーティになった。
「日曜日の夕方、僕の家で伊達先輩の誕生会をやることになって、妹と友達も3人来るからね。あと、上杉先輩も」
「ずいぶん賑やかになるわね」
雪乃が自分の弁当のおかずを食べると言った。
「まあ、しょうがないね」
「じゃあ、私も演劇部の練習の後に夕方ごろ行くね。」
「うん」
「私も夕方に行くね」
毛利さんが言った。
「ワタシも行っていいですか?! 誕生会の取材をしたいです!」
支倉さんが尋ねてきた。
「ま、まあ、良いけど」
僕は答える。
そうなると僕を入れて全員10人か。リビングの床が抜けないといいけどな。
「誕生会のケーキとかプレゼントは?」
毛利さんが尋ねてきた。
「プレゼントは今日の放課後にでも買いに行くよ。ケーキはどうしようか…?」
「チョコで出来たプレートにメッセージ書くでしょ? 早めに注文しておいた方がいいんじゃない?」
雪乃がアドバイスしてくれた。
「そ、そうだね。今日、行ってくるよ。10人分のホールケーキとなると、結構大きめになるのかな?」
「7号か8号ぐらいじゃあないかな?」
毛利さんが言う。
「そ、そうなんだ…?」
ケーキの大きさの単位は“号”なのか。
「よかったら私も一緒に行くよ」
「助かる。お願いするよ」
毛利さんが一緒なら安心だな。
「待ってください。今日の放課後は応援部に行くんですよね?」
支倉君が割り込んできた。
「そ、そうだったね…。じゃあ、応援部が終わってから、ケーキを買いに行くよ」
「なんで応援部に行くの?」
雪乃が尋ねた。
「例の怪文書の“Р”の次のターゲットが応援部みたいなんだよ」
「ああ…。怪文書ね」
雪乃は、あまり興味なさそうだ。
「私も行くよ」
一方、そう言ってきた毛利さんは、興味あるみたいだな。
そんな訳で、昼休み、午後授業も平穏無事に終わり、放課後となった。
僕と毛利さん、新聞部の小梁川部長と支倉君が連れ立って応援部の練習の場所に行く。
応援部は、 大抵、屋上で練習をしているそうだ。
というわけで、僕らは屋上にやってきた。
応援部は男子と女子に分かれていて、男子は6人。詰め襟学ラン姿で大声を張り上げている。
女子はいわゆるチアリーディングで8人。男子とは離れた場所でポンポンを振ってダンスをしている。
もともと男子=応援部、女子=チアリーディング部だったが、数年前に合併して男女一緒になったらしい。
部活の合併は少子化のせいで5人以上の部員確保のために行われるが、応援部の部員は全然多いようだが。そういうケースもあるんだな。
部長は女子で尼子さんという。
小梁川さんがダンス練習の切れ目で、練習中の尼子さんに声を掛ける。
「練習中にごめんなさい、尼子さん、ちょっといいかしら?」
「小梁川さんじゃない? 何?」
尼子さんは小梁川さんに向かって数歩近づいてきた。
小梁川さんと尼子さんは知り合いらしいので話は早い。
早速、小梁川さんは尋ねる。
「怪文書のことは知ってるでしょ?」
「うん。新聞部のXに出てたやつでしょ?」
「そう。それで、犯人の次のターゲットが応援部かもしれないのよ」
「え? そうなの?」
「AIがそう予想したのよ。だから、なにか盗まれたり、変わったことがあったら、すぐに新聞部まで教えてほしいのよ」
「いつ、犯人が盗みを働くのかわからないの?」
「時期はわからないわ。でも、これまでは毎月14日に盗みがあったから、来月の5月14日は念のため気を付けておいて」
「わかったわ」
僕らは屋上を後にする。
もう少し女子チアリーディングを見学したかったけどな。
などと考えていると、支倉君が話しかけてきた。
「武田先輩、もっとチアを見たいと思っているでしょ?!」
エスパーかよ。
「そ、そ、そんな事ないよ」
僕はごまかした。
「チアのスカート下は専用のアンダースコートだから見えてもいいんですよ」
支倉君はさらにツッコんできた。
「あ、そう…?」
見えてもいいんだったら、いくらでも見せてくれてもいいだろうに…。
などと、心の中でつぶやきなら屋上からの階段を降りて行った。
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