妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい

妖狐の少女は妖狐系Vtuberとして実況配信しちゃいます!
じゃくまる
じゃくまる

第7話 需要と供給

公開日時: 2020年12月20日(日) 11:00
文字数:3,653

現実の会社とは無関係です。

 月読とボクは結構仲が良い。 

 最初はお母様に紹介されたことがきっかけだったけど、彼または彼女はボクと妙に馬が合った。 

 月読は不思議な神で、実務をこなす最高神天照大神の補佐としての男性体とすべてのストレスを開放するために生み出された女性体の二体を使っている。 

 どっちも月読だけど実質兄妹扱いされている。 

 まぁ男性体の月読とはのんびりお茶を楽しんだり愚痴を聞いたりして過ごすけど、女性体の月読とは普通に遊んだりして過ごす。 

 一応本人たちはお互いを男性体は『月読』と、女性体は『ツク』と呼んでいる。 

  

「で、月読にもツクにも今回の事は知らせていないと」 

 ボクはあーちゃんの言いだした『バーチャル街計画』について再確認していた。 

  

「あ、でも、一応月読には事前調査してもらっているのよ? ツクも一緒になって調べていたけど」 

「調査?」 

 あーちゃんから出てきた聞きなれない言葉にボクは問い返す。 

 

「そそ。天都ちゃんと|葛の葉《くずのは》ちゃん、大天狗の頭領の|稲穂《いなほ》ちゃん、鬼の頭領の|亜寿沙《あずさ》ちゃん、それとぬらりひょんちゃんの五人で会社を運営してるでしょ? その繋がりで人間界のネット事情を調べてもらったの」 

 天都はうちのお母様の名前だ。 

 妖狐の頭領という位置にいて、すべての妖狐に命令を下せる立場だ。 

 葛の葉は打ちのお母様の双子の妹で、今は眠りについているお父様の二人目の奥さんだ。 

 妖狐種は一夫多妻も一妻多夫も同性での結婚も許されているため、こんな状況が起きる。 

 

 大天狗の稲穂さんは高尾の山の頭領だ。 

 情報収集が得意な烏天狗と共同で仕事をしており、主にスケジュール管理や妖精郷のネット事情に関する細かい作業を行っている。 

 電力供給も大天狗の仕事だ。 

 

 鬼の頭領の亜寿沙さんは妖精郷内の工事関係を担っている。 

 何かを作るときは必ず頼んでほしいと言われるくらいに肉体労働が大好きな人だ。 

 

 ぬらりひょんさんはボクたちの教育関連を一手に引き受け取り仕切っている。 

 学校の関連もそうだけど、権力が必要な場でもぬらりひょんさんは活躍している。 

  

 そんな彼らが関わっている会社が『合同会社|夢幻酔《むげんすい》』だ。 

 最近ではvtuber関連にも少しずつ食い込んでいるようで、何人かの妖種をvtuberとして世に送り出している。 

 特に人気が高い銀髪吸血鬼の『ラナ・マリン』ちゃんは夢幻酔の現在のトップともなっている。 

 ラナ・マリンちゃんはボクも好きなので弥生姉様の次に推しているくらいだ。 

 中の人本人も同じ姿をしているので「一から創作しなくていいよね」と葵姉様が言っていたのを覚えている。 

 次いで人気があるのが、白狼の人狼ことケモミミ娘の『睦月スバル』ちゃんだ。 

 姿形は小さく、可愛らしい容貌も相まって紳士淑女に非常に人気がある。 

 あとすごく活発だ。 

 ケモナー諸君にとっては彼女は信仰の対象にもなっていると聞く。 

 ちなみに中の人も同じ容姿をしている。 

 なお、妖種としては幼いため彼氏はいないので安心してほしい。 

 

「夢幻酔のメンバーのファンを調べるだけでも、ケモナーの人や妖怪好きの人、吸血鬼好きの人がたくさんいるのがわかるもんね。つまり人間界には存在しない子たちの需要を調べたのか」 

「そそ。だから可愛いケモミミ娘たちを愛でられないのは可愛そうだな~と思ってね。どう? 神様らしいでしょ?」 

 そう言って胸を張るあーちゃん。 

 言ってることはそれっぽいけど、やってきた人たちは秘められた性癖を刺激されてすごいことになるんじゃないだろうか。 

  

「で、調べた結果はどうだったの?」 

「画面の向こうへ行きたいとか、二次元の壁を突破したいとかが多かったわね。あとはケモミミ女子が異世界にしかいないのはおかしいという魂の叫びも結構あったわ」 

「わかってたけど欲望に忠実だね。たしかにケモミミ女子やケモミミ幼女がいないのは理不尽に感じるよ。ボクもそれはよくわかる」 

 人間たちの考えにはボクも大いに同意したい。 

 この世界にはケモミミ要素が皆無だ! 二次元を除いて。 

 

「現役ケモミミ娘がそれを言う? 皆が知らないだけで実は存在しているというのに」 

「見えなければいない、そういうものだよ!」 

 実際人間界にいる妖種たちは人化しているので姿形は人間のものだ。 

 なのでどうあがいてもケモミミ姿を見ることはできない。 

 でも一部例外がある。 

 

「いっそボクたちの高校で妖種学園祭でもやる? 人数限定で」 

 そう、ボクたちの高校を擁する学園には『特殊総合科』があるのだ。 

 現代世界で唯一妖種を見ることが出来る場所なのだ。 

 

