朝起きる。
軽くシャワーを浴びたら洗顔と化粧水をつけてみたりして軽く肌のお手入れをする。
これをやらないと姉様たちがうるさいので最近は日課になっているかな?
着替えは適当~と言いたいところだけど、姉様が忙しくないときは姉様が用意するのでボクの趣味が反映されることはあまりない。
一応リクエストは通るのでなんでも却下ということはないんだけどね。
友達と買った服は自動的にローテーションに組み込まれるので姉様に渡しておく。
一週間に一回くらいの割合で知らない服が増えているのも夕霧家あるあるだったりする。
朝食は色々あるけど、基本的には栄養バランスを考慮されて作られる。
実家にいるときは実家の方で用意されるけど、人間界の方ではボクたち自身で用意する必要がある。
専ら弥生姉様が趣味で作っているので弥生姉様が担当することになるけど。
ちなみに葵姉様はそういう方面は得意じゃない。
宗近兄様も料理はできるけど、あまりやると弥生姉様が不機嫌になるので控えめなようだ。
日中、休みの日であればたまに出かける。
今日はなぜか駅前のカフェで新作コーヒーを買ってきてほしいと頼まれたので御遣いに行く。
別名パシリともいうけど別にそれでもいい。
住宅街の道路は車が二台通れるくらいの幅しかないので歩行者や車両に注意する。
自転車は音が小さいから危ないと思うかもしれないけど、僕は種族がらよく聞こえるので問題はないかな? 問題があるとすればそれは人間。
あとで聞いたことだけど、ボクは人とすれ違いそうになると大きく離れるし、知ってる人が近づくとわざわざ迂回して遠回りするらしい。
確かにそういうところはあると思う。
目の前から男性が歩いてきた。
普通の成人男性。とりあえず二人分の幅をとって避けることにする。
次に来たのは女子高生。少し大回りをしつついそいそと逃げる。
男子高校生が近くにいたので迂回確定。そしたら知り合いを見つけたのでさらに迂回。
迂回先に小学生男子がいたので、絡まれる前に逃げることにする。
なぜかボクは小学生男子に絡まれることが多いんだ。
何とか駅前にたどり着いたけど、思った以上に疲労が溜まっている感じがする。
駅前のカフェは別に行列ができているわけではないので、ちょっと中を伺いつつレジ前が空いていたら中に入る。
カウンターでの注文時は指で指し示す。
「以上でよろしいでしょうか?」や「お持ち帰りですか?」という質問には頷いたり首を振ったりして意思表示をするのがボク流。
よく友達には「注文のときに静かなのはいいけど、俯いたままなのはどうなんだ?」と言われることがあるけど、意識したことはなかった。
顔見るの、恥ずかしくない?
注文の品を受け取ると、人とすれ違わないようにしながらそそくさと退店。
ちょっと寄り道したい気もするけど、人と関わるのは微妙なので一人ではいろいろなところには行けない。
思えば、雫ちゃんたちや酒呑童子たちに甘えまくっていたんだなぁ。
少し勇気を出して書店に行く。
書店は落ち着くし大好きなんだけど、時々変な人がいるので注意が必要だ。
特になぜかついてくる人やじろじろ見てくる人がいる。
美人でスタイルのいい女性なんかは時々店外まであとをつけられていたりするんだけど、あれは一体何なんだろう。
書店の中には色々なコーナーがあるけど、何かを見るときは足元に注意する。
弥生姉様に教えられたんだけど、品物を見ている最中に後ろから近づいてくる人の中にはカメラを仕込んでいたりする人がいるらしい。
ボク自身は中に短パンを穿いているのでとりあえず大丈夫かな?
まぁボクのようなちんちくりんを撮りたい人はいないだろうけど。
書店の中には色々な人がいる。
小さなテーブルで勉強している人やスマホを掲げて見ている人、小さな子供や親子連れ、暇つぶしに来ているだろうサラリーマンやOLの人など盛りだくさんだ。
と、スマホを見ている人の前を通りかかると、カシャリという音がした。
何の音だろう? いろんな音があってよくわからない。
何となく不安に思ったのでさっさと退散しよう。
文具を見ていると、小学生の女の子とうっかりぶつかってしまった。
「だ、大丈夫、ですか? ご、ごめんなさい」
「大丈夫だよ~。あれ? どこの小学校の子なの? あたし東小」
「え? あ、えっと……」
小学生に小学生認定されてしまった。
ボクはそんなに小さいのだろうか。
そのあと、なぜかあちこち連れまわされ、いろんな店に連れていかれた後何とか解放してもらうことに成功。
ちょっとの寄り道がかなりの寄り道になってしまったので、新作コーヒーは残念なことになっているはずだ。
一応買いなおしてから家に帰ろう。
帰り道、増えた荷物と予定外の行動により疲労が蓄積していた。
少し急ぎ目に、でも人に注意しながら帰ると、みんなが待っていたので「ただいま」を言って家の中でみんなと遊んだ。
新作コーヒーは甘いのと苦いのがあって、ボクは甘めのを選んだけど姉様たちは苦いのを選んだ。
酒呑童子たちは無事なものと残念なことになったものを選んで批評しながら飲んでいた。
特に酒呑童子なんかは「お、ごちゃごちゃに混ざった方がうまいじゃねえか」なんて言っていたので、どれでもよかったようだ。
ふぅ、なかなか疲れる一日だった。
できれば次回は、小学生に間違われないことを祈る。
後日、葵姉様から妙なことを聞かれた。
「暮葉ちゃん、書店で写真撮られなかった?」
カシャっていう音が聞こえたけど、撮られたかはわからないと答えたら、SNSに載っていたと言われて驚いた。
やっぱり、人間って怖い。
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