例によって、妹の美咲と偽妹の前田さんに叩き起こされて、朝からジョギングをする。
ジョギングは疲れるが、幸いになことに朝6時半に起こされたのは、初日だけで、それ以降は朝9時頃からジョギングをしている。
飽きないように毎回コースを適当に変えて、雑司ヶ谷町内をウロウロしている。
雑司ヶ谷は路地が複雑に入り組んでいて迷宮のようになっており、知らない人が入り込むと生きて抜け出ることは難しいのだ。
僕は生まれてから雑司ヶ谷に住んでいて、よく知っているので脱出可能。
途中、雑司ヶ谷高校の前を通過。
校庭でどこかの部活が練習をしているのが見えた。
ラグビー部、陸上部、それにサッカー部もいた。
「美咲。悠斗がいるぞ」
「え? どこどこ」
「ほら、あそこ」
僕は指さした。
「本当だ」
幼なじみの悠斗は、無論、美咲とも顔見知りで、小学校の頃は僕と妹と悠斗の3人でよく遊んだものだ。
「誰ですかー?」
偽妹が割り込んできた。
「幼なじみで、サッカー部の悠斗だよ」
「おー! イケメンですねー」
「だろ?」
「なんで、お兄ちゃんがドヤ顔になるのよ?」
妹に突っ込まれた。
「あっちはー?」
偽妹を指した方を見ると女子が10人ほど走り込みをしていた。
陸上部?…、いや、
「あれは女子水泳部だ」
以前、彼女らは夏以外は基礎錬ばかりしていると聞いた。
「あの人、可愛いですねー」
この内の1人を指さした。
「ああ、赤松さんだな」
「お兄ちゃん、知り合いなの?!」
妹がちょっと怒り気味に訪ねてきた。
「い、いや」
バレンタインチョコをもらったとかいうと、面倒なのでごまかすか。
「彼女は美人で校内でも有名なんだよ」
校庭覗きをし終えると、再びジョギング。
自宅に戻る。
シャワーを浴びて、朝食をとる。
今日も偽妹が和風朝食を作ってくれた。
食べながら、妹と偽妹にO.M.G.のライブの件を話す。
「そうだ。土曜日のO.M.G.のライブでに物販で人出が必要だから、お前ら手伝いに来る? スタッフ扱いで入場できるぞ」
「タダ?!」
妹が前のめりで訪ねてきた。
「タダ」
「行く!」
「行きますー!」
妹も偽妹も乗り気になってよかった。
物販の接客ぐらいできるだろう、たぶん。
僕でもできてるからな。
「楽しみだなー」
偽妹は嬉しそう。
「物販の手伝いで、仕事だからな」
一応、釘をさしておく。
妹が話題を変える。
「それより、今日の午後からみんなで勉強会するんだけど?」
「勉強会? 聞いてないんだけど?」
「そりゃ、言ってないからね」
「でも、春休みは宿題ないだろ?」
「私たち、もう3年で高校受験だから、のんびりしてられないのよ」
「あ、そう…。ん? “みんな”って、お前らだけじゃないってこと?」
「そうだよ。私、のぞみん、はるるん、りょうちんの4人」
「それって、パジャマパーティーの時の4人?」
「そうそう。あと、恵梨香さんが先生で来るよ」
「えっ?! 伊達先輩まで?」
「なんで、いやそうな顔するのよ」
妹が睨みつけてきた。
「別に嫌じゃあない」
僕はごまかす。
まあ、いいか。
伊達先輩は、僕には用はないだろうし、午後は自室で静かに過ごせそうだ。
そんなこんなで午後になり、丹羽、溝口もやってきた。
そして、伊達先輩も到着。
僕は家に伊達先輩を招き入れると尋ねた。
「妹の家庭教師、いつもは週末じゃあなかったでしたっけ?」
「ええ。でも、春休みだし特別に勉強を教えてほしいって言われたから」
「それに、妹の友達も3人いますけど?」
「それも、わかってるわ。ほかの人たちも特別に教えてあげようと思って。ひょっとしたらその3人のうち、今後、私を家庭教師として雇ってくれる家庭もあるかもしれないし」
なるほど。営業も兼ねているということか。
ちゃっかりしている。
僕と話し終えると伊達先輩は、4人が待ち構える妹の部屋に入っていった。
みんな真面目に勉強をしているようで、午後以降は平和な時間を過ごせた。
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