「そこはちょっと考えさせてほしいわね。くーちゃんを衆人環視の中には出せないわ!」 

 あーちゃんは拳を握りそう言った。 

 ちなみにかなり昔ではあるけど、数度行われたことがあるらしい。 

 

「それに成人済みの妖種の子じゃないと色々面倒でしょ? ストーキングとかされてもね。それに大体人間と妖種の結婚ってちょっといろいろめんどくさいのよね」 

 あーちゃんはうんざりしたようにそう言う。 

 実はあーちゃんの言う通りで、人間と妖種の結婚は面倒事が多いのだ。 

 

「『冥府の試練』だっけ? 黄泉平坂を越えて黄泉の国の玉を持ち帰る試練って聞いたけど」 

「そうそう。しかも帰ってきたら禊しなきゃいけないのよ。妖精郷に住んでいる人間には周知の事実だけど、こっちの人間は知らないでしょ? だからなおのこと面倒なのよ」 

 たしかに面倒そうだった。 

 下手をすれば黄泉の鬼に食べられてそのまま住人になってしまうわけだし。 

 

「でもバーチャル街だとそうはならいと?」 

「そこはわからないけど、バーチャル街限定の身体だとバーチャル街にしか住めないから生身よりは色々面倒事減るかもしれないでしょ? 大変なのよ寿命のやりくり。」 

 最高神の本音が出た瞬間だった。 

 

「なぁ、その話まだつづくのか? さすがに飽きたんだけどよ」 

「たしかにちょっと長くなったわね。ところで酒吞童子、貴女vtuberやるんでしょ? いつもの四人と両面宿儺で」 

「あ? あぁ、そうだな。暮葉にも誘われてたし、なんか葵姉と宗親兄が作ってくれるらしいし」 

「あ、やっぱりやるんだ? 六人でグループつくるの? それにしてもスクナちゃんがねぇ」 

 ボクにとって意外だったのはスクナちゃんだ。 

 あの子はのんびりしているけどややコミュ障気味だ。 

 初対面の人と話すときはとにかく落ち着きがない。 

 

「スクナもお前とやりたがってたしな。弥生姉の件もあるけど、こっちのグループで合流するって話でよかったか? 一応烏天狗と猫も来るみたいだけど」 

「うんいいよ。もともとそういう話だったしね。弥生姉はたぶん合流すると思う」 

 ボクと酒吞童子が話を進めていく。 

 これで気軽にコラボしまくれる環境が出来たというわけだ。 

 

「あ、あの! 私もご一緒したいです。いいですか? 暮葉様、酒吞童子様」 

 今まで黙っていた狗賓の雫ちゃんが話に割り込んできた。 

 

「いいの? 雫ちゃん表に出るの苦手でしょ? ボクも得意じゃないけど雫ちゃんよりはマシだし」 

 雫ちゃんはかなりの恥ずかしがり屋だ。 

 貴重な白狼の狗賓な上に可愛らしく胸もそれなりにある。 

 そんな子が表に出たら人間は放っておかないだろう。 

 

「は、はい! 皆様とならですが。それによく関わっている烏天狗というと、みなも様ですよね?」 

「うん、みなもちゃんだね。そういえば狗賓の相談を受けたのもみなもちゃんからだったっけ。なら大丈夫か」 

「あ~、でも猫には気を付けろよ? あいつ焼き鳥大好きだぜ」 

「焼き鳥……」 

「烏天狗は鳥じゃないって説明しても『羽根があるなら一緒』っていって聞かないもんね」 

 同学年の一番の問題児は猫又の黒奈だろう。名前の通り黒猫だ。 

 

「じゃああとはグループ名を決めるだけだな。一応各個人でチャンネルはもう作ってあるし、収益化も通ってるしな」 

 事前準備としてかなり前から話は進めていた。 

 収益化条件もクリアできたことは確認しているので、いつでもスパチャも受け取れる状態ではあるのだ。 

 

「じゃあとりあえずそんな感じで。あとはお母様次第だけど、しばらくは無所属で行く感じだね」 

 お母様は無理やり所属させたりはしないと言っているので、しばらくは安全だ。 

 ただし、保護が必要な状態になったら話が変わるだろうけど。 

 

「おう。スパチャ解禁したら亜寿沙姉が投げ銭してくれるらしいから楽しみだな」 

「相変わらず豪気だよね、亜寿沙姉様」 

 鬼の頭領である亜寿沙姉様は気風の良い性格をしているのだ。 

 

「ところでくーちゃん。くーちゃんにプレゼントがあるんだけど」 

 話が一段落したところで、あーちゃんそんなことを言い出した。 

 

「ん? なに?」 

 ボクがそう言うと、包み紙を渡された。 

 

「これは?」 

「ネットでも調べたらわかるけど、就寝用の女性用トランクスよ。はかずに寝るよりはいいと思って」 

「あ、ありがとう」 

 まさかまだそのネタを引きずられているとは思いもしなかった。 

 でもボクはありがたく受け取ることにした。 

 実は締め付けられるのが嫌と言いつつも寝冷えすることがあって困っていたのだ。 

 

「感想、聞かせてね!」 

「やだよ」 

 それから夕飯までドタバタしながらみんなで遊ぶのだった。 

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