雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

日本100名城をすべて巡る!
谷島修一
谷島修一

公開日時: 2025年2月20日(木) 02:23
更新日時: 2025年2月22日(土) 13:54
文字数:2,639

 放課後。

 僕と雪乃、毛利さん、そして、なぜか新聞部の支倉君まで一緒になって、雪乃の家を訪問することになった。

 学校から徒歩で雑司ヶ谷駅まで、地下鉄に乗って1駅移動し、西早稲田駅まで。

 西早稲田駅チカのマンションの一室が雪乃の家である。


 ということで、久しぶりに雪乃の部屋にやってきた。

 以前来たのは、2月ごろだったっけ。

 部屋の家具やカーテンは淡いピンク色。

 今日も部屋は綺麗に片付いていた。


 今日は織田家の両親は仕事と用事で不在。

 そして、小学生の弟は最近は寄り道して遊んでくることが多く、今日も夕飯ごろに帰ってくるだろうと雪乃は言う。


 僕らは座布団に座ってしばらく世間話をする。


 支倉君は雪乃に生徒会長選挙のことを質問している。

「ところで、昨日、『私もいろいろ考えがあるから』と言っていましたが、それは何ですか?」


「いいわ。ちょっとだけ教えてあげる」


「ありがとうございます!」

 支倉君、めっちゃ嬉しそう。


 雪乃はニヤリと笑って話を続ける。

「実は、たまたまなんだけど、ちょっと頼まれごとがいくつかあって、生徒会長選挙の票の取りまとめしてもらうのを条件にOKしようかと」


「ほほーっ! その内容は?」


「それは秘密」


「えーっ! そこまで言ったら教えてくださいよ!」

 支倉君、今度は不満そう。


「まあ、来週ぐらいに1つは公表するわ」


「それは楽しみです! 頼まれごとは、いくつあるんですか?」


「今のところ、2つね」


「来週が待ち遠しいです!」


 などと、選挙の話が一区切りつくと、雪乃は立ち上がった。

「じゃあ、私たちはちょっとコンビニに行ってくるわ」

 そういって、支倉君の腕を引っ張って立ち上がらせた。


「え? どういうこと?」

 僕は何のことか、わからず質問する。


「だって、今日は純也と歩美がキスするためにこの部屋に来たんでしょ?」


「ああ…」

 そうなのだ、メインは僕と毛利さんがキスするため、今日は雪乃の部屋を提供してくれるという話でここに来たのだ。


「と、いうことで30分ぐらいコンビニで買い物してくるから。純也、バッチリ決めてよね。なんだったら、エッチもしていいけど」


「い、いや…。そこまではしない…」


「ワタシは残っちゃダメですか?」

 支倉君が尋ねた。


「ダメにきまってるじゃん!」

 雪乃は答えた。

「いいから、颯太も行くの!」


 そういって支倉君を無理やり部屋から引っ張り出した。

 玄関の扉が開いて、雪乃と支倉君が出ていく音。

 そして、静寂。


 キスのため、2人きりにされてしまったが、気まずい…。

 何から話を切り出していいのやら。

 そして、キスの前に気になっていることがある。

 それは、最近の毛利さんと悠斗の関係だ。

 バレンタインデーで毛利さんが悠斗にチョコを渡すのを目撃し、その後日、仲よく話をしているを何度か見たことがある。

 僕が目撃したのとは別に、雪乃も見たことがあると以前言っていた。

 2人は付き合ってるのだろうか?

 いや、付き合っているなら、ここで僕とキスしようとするわけないよな…。

 でも、今日は毛利さんの意思とは別に、雪乃がやや強引にこの部屋に連れてきた感じもしなくはない。

 毛利さん、押しに弱そうだからな。

 僕も人の事を言えないけど。

 などと、しばらく考え事をしていたが、思い切って悠斗との関係を聞いてみることにした。


「あのさ…」

 僕は口を開いた。


「うん」

 毛利さんは小さく答えた。


「悠斗なんだけど…」


「え? 足利君がどうかしたの?」


「最近、よく毛利さんと話しているみたいじゃん?」


「う、うん…」

 毛利さんは、ちょっと気まずそうに答えた。


「なんの話をしているのか気になって…」


「それは…、『相談事があって』、って前も言ったよね?」


「そ、そうなんだけど…。なんの相談?」


「それは秘密」


 そうだよな。

 相談内容をほかの人に言うわけないよな。

 そもそも、毛利さんは秘密主義なところがあるし。

 しかし、気になる。


 しばらく沈黙。


 今度は、毛利さんが口を開いた。

「ねえ…。キスしないの?」


「え? ああ、そうだね」

 もう悠斗のことはどうでもいいや。

 トラブルになったら、その時の僕に頑張ってもらうことにする。

 僕は意を決して毛利さんの隣にズイッっと近づいた。

 そして、手を彼女の肩に回して体を近づける。

 毛利さんが目を閉じてキス待ち。


 その瞬間。

 玄関の扉が勢い良くひらく音が。


 バタバタと廊下を走る音。

 そして、声がした。

「ねえちゃん! ねえちゃん!」


 雪乃の弟が帰ってきたのか?!


 僕と毛利さんは身体を離した。

 ほぼ同時に雪乃の部屋の扉が開く。

「ねえちゃん!」

 学ラン姿の弟が扉から顔をのぞかせた。

 そうか弟は、中学生になったんだな。


 その弟は、僕と毛利さんしかいないのを見て不思議そうに尋ねた。

「あれ。ねえちゃんは?」


「え、えーっと。コンビニまで行ってるよ」


「ふーん。そっか」

 そういうと弟は扉をしめて、他の部屋に行ってしまった。


 僕と毛利さんは、すっかり興ざめしてしまった。

 せっかくのチャンスを。弟め。

 しばらく無言。


 そして、雪乃と支倉君が部屋に帰ってきた。


「純也、やった?!」

 開口一番雪乃は尋ねた。


「いや。いいところで、雪乃の弟が部屋に入ってきたので、できなかった…」


「はあ?!」

 雪乃はちょっとあきれたように大声を上げた。

「弟、帰って来てるの?」


 雪乃は部屋を出て行く。

 そして、奥のリビングルームかどこかで弟になにやら文句を言っている声が聞こえる。


 一方、支倉君は正座して、僕をまじまじと見て言う。

「いまから、キスしてもらってもいいですよ」


「できるか!」

 さすがに拒否した。


 雪乃が部屋に戻ってきて、座布団の上に座ると僕に言う。

「ごめんねー。弟、いつもはもうちょと遅く帰ってくるのに」


「ま、まあ、仕方ないよ」

 僕は答えた。


「コンビニでお菓子買ってきたから、皆で食べよう」

 と雪乃がレジ袋からお菓子を何種類か床に並べる。

 気を取り直して、お菓子パーティーが始まった。


 世間話の中で、毛利さんは言う。

「再来週の4月20日は伊達先輩の誕生日だから、何かお祝いしたいね」


「え? そうだっけ?」

 僕は驚いた。


「私たちもお祝いしてもらったから、何かしたほうがいいの思うの」


「まあ、そうだね…。でも、サプライズ的なのじゃあなく、普通にお祝いでいいんじゃない?」

 これまでに僕、毛利さん、雪乃はサプライズで歴史研メンバーからお祝いをされている。


「じゃあ、みんなで負担してケーキでも買ってきて、お祝いしよう」

 雪乃は提案する。


 その程度でいいだろう。

 別で、なにかプレゼントは用意した方がいいよな。


 その後も、伊達先輩談義で盛り上って、夕飯の前には失礼させてもらった。

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