今日は昭和の日なので学校は休み。
しかし、宿題はしっかりと出されているので、午前中はそれを片付ける。
中間試験が5月中旬にあるのだが、最近はあまり勉強していないので、少々不安である。
また、伊達先輩にでも教えてもらおうかな…?
昼食を終えて、もうしばらく勉強をする。
そして、そのあとはいつものVRMMORPGでもやることにした。
スマホのアプリを立ち上げ、VRゴーグルにセット。
それをかぶって、リモコンを持って異世界の中へ。
早速、フレンドの状況を見る。
珍しくユミコさんがログインしているようだ。
僕は早速、プライベートチャットで声を掛ける。
『ユミコさん、こんにちは』
『こんにちは』
『お久しぶりです』
『ええ、お久しぶり』
『今、どの辺ですか』
『最初の街の近くの草原にいます』
『じゃあ、向かいます』
僕は移動して草原へ。
ヒーラー姿のダークエルフのユミコさんの姿が見えた。
雑魚の敵キャラをメイスで殴っている。
ヒーラーが殴っているというのは、なんか変な光景だ。
ヒーラーが1人で経験値を稼ぐのは、これぐらいしか方法がないから、仕方ないけど。
『来ました』
僕は声を掛ける。
『経験値を一緒に稼ぎましょう』
僕らは、しばらく雑魚キャラを倒して経験値を稼いでいる。
そう言えば、街の旧貴族の屋敷でゴーストやゾンビ退治のクエストがあったのを思い出した。
ヒーラーだと、そういう敵を倒しやすいんじゃあないかな?
というわけで、僕はそのクエストを提案する。
すると、ユミコさんは、
『楽しそう』
と言った。
『お化け屋敷みたいになってるんだけど、大丈夫かな?』
僕は念のため確認する。
『お化け屋敷、好きだから大丈夫』
お化け屋敷が好きとは、物好きだな。
僕は、あまり好きではない。むしろ、嫌いである。
以前、雑司ヶ谷高校の学園祭と、東池女子校の学園祭と、よこはまコスモワールドのお化け屋敷に行ったけど、僕は全然楽しくなかったな。
あの時は、毛利さんと雪乃も楽しそうにしていた。
女子って、お化け屋敷好きなんだろうか?
いや、ユミコさんが女子かどうかは、まだ保留だ。
悠斗は違うというが、中の人はオジサンかもしれないからな。
そんなこんなで、街の中の屋敷へやってきた。
クエストを進める。
予想通り、ヒーラーの使う魔術はゴーストやゾンビを容易く退治していく。
リビングアーマーは僕が物理攻撃で倒していく。
なかなか順調。
結構時間が経って、屋敷のだいぶ奥の方まで行ったが、そろそろ僕らのレベルでは倒しにくい敵だらけになってきていた。
ユミコさんと相談して、いったん屋敷の外に出ることにした。
そこで、肩をたたかれた。
VRゴーグルを外すと妹が立っていた。
「お兄ちゃん、晩ご飯だよ」
「そうか、ありがとう」
時計を見ると。
もう夕方6時過ぎだった。
「お兄ちゃん、ゲームばかりしてる」
妹が怪訝そうに言う。
「ばかりじゃない。昼過ぎまで勉強してたぞ」
僕は反論した。
「それより、恵梨香さんの誕生会の時、新しい女連れ込んでたでしょ?」
「新しい女? 誰のことだ?」
「しらじらしいなー。小柄でショートボブの女子だよ」
「ああ、支倉君のことか。彼は男だぞ」
「ええっ!」
妹はとても驚いたようだ。
「マジ!?」
「マジだよ」
「うまいこと言って、誤魔化そうとしてるんじゃない?」
「マジに男だって」
「ほえー。女の子かと思った」
「僕も最初は女子かと思ったんだよ」
妹は少し考えこんでから言う。
「お兄ちゃん、ひょっとして…、男も大丈夫だとか? 二刀流?」
「なんだよそれ」
「だって、あの人とお兄ちゃん、よく話してたよね? 好き合っている同士みたいだったよ?」
「見当違いもいいとこだ。彼は新聞部員で、僕のことを密着取材しているんだよ。それで彼が話しかけて来るから、答えてるんだ」
「へー。お兄ちゃんを密着取材って、物好きだね」
妹はそういうとクルリと向きを変えて部屋を出て行こうとする。
そして、一言。
「早く晩ご飯食べないと冷めちゃうよ」
「わかった」
僕はVRゴーグルをかぶって、ユミコさんに事情を話し、今日のところはゲーム終了することにした。
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