というわけで、俺はスタートボタンをポチッと押すとゲームがスタートする。
『名前を入力してね❤️』
お、名前入力機能があるのか……。
この機能があるギャルゲーは数少ない。
この時点でかなり、凝ってる気がする……。
「名前、どうするよ?」
こういうので一度、『雄也くん!!』とか言われてみたい気がする。
「いや、ロード画面に飛んでくれ……ここからだと時間かかる」
え〜まじすか。
少しくらい自分の名前呼ばれてみたかったなぁ……。
ちょっとショックだが、時間の問題だ。
仕方ない。
「どうやってロード画面に飛ぶ?」
「ん?」
拓哉は俺のコントローラーを取り、ボタンを押した。
というか、ストーリー途中からやっても俺、つまらなくね……。
これって、アニメを最終話だけ観るぐらいのことしてね……。
なにそれ、めちゃくちゃつまらないじゃねーかよ!!
『ロード中❤️』
その言葉と共に、画面は変わり、明るいBGMが流れ出す──。
拓哉は誇らしげな顔をして。
「とりあえず、メインヒロイン以外の好感度をマックスにしてメインヒロインの好感度をミンにしたところからだ」
やれやれ、そこまではやってあるのかよ……なら、何でルートクリアができないのだろうか?
少し嫌な予感がするが、気のせいだろうか?
まぁ、とりあえずはこのゲームのあらすじを聞くことにしよう。
「なぁ、拓哉。ゲームのあらすじぐらい教えてくれないか?」
あらすじを聞くだけでだいぶ、面白さが増すと思う。
せっかくやるのだ。
少しぐらい、俺も楽しみたい。
「お、そうか……ここまでの内容はだな……まず、主人公である『あ』は……」
「ちょっと待て……お前、それ、名前決めんのめんどくさかったよな?」
「ある日、女子校に間違えて転校してきてしまうのだ」
うわっ、エロゲ展開!!
そういう、とんでもなくぶっ飛んでて現実世界にない設定だから面白いんだよな……。
ハーレム系か。
普通にやってみたいんだけど。
「そこで、幼馴染と再会して物語は始まる……ちなみにだが……」
○
『あくん。久しぶり……今日、帰りに寄り道でも……』
『うんいいね!!』
→『ごめん、無理』
『そ、そっか……ごめんね!!』
『今日、昼ごはん一緒に……』
『ごめん、無理』
『今日一緒に帰ろ……』
『ごめん、無理』
○
「と、こんな感じで、メインヒロインの選択を全拒否すれば、好感度をミンにできる!!」
おい……『ごめん、無理』しか言ってねーじゃねーかよ。
というか……。
「このメインヒロインはなんでこんなに断っても、主人公を誘ってくんだよ──ッ!!」
俺のその言葉に共感しているのか、腕を組み首をうんうんと縦に振りながら。
「そこが難しかった……」
「は?」
「間違えて、拒否ボタンを押し間違えれば、好感度が上がってしまうから……」
「なぁ、拓哉?」
「ん?」
「俺さ、メインヒロインの普通ルートが見たいんだけど……」
ここまでの少しの話だけでメインヒロインが可哀想になってきた……ここから、ヤンデレ化とか……。
俺が絶対にハッピーエンドに導いてやる──ッ!!
そう俺たちが話している間に拓哉はゲームを話を進めていたらしく。
俺はふと、テレビ画面を見ると……そこには……。
『あくんが悪いんだから──っ!! 悪いんだからぁあああああ!!』とミックスボイスで悪役のような声になるメインヒロイン。
え……。
どうなってるんだよ?
「ここからが、本番だぜ……」と額から少々の汗を流す拓哉。
「え、なに? どういうこと!?」
『く……やはり、お前が……』
「この、裏ルート……通称ヤンデレメインヒロインルートは突然の急展開──ッ!!」
次の瞬間、『ううううううううう』という声と共に、メインヒロインの背中からは黒い翼……髪は長くなり、口には牙が生える。
その姿は……完全に魔王だった……。
何この急展開!!
サザ○さんが突如、ラブコメアニメに変わる並みの急展開だよ!!
カ○オくん、学校でラブコメしちょうよ!!
「なぁ……これって……」
『ヤン・ゲルデレ大魔王なのか──ッ!!』
「ヤン・ゲルデレ大魔王メインヒロインルート……訳してヤンデレメインヒロインルートだ!!」
俺は大声で突っ込んだ──。
「ヤンデレってそういうこと──ッ!?」
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