金曜日。
お昼休みは恒例のお弁当交換会で、僕、毛利さん、雪乃が揃って中庭のベンチに座っている。
そして、今日は新聞部1年の支倉君も僕の密着取材のために弁当を持ってやって来て、ベンチに座っている。
毛利さん、僕、雪乃、支倉君という並びになって4人で仲よく(?)弁当を食べている。
雪乃と支倉君は初対面なので、2人は自己紹介をする。
「私は織田雪乃、演劇部に所属しているわ」
「こんにちは! ワタシは支倉です! 1年、新聞部です! 織田先輩は生徒会長選挙で、スカート着用を男子にも可能にしてくれるというので、応援しています!」
「ありがとう。選挙の時はよろしくね」
「はい!」
「それで、純也の密着取材をしているんでしょ?」
「はい! そうです!」
「どう? 良い記事が書けそう?」
「まだですが、炎上…、バズりそうな記事を頑張って書きます!」
「がんばってね」
雪乃は微笑んだ。
僕はあんまり頑張ってほしくないんだけどな。
「選挙の方はどうなんですか?」
支倉君が雪乃に尋ねた。
「週1回に対策会議をやっているわ。選挙自体は6月末だから、まだ先だけど」
「織田さんは有名だから、大丈夫じゃあないですか?」
「そうね。でも、伊達さんは油断するなっていつも言ってるけど」
「伊達会長、慎重ですね」
「そうね…。私もいろいろ考えがあるから」
「そうなんですね。それは具体的にはどういう?」
「これからちょっとずつ公表していくわ」
「期待しています!」
雪乃、なにか企んでいるのか…。
僕は尋ねる。
「雪乃って、1年生でも有名なの?」
「はい! 食堂で人の目も気にしないでキスしてたって、クラスでも話題です」
支倉君は元気よく答えた。
食堂…。ああ、あの演劇部の宣伝のことね。
僕は、巻き込まれたけど。
あれは、やりすぎだよなあ。
「あれぐらい、いつもしてるけどね」
雪乃は弁当を食べながら言う。
「いつも?!」
支倉君は驚いて目を見開いた。
「私と純也は、キスフレなのよ」
「ええっ! それはすごい!」
「そんなに、いつもしてるかな?」
僕は疑問を呈した。
「春休みもずっとしてたじゃん?」
雪乃が言った。
「あれは、ショートムービーの撮影のためで演技でしょ?」
「そっか…。確かに、春休みの前はあまりキスしなかったよね?」
「え? ど、どうかな?」
「私のことより、純也と歩美のほうよ。やはくキスしなよ」
「えっ!? 武田先輩と毛利先輩もキスフレなんですか?」
支倉君は再び驚いて尋ねた。
「違う! 違う!」
僕は慌てて否定する。
「純也と歩美が早く関係を進めてくれないと、私に順番が回ってこないのよ」
雪乃が余計なことを解説する。
「どういうことですか?!」
支倉君は尋ねる。
当然、疑問に思うよな。
「純也のドーテーは歩美に譲るって約束したから、私はそれを待たないと純也とエッチできないのよ」
「おおーっ!」
支倉君は興奮した様子で、メモを取り始めた。
「これは、大事件です!」
「待って! 待って! こんなのXで投稿しないでよ!」
「ええっ!? こんな話、炎上待ったなしですよ!」
「ダメだ。もし投稿したら、今後、密着取材は拒否する」
「そんなあ…」
支倉君は肩を落とした。
「でも、今日のお弁当交換会のことは投稿します!」
「まあ、それぐらいなら…」
毎週やっているお弁当交換会はみんな知っているからな。
島津先生まで知ってたし。今更な話題だろう。
雪乃は話を再び始める。
「前にさあ、純也がキスする場所がないって言ってたじゃん」
「う、うん…」
「それで、私の部屋でキスしたらって提案したじゃん? 今日の放課後、うちに来たら?」
「ええっ!」
僕は驚いた。
毛利さんも驚いている様子。
「それはいいですね!」
支倉君は無責任に雪乃に同意する。
「いやいやいやいや…。さすがにそれは…」
「まあ、ともかく、今日はうちに遊びきなよ」
「ワタシも行っていいですか?」
「ダメだ」
僕は否定する。
「いいじゃん。どうせ純也と歩美がキスするときは、私たちは席を外すんだから」
「そうなの?」
「ちゃんと2人っきりにしてあげるから」
雪乃は微笑みながら言った。
「じゃあ、行ってもいいですね!」
支倉君は嬉しそうに言った。
もう、好きにしてくれ。
というわけで僕らは、放課後、やや強引に雪乃の家に訪問することになった。
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