雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

肖像画

公開日時: 2024年12月21日(土) 20:00
文字数:1,630

 今日は、新年度初の選択科目である、美術の授業がある。

 教室を出て、美術室まで移動する。


 美術、音楽、書道の3科目は選択科目で、あらかじめ始業式が始まって早々に各生徒が希望を出している。

 美術は人気のある科目なので希望者が多く、抽選になってしまい、抽選から漏れたものは他の教科に回されてしまうのだ。

 ちなみに、僕は1年の時は美術の抽選から外れてしまい、音楽の授業を受ける羽目になっていたが、2年になった今年度は美術の授業に当選できた。


 そんなわけで、美術の初授業。

 今日は、鉛筆とスケッチブックを用意しろというので、何を描かされるのかと思いきや、2人1組になってお互いの肖像画を描けという美術教師から指示が出た。


 2人1組とか、友達がいない僕は相手を見つけるのは困るなあ…。

 ちなみに、毛利さんは書道を、雪乃は音楽を選択しているので、美術室にはいないのだ。

 そんなわけで、余った人同士でペアになればいいか、などと考えていたが、すぐに黒髪の女子に声を掛けられた。


「武田君」


 どこかで見たことある女子…。誰だっけ?

 不思議そうにしている僕に、その女子は驚いた様子で尋ねてきた。


「え? わからない? 私、蜂須賀だよ」


「えっ?! 蜂須賀さん?!」


 驚いた。

 蜂須賀さん、昨日まで半分ピンク髪で半分金髪なのに、今は黒髪…?


「髪の色が違う?」


「放課後になるまでは、ウイッグかぶっているって言わなかったけ?」


「え…? ああ…」


 そう言えば、そんなこと言ってたな。

 蜂須賀さんの事は、髪色で判断していたので、すぐに誰かわからなかったよ。


「ペアにならない?」

 蜂須賀さんは尋ねてきた。


「う、うん。いいよ」

 早い段階で、ペアになれたので一安心した。


 早速、向かい合って、肖像画を描き始める。

 僕は、美術を選択したが別に絵がうまいというわけじゃない。

 美術教師の指示なので、仕方なく蜂須賀さんを描く。

 授業とはいえ、女子をじっと見つめるのは、ちょっと緊張する。


 うまく描けないな…。

 なんとか頑張って描き続ける。


 そして、授業も終盤に差し掛かった頃、美術教師は出来たこところまでで終了し、絵を提出しろという。


「ねえ、ちょっと見せてよ」

 蜂須賀さんは僕の横に回り込んで、僕が描いた蜂須賀さんの肖像画を覗き込んだ。

「あー、ああ…。なかなか、前衛的な絵ね」

 蜂須賀さんは、精一杯のお世辞を言った。


「絵は得意じゃあないんだよ」

 僕は一応、弁解した。

「蜂須賀さんの描いた絵も見せてよ」


 僕がそう言うと、蜂須賀さんはスケッチブックを見せてくれた。


 上手い。

 写真みたいだ。

 さすが、美術部。

 春休みに、他の絵も見たことがあるが、それもすごく上手かった。

 以前、新聞部の片倉先輩が、蜂須賀さんは絵の才能が天才的だと言っていたのを思い出した。

 そして、片倉先輩は蜂須賀さんのことを“変わり者”だと言っていたが、僕が今まで接した感じでは、彼女は少々ぶっきらぼうな所はあるが、別に変わり者ってほどじゃあないと思った。


「ねえ。前に、お願いしたいことがあるって言ったじゃない?」

 蜂須賀さんは話題を変える。


「そういえば、そうだったね」

 忘れていたが、ホワイトデーのお返しを渡したときにそんなことを言っていたのを思い出した。

「で、お願いって、何?」


「絵のモデルをやってほしいのよ」


「モデル?」


「そう、モデル」


「なんで、僕なんかを? 別にイケメンでもないのに」


「イケメンより、どこにでもいるような普通の顔の方が難しくて練習になるのよ」


「あ、そう…」

 あんまり嬉しくないな。


「今週は、歴史研の勧誘活動をするんでしょ? 今週は、忙しそうだから来週月曜の放課後、ここにきてよ」


「勧誘活動は、今週限りってわけじゃないけど…。まあ、いいよ、月曜日ね…。美術部のほうは、もう勧誘活動はしないの?」


「うん。何人かは入部してくれそうだから、明日の部活紹介オリエンテーションをやったら、一旦はおしまい」


 入部する人が居そうとは、うらやましい限りだな。

 世間話はほどほどに、描いた肖像画を提出して僕らは美術教室を後にした。

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