雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

ラブレター

公開日時: 2022年4月7日(木) 06:34
文字数:1,469

 金曜日の朝、登校する。

 げた箱を開けると何やら封筒が。

 表には“武田純也様へ”。裏に差出人は書いていない。

 しかし、ハートのシールで封がされていた。


 これはまさか! 伝説のラブレターと言うやつではないか?


 おお、始めて見たぞ。

 しかし、誰からだろう? それに僕みたいな陰キャにラブレターを書くとは、物好きか?


 しばらく、そのラブレターらしきものを眺めていると。

「おはよう」

 毛利さんが声を掛けてきた。


「お、お、おはよう」


「どうしたの?」

 毛利さんは、慌てた僕の様子を見て怪訝そうに聞く。


「急に声を掛けられたので、驚いたよ」

 僕はその場を適当にごまかして、ラブレターを毛利さんに見られないようにポケットに隠した。

 そして僕と毛利さんは、2人で教室へ向かう。


 そして、1時限目の授業を受けた後、僕はラブレターを読もうとトイレの個室に入った。

 思い切って封を開け、中の手紙を取り出して見た。


『今日、部室まで来てよ。上杉紗夜』


 おい。


 何だよこれ、期待して損したよ!

 上杉先輩、用があるならLINEで呼べばいいのに、妙な真似を。


 そして、放課後、今日は金曜日なので、毛利さんは図書委員の仕事で図書室ということで、僕一人で歴史研究部の部室向かった。

 校舎の4階、端の端、理科準備室の扉を開けると、いつもの様に伊達先輩と上杉先輩が居た。


「いらっしゃい」

「来たね!」


「上杉先輩! この手紙はなんですか?」

 僕は間髪入れす、偽ラブレターを手にして質問した。


「キミ、全然部室に来ないからだよ」


 確かに2学期の始業式以来、約1週間部室に顔を出さなかったのである。

 入部する時、幽霊部員でも良いと言われていたので、部室に行かないのはさほど気にしておらず、最近は放課後はすぐ帰宅するか、図書室で宿題をしたりしていた。


「LINEで呼べばいいじゃないですか?」

 僕は抗議する。


「いやー、趣向を凝らしてみようと思ってね。本物のラブレターだと思った?」


「思いますよ!」


 上杉先輩は嘲笑するように言う。

「キミにラブレター書く人なんているの~?」


「いるかもしれないじゃないですか!」

 僕はため息をついて椅子に座った。

「それで、なんの用でしょう?」


「君の料理の特訓の話だよ」


 そう言えば、そう言う話もあったな。1週間前のことなので忘れていた。


 次に伊達先輩が話を続けた。

「それで、明日、特訓するわね。場所は先日決めた通り、武田君の家で」


「え? あー、わかりました」

 仕方ないな…。


「後、来週の水曜日に衣装が届くから、部室に来て」


「衣装?」


「メイド喫茶で着る衣装のことよ」


 そうだ、それも忘れていた。僕は執事の衣装を着るのだった。


 僕はふと思い出したことがあって、話題を変える。

「ええと、クラスで演劇をやることになって、1日目の午前中はそちらに行きます」


「やっぱり、演劇やるんだ? で、何の役?」

 上杉先輩が再び尋ねる。

「“木”の役です」


「あはは。やっぱり、言った通りになったね」

 上杉先輩は笑う。

 先日、お城巡りのとき、クラスで演劇をやることになるかもしれないと、先輩たちには話をしていたのだ。

 そして、上杉先輩は“木”の役を予言していた。まあ、偶然だろうけど。


 伊達先輩が話題を元に戻す。

「わかったわ。他のメンバーもクラスの出し物がある人がいるから、うまくローテーションを組むわ。後、展示もあるからそれの準備をしないと」


「展示?」


「回ったお城の写真とか、感想とかを掲載するの。忘れた?」


「覚えています」

 忘れてた。この話を聞いたのは確か夏休み前だ。


「来週は部室でそれを皆で作成しましょう」


「わかりました」


 やれやれ、来週は毎日部室に行く羽目になりそうだな。

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