高遠城を訪れた翌日。
ゴールデンウイークはまだ継続中である。
というわけで、僕はお城巡りでかなり疲れていたので、昼ごろまで寝ていた。
ようやく起き出して、リビングで昼食をとっていると、妹が絡んできた。
「お兄ちゃん、ゴールデンウイークだからって、寝すぎじゃない?」
「昨日、お城巡りしてきたから、疲れてるんだよ」
「高速バスで行ったんだよね?」
「ああ。バスの座席に長時間座ってたから、結構きつかったんだ」
「前に、もっと楽に回れる方法考えてよって言ったのに」
「そんな簡単に思いつくわけないだろ」
「私、来年雑司が谷高校に入学したら、歴史研に入部するって紗夜さんに約束したんだから」
「お前が入学する頃には、上杉先輩たちはもう卒業してるだろ」
「紗夜さん、卒業してからもたまに歴史研に遊びに来るって言ってたよ」
「はあ?!」
上杉先輩、どれだけ歴史研が好きなんだよ。
でも、来年には僕も3年で部活は引退だし、たとえ先輩がやって来たとしても、顔を合わせることは少ないだろう。
「あっ、そろそろ出かけなきゃ」
妹は時計を見ながら言った。
「どこに行くんだ?」
「のぞみんと会うんだよ」
「前田さんか…。お前ら、仲いいよな」
「私は、お兄ちゃんみたいなボッチじゃないからね」
「僕はボッチじゃないぞ」
「そうか、女子を侍らせてるよね。最近は男子もいるし」
「男子って…支倉君のことか? 彼は取材したいだけで、侍らせてるわけじゃない」
そんなこんなで、妹はひとしきり僕に絡んだあと、出かけていった。
前田さんと会うらしいが、あの2人、本当に仲が良いよな。
僕の方はというと、この後はやることがゼロなので部屋に戻って、いつものVRMMORPGでも始めようとゴーグルを装着。
異世界へやって来た。
ゴールデンウイークということもあって、いつもより参加者が多い気がする。
街の中は、いろんなキャラで溢れかえっていた。
街の近くの草原で、僕はしばらく1人で雑魚キャラを倒して経験値を稼いでいると、ユミコさんがログインしてきた。
『こんにちは』
僕はチャットで挨拶する。
早速、ユミコさんと合流して、一緒に雑魚キャラを倒して経験値を稼ぐ。
いつもヒーラーであるユミコさんには、HPの回復や毒状態からの治療をしてもらっていた。
ヒーラーがいなければ、回復ポーションを買わなきゃいけないし、本当に助かっている。
それに、ユミコさんは人柄も良くて、僕でも話しやすいし、一緒にプレイしていて楽しい。
……オジサンなのかもしれないが。
まあ、別に楽しくプレイできてるんだから、性別も年齢も関係ないよな。
どうせ会うこともないだろうし。
というわけで、ちょっと感謝を伝えてみた。
『ユミコさん、いつも回復ありがとう』
『こちらこそ、経験値稼ぎにつきあってくれてありがとう』
『いえいえ、これぐらいは。僕もここでの友達はジス(悠斗)とヘクサ(六角君)以外はいないので。しかも彼らも剣士だから回復できないし』
僕は話題を変えてみた。
『ところで、ゴールデンウイークは、ゲーム以外では何かしてたんですか?』
『旅行とかかな』
『へー。僕も昨日、旅行というか、お城を見てきました』
『良いですね』
『いえ、部活で仕方なくですよ』
『楽しそうな部活ね』
『全然。部員集めとかしないといけないし、何かと大変です』
この後も、ユミコさんとしばらく世間話をして、楽しい時間を過ごした。
彼女との異世界生活は、いろんな意味で癒やされるし、気も楽になる。
もし女子だったら、リアルでも会ってみたいよな。
でも、きっとオジサンなんだろうなあ。
オジサンだったら、絶対会いたくないな。
更新を再開します。
今後またお休みすることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします
